問題1 感染性心内膜炎(IE)について誤っているものはどれか。2つ選べ。
- 1 確定診断のためには血液培養と心エコーが必要。
- 2 症状に末梢血管病変や関節痛がある。
- 3 IEの罹患者は若年者に多い。
- 4 カテーテルや歯科処置が誘因とされることが多い。
- 5 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌によるIEは比較的予後良好とされる。
問題2 閉塞性動脈硬化症(ASO)にて間欠性跛行が出現するのは次のうちどれか。
- 1 Fontain I度
- 2 Fontain II度
- 3 Fontain III度
- 4 Fontain IV度
- 5 Fontain V度
問題3 血圧について誤っているものはどれか。
- 1 高血圧患者は約4300万人いると言われている。
- 2 70歳の糖尿病患者の降圧目標は診察時血圧<130/80mmHgである。
- 3 慢性腎臓病患者(蛋白尿陰性)の降圧目標は診察室血圧<140/90mmHgである。
- 4 夜間に血圧上昇を示す型をdipper型という。
- 5 予後影響因子はないがIII度高血圧(≧180/110mmHg)は高リスク層に分類される。
問題4 家庭血圧の測定で誤っているものはどれか。
- 1 カフは心臓の高さにする。
- 2 一度の測定機会につき原則2度測定し平均値をとる。
- 3 座った状態で1〜2分間安静にしてから測定する。
- 4 起床後、排尿を済ませてから測定しないようにする。
- 5 白衣高血圧・仮面高血圧の診断に有用である。
問題5 糖尿病・耐糖能障害について正しいものはどれか。2つ選べ。
- 1 血糖値の合併症予防にはHbA1c8.0%未満を目指す。
- 2 健常者の血糖値は糖質を摂取した後でも180mg/dlを超えないように調節されている。
- 3 脂肪と筋肉は糖を取り込む作用がある。
- 4 SGLT2阻害薬は腎臓での再吸収阻害により尿中ブドウ糖排泄を促進させる。
- 5 糖尿病の急性合併症には、網膜症、腎症、神経症がある。
問題6 脂質異常と診断されるのは次のうちどれか。2つ選べ。
- 1 食後採血でHDLコレステロールが40mg/dl
- 2 食後採血でLDLコレステロールが180mg/dl
- 3 空腹時採血でNon-HDLコレステロールが160mg/dl
- 4 空腹時採血でトリグリセライド150mg/dl
- 5 12時間絶食状態の採血でHDLコレステロール35mg/dl
問題7 脂質異常症について正しいものはどれか。
- 1 LDL粒子数はVLDLの2〜5倍多い。
- 2 小型のLDLほど酸化されやすい。
- 3 脂質は水溶性である。
- 4 大腸で産生されたアポ蛋白はHDLを合成し末梢組織よりコレステロールを引き抜く。
- 5 冠動脈疾患の既往があり糖尿病を有する患者の二次予防はLDL<100mg/dlを目標とする。
問題8 メタボリックシンドロームについて正しいものはどれか。
- 1 診断基準にLDLコレステロールは含まれない。
- 2 メタボリックシンドロームではLDL粒子が大きい。
- 3 腹囲男性80cm以上が診断の基準になる。
- 4 血圧≧125/80mmHgは危険因子に含まれる
- 5 アディポサイトカインによるインスリン抵抗性が下がる。
問題9 サルコペニアについて誤っているものはどれか。
- 1 予防に栄養療法と運動療法が重要である。
- 2 スクリーニングにSARS-Fを使用する。
- 3 筋力は膝伸展筋力を測定する。
- 4 ポリファーマシーとの関連がある。
- 5 症例抽出には大腿周囲長を測定する。
問題10 慢性腎不全(CKD)について正しいものはどれか。
- 1 早期発見に尿中微量アルブミン検出は不要である。
- 2 ステージ5は透析治療必須。
- 3 1回の採血。採尿で診断可能。
- 4 尿蛋白/Cr比(0.50g/gCr)は高重症。
- 5 GFR50ml/min/1.73m2未満
問題1の解説
解答 3 5
感染性心内膜炎(IE)の総論
感染性心内膜炎は、高齢者に多い、弁膜や心内まく、大血管内膜に細菌集簇を含む腫を形成し、菌血症や血管塞栓、心機能障害などの多彩な臨床症候群を呈する全身性敗血症性疾患である。発症には、弁膜疾患や先天性心疾患に伴う異常血液の影響や、人工弁置換術後等の影響で生じた非細菌性血栓性心内膜炎が重要であり、それに歯科的処置や耳鼻咽喉科的処置、婦人科的処置、泌尿器科的処置といった一過性の菌血症や尿路感染症、肺炎などをの感染症を合併した後に発症する。心疾患の既往がない場合でも発症することもある。
診断には、①心エコー図、②血液培養検査を施行する。
治療には、抗菌薬長期的投与(4〜6週間)、合併症の評価と管理、加療が主軸となる。
- 発熱
- 末梢血管病変
- 関節痛・筋肉痛
- 全身性塞栓症(脳塞栓、腎塞栓、脾塞栓)
- 感染性動脈瘤
- 心不全
問題2の解説
解答 2
- Fontaine I : 無症状もしくは軽度の患肢の冷感や痺れ
- Fontaine II : 間欠性跛行
- Fontaine III : 安静時疼痛
- Fontaine IV : 潰瘍形成、壊疽
Fontaine II以下であれば、最初から運動療法を指導する。間欠性跛行を有する患者での運動習慣定着率は不良であるためじっくり時間をかけていく必要がある。Fontaine III以上の重症下肢虚血には、動脈硬化危険因子のコントロールをしながら早期に血行再建術により血管形成術またはバイパス手術を行い、その後から運動療法を開始していく。
問題3の解説
解答 4
夜間に血圧上昇を示す型をriser型をという。昼間の覚醒時に比し夜間血圧が10〜20%低下する型をdipper型という。
- 診察時血圧 <130/80mmHg 家庭血圧 <125/75mmHg
- 75歳未満の成人
- 脳血管障害者(両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞ない)
- 冠動脈疾患患者
- 慢性腎臓病患者(蛋白尿陽性)
- 糖尿病患者
- 抗血栓薬服用中
- 診察時血圧 <140/90mmHg 家庭血圧 <135/85mmHg
- 75歳以上の高齢者
- 脳血管障害者(両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞あり、または未評価)
- 慢性腎臓病患者(尿蛋白陰性)
問題4の解説
解答 4
起床後1時間以内で排尿を済ませてから測定する。
問題5の解説
解答 3 4
糖尿病は、インスリンの作用不足による慢性の高血糖をきたす状態である。血糖値は、健常者では一晩絶食をしても70〜100mg/dLの範囲内にあり、糖質を主体とした食事を摂取した後でも140mg/dLを超えない範囲に調節されている。
血糖管理の目標は、合併症予防のためにはHbA1c7.0%未満を目指す。ただし、65歳以上の高齢者で中等度以上の認知症または基本的ADL低下または多くの併存疾患や機能障害がある場合にはHbA1c8.0%未満、さらに重症低血糖が危惧される場合には8.5%未満を目標とする。
- 急性合併症:昏睡 インスリン作用不足が高度になって起こる。
- 慢性合併症(細小血管症):網膜症・腎症・神経症
- 動脈硬化性心血管疾患
問題6の解説
解答 4 5
脂質異常症の診断基準に関する問題である。
コレステロールやトリグリセライドなどの脂質は水に不溶性のため、血液中ではリポ蛋白の成分として存在する。脂質異常症は、リポ蛋白の産生または異化の障害によるもので、動脈硬化の最も重要な危険因子である
(空腹時血糖・10時間以上の絶食状態)
- LDLコレステロール
- 高LDLコレステロール血症:140mg/dL以上
- 境界域高LDLコレステロール血症:120〜139mg/dL
- NonHDLコレステロール
- 高NonHLDコレステロール血症:170mg/dL以上
- 境界域Non HDLコレステロール血症:150〜169mg/dL
- HDLコレステロール
- 低HDLコレステロール血症:40mg/dL未満
- トリグリセライド
- 高トリグリセライド血症:150mg/dL以上
問題7の解説
解答 2 5
リポ蛋白は通常、超遠心法による比重により5種類に分類される。一般に大きい粒子は脂質成分、特にTG含有量が多く比重が重い。LDLは半減期が2〜5日と長く正常ではLDL粒子数はVLDLの9倍以上多い。肝臓および小腸で生産されたアポ蛋白A-1、A-2は末梢でHDLを合成し、末梢組織からコレステロールを引き抜く。
- 家族性高コレステロール血症
- 急性間症候群
- 非心原性脳梗塞・末梢動脈疾患・慢性腎臓病・メタボリックシンドローム・主要危険因子の重複・喫煙を合併する糖尿病
上記のような場合、
LDLーC 70mg/dL未満 ・ Non-HLD-C 100mg/dL未満を目標とする。
問題8の解説
解答 1
肥満は、脂肪組織が過剰に蓄積した状態で、BMI25kg/m2以上で判定する。
メタボリックシンドロームは、脂肪組織由来因子(アディポサイトカイン)の異常によるインスリン抵抗性に関連した一連の反応であり、動脈硬化症と糖尿病の発症高リスクである。メタボリックシンドロームではLDL粒子数が増加し、その主体は小粒子LDLである。
- 血圧高値
- 収縮期≧130mmHgかつ/または拡張期85mmHg
- 血液検査
- 脂質異常:HDLコレステロール<40mg/dLかつ/または中性脂肪>150mg/dL
- 血糖高値
- 空腹時血糖≧110mg/dL
- 腹囲(内臓脂肪増加100c㎡以上)
- 男性 85cm以上
- 女性 90cm以上
- アディポサイトカインの分泌異常によりインスリン抵抗性の上昇、血圧上昇、炎症・血栓傾向、耐糖能異常、脂質代謝異常、動脈硬化の進行
問題9の解説
解答 5
サルコペニアに関する問題である。
- 2018年にはサルコペニアを「転倒、骨折、身体機能低下、死亡などの負のアウトカムの危険性が高まった進行性かつ全身性の骨格筋疾患」と定義された。
- 2018年に、サルコペニアの症例発見(Find)、評価(Assess)、確定診断(Confirm)および重症度(Severity)の判定というプロセス(F-A-C-S)に沿ったアルゴリズムが発表された。
- スクリーニングには、自己記入式質問票のSARCーFが用いられる。
- 主要な測定項目として筋力が採用されたとともに確定診断には骨格筋量と質の低下、そして重症度を身体機能の低下によって同定することが明示された。
- 下腿周囲長とSARC-Fを組み合わせたSARC-Calfなどを用いてスクリーニングを行い、筋力(握力)もしくは5回位す立ち上がり時間を測定して低下が認められる場合をサルコペニアの可能性ありとして、早期に介入を進めていく流れが明示されている。
- フレイルとサルコペニアの両方に共通する予防並びに介入法は、栄養療法と運動療法である。栄養療法については、十分なカロリー摂取特に蛋白質の適切な摂取が予防ならびに治療に必須となる。
- 高齢者では幾つもの併存疾患を有することが多いから、ポリファーマシーとフレイルならびにサルコペニアとの関連も指摘されており、多面的な対策が求められている。
問題10の解説
解答 4
慢性腎臓病(CKD)とは、①腎臓の障害(蛋白尿など)、②糸球体濾過量(GFR)60ml/分/1.73㎡未満の腎機能低下、①か②のいずれか、または両者が3ヶ月以上持続するものである。CKDは心大血管疾患および末期腎不全の重要な危険因子である。原疾患・GFR区分・蛋白尿区分を合わせたステージにより評価する。