HFpEFに対する心臓リハビリ、何をすればいいのか?最新エビデンスから整理する運動療法の考え方

心不全療養指導士
HFpEFに対する心臓リハビリ、何をすればいいのか?|最新エビデンスから整理する運動療法の考え方
心臓リハビリ HFpEF 運動療法

HFpEFに対する心臓リハビリ、
何をすればいいのか?
最新エビデンスから整理する運動療法の考え方

公開日:2025年|対象:心臓リハビリに携わる理学療法士・リハビリスタッフ
「HFpEFの患者さんに対して、どんな運動をどのくらいやればいいんだろう…」

そんな疑問を抱えながら日々の臨床に向き合っているPTの方も多いのではないでしょうか。HFrEFと比べてエビデンスが限られているイメージがあるHFpEFですが、近年は運動療法に関するメタ解析が急増しており、「何が効いて、何が効かないのか」が少しずつ明らかになってきています。

この記事では、2025年にJJCR(日本心臓リハビリテーション学会誌)に掲載された総説をもとに、HFpEFに対する心臓リハビリのエビデンスと、臨床で押さえておきたい基本的な考え方をまとめてお伝えします。
📌 この記事でわかること
  • HFpEFとは何か、なぜ薬物療法だけでは不十分なのか
  • 日本人HFpEF患者と欧米患者の決定的な違い
  • 運動療法で「何が」改善するのかという基本事実
  • 詳細なエビデンス解説・運動様式の選択・IMT実践はメンバーシップ記事で公開中

HFpEFとは何か──薬物療法の限界と運動療法の意義

HFpEF(heart failure with preserved ejection fraction)は、左室駆出率(LVEF)が50%以上に保たれた心不全であり、左室拡張機能障害が主体とされています。本邦では人口の高齢化に伴い増加しており、心不全全体の50%以上をHFpEFが占めている状況です。

📊 予後について:REAL-HFの事後解析では、HFpEFの心不全増悪による再入院率・全死亡率ともに、HFrEFと同程度であることが示されています。「駆出率が保たれているから軽症」とは言えないのです。

薬物療法に目を向けると、HFrEFでは「Fantastic 4(ARNI・SGLT2阻害薬・MRA・β-blocker)」という生命予後改善薬が確立されています。一方、HFpEFでは長らく有効な薬剤がありませんでしたが、近年SGLT2阻害薬(ダパグリフロジン・エンパグリフロジン)がESCガイドラインで推奨クラスⅠ・エビデンスレベルAに位置付けられました。

それでもなお、HFrEFと比べれば薬物療法の選択肢は限られています。だからこそ、非薬物療法である運動療法の役割がHFpEFでは特に大きいと言えるのです。

📋 ガイドラインにおける運動療法のポジション(2021年改訂版)
  • HFrEF:推奨クラスⅠ・エビデンスレベルA(QOL改善・再入院減少まで含む)
  • HFpEF:推奨クラスⅡa・エビデンスレベルB(自覚症状・運動耐容能の改善)

HFpEFはまだHFrEFよりエビデンスが弱い段階ですが、「考慮すべき」から「積極的に推奨」へと位置づけが変わりつつあります。

日本人HFpEF患者の特徴──欧米の研究をそのまま使えない理由

HFpEFのエビデンスを臨床に活かす上で、ぜひ知っておいていただきたい重要な視点があります。それは、欧米の患者背景と日本人患者は大きく異なるという点です。

特徴欧米のHFpEF本邦のHFpEF
肥満の割合83%6.5%
アジア全体の肥満率26%
主な特徴肥満・高血圧・心房細動高齢・Af・糖尿病・CKD・フレイル高率

⚠️ 肥満率83% vs 6.5%。この差はとても大きいですよね。欧米で有効性が示された運動介入が、肥満の少ない日本人HFpEF患者にそのまま当てはまるとは限りません。エビデンスを読む際は「どんな患者を対象にした研究なのか」という視点を忘れずに持っておきましょう。

本邦のHFpEF患者は高齢かつフレイルの割合が高く、心房細動・糖尿病・慢性腎臓病の併存率も高いのが特徴です。このような患者背景の違いを念頭に置いた上で、運動様式の選択や負荷設定を個別化することが臨床では大切になってきます。

では実際に、HFpEFに対する運動療法はどのような効果をもたらすのでしょうか。次のセクションで基本的なエビデンスを見ていきましょう。

運動療法で「何が」改善するのか──最新メタ解析の結論

2024年に報告されたHFpEF患者を対象とした系統的レビュー・メタ解析(Baral R, et al. Eur Heart J Open, 2024)では、運動療法群はコントロール群と比較して、以下の2点が有意に改善することが示されました。

✅ 運動療法で改善が示されたもの
  • peak VO₂(最高酸素摂取量):有意な改善(p < 0.00001)
  • QOL(生活の質):有意な改善(p < 0.00001)

peak VO₂は心肺運動耐容能の指標であり、心不全患者の予後予測にも用いられる重要なパラメータです。これが有意に改善したという結果は、HFpEF患者における運動療法の有効性を示す、強力な根拠と言えます。

一方で、HFpEFの病態の中心である拡張機能の指標(E/A・E/e’など)については、運動療法による改善が認められないという結果も同メタ解析で示されています。「なぜpeak VO₂が改善するのに拡張能は変わらないのか」——この疑問は、HFpEFにおける運動耐容能改善のメカニズムを理解する上でとても重要なポイントです。

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  • 運動療法による慢性炎症の改善効果 CRP・IL-6の変化と、HFpEFの病態進行予防への期待
  • 吸気筋トレーニング(IMT)の効果と臨床実践 呼吸筋代謝受容器反射のメカニズム・メタ解析エビデンス・監視下導入の重要性
  • 外来心リハの参加率はたった7%——現状と臨床での対策 HFpEF患者の完遂率3.2%という現実・入院中にできることとは
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【参考文献】

・林野収成,宮崎慎二郎,松元一郎:HFpEFに対する心臓リハビリテーションの効果. 心臓リハビリテーション(JJCR)31(2):111-115,2025

・Baral R, et al. Exercise training improves exercise capacity and quality of life in heart failure with preserved ejection fraction. Eur Heart J Open oeae033, 2024

・日本循環器学会/日本心臓リハビリテーション学会合同ガイドライン:2021年改訂版心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン

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