「最近、『攻めのリハビリ』という言葉をニュースで見かけた」「理学療法士・作業療法士法が約60年ぶりに見直されるらしい」——そんな話を耳にした方も多いのではないでしょうか。
2025年、日本慢性期医療協会(日慢協)は、要介護化を防ぐための新しい戦略として「攻めのリハビリ」を提言しました。この提言は、私たちPT・OTの働き方そのものを大きく変える可能性を秘めています。
この記事では、日慢協の提言内容を整理しながら、理学療法士・作業療法士法の見直しの方向性、そして私たちが今から持っておくべき心構えについて、わかりやすく解説していきます。
📋 この記事でわかること
- 要介護化の最大要因「骨折・転倒」への対策
- 「攻めのリハビリ」4つの具体的提言
- 理学療法士・作業療法士法、約60年ぶりの見直し
- セラピストの地域進出と偏在解消
- PT・OTが今後持つべき4つの心構え
1. なぜ今「攻めのリハビリ」なのか?要介護化の最大要因は「骨折・転倒」
日本の健康寿命の伸びは、近年停滞しています。その中で、要介護化・重度化を招く大きな要因の一つとされているのが「骨折・転倒」です。
💡ポイント
認知症などの「疾患」と違い、骨折・転倒は身体機能の改善や環境整備といった具体的な介入によって、予防や結果の可視化がしやすい「事故」だと考えられています。だからこそ、リハビリ専門職の力が発揮しやすい領域といえます。
この「予防できる事故」という視点こそが、日慢協が「攻めのリハビリ」を提言した出発点です。
2. 日慢協が示した「攻めのリハビリ」4つの提言
日慢協は、要介護になる前の段階で予防的リハビリテーションを評価する仕組みとして、次の4点を提言しています。
① 「転倒リスク健診」の導入
身体機能、生活環境、栄養、服薬、骨粗鬆症などを総合的に評価する制度を新たに構築する。
② PT・OTの専門性の活用
理学療法士・作業療法士を、要介護前の転倒リスク評価の担い手として明確に位置づける。
③ ICT・AIの活用
AIが自宅の写真や動画から段差などの転倒リスクを抽出するシステムを開発し、効率的な環境調整につなげる。
④ 予防的リハビリの制度化
介護保険の前段階から、骨折・転倒を防ぐ支援を評価(点数化など)する仕組みをつくる。
3. 理学療法士・作業療法士法、約60年ぶりの見直しへ
この提言の実現には、法律面での後押しも進んでいます。厚生労働省内には「リハビリテーション統括調整室」が新設され、予防分野でのリハビリ職の活用が重視されるようになりました。
これに伴い、理学療法士及び作業療法士法(PT・OT法)の約60年ぶりとなる見直しが検討されています。
⚖️ 現行法と見直しのポイント
| 現行法 | 理学療法:「身体に障害のある者」 作業療法:「身体又は精神に障害のある者」が対象 |
| 見直し後 | 「障害のない健康な高齢者」にも、予防の段階からPT・OTがアプローチできるよう対象が拡大される見込み |
つまり、リハビリを「治療」だけでなく「攻めの予防医療」として位置づけ、予防・健康増進の分野でも専門職を積極的に活用しようという国の方針が背景にあります。
4. セラピストの地域進出と偏在の解消
現在、PT・OTの多くは病院(特に回復期)に偏在しており、地域では人材が不足しているのが実情です。
今後は、学校医が定期健診を行うように、病院所属のセラピストが地域へ出向いて「転倒リスク健診」を担う体制が必要になると展望されています。病院の中だけで完結する働き方から、地域コミュニティに関わる働き方への転換が求められているのです。
5. これからのPT・OTに求められる4つの心構え
ここまでの内容を踏まえ、私たちPT・OTが今から持っておきたい心構えを4つに整理しました。
1「治療」から「予防」へと視野を広げる
障害のある方への介入だけでなく、健康な高齢者を対象とした「攻めのリハビリ」の担い手であるという自覚を持つこと。
2病院内にとどまらず「地域」へ踏み出す姿勢
地域コミュニティに出向き、転倒リスク健診などの評価を担う専門家としての動きが期待されています。
3テクノロジー(AI・ICT)を積極的に活用する
経験則だけに頼らず、AIによるリスク抽出などを使いこなし、高リスク者を効率的に特定する柔軟さが求められます。
4総合的な評価能力を養う
身体機能だけでなく、生活環境・栄養・服薬・骨粗鬆症など、生活を多角的に捉える専門性が重要になります。
まとめ:予防の専門家としてのマインドセットを
日慢協が提言した「攻めのリハビリ」は、単なる制度改革の話にとどまらず、PT・OTという職種そのものの役割を「治療」から「予防・健康増進」へと広げる大きな転換点です。
理学療法士及び作業療法士法の約60年ぶりの見直しも進む中、「地域における予防の専門家」としてのマインドセットを持てるかどうかが、これからのキャリアを左右する鍵になるでしょう。
臨床現場での「攻めのリハビリ」の実践例や、転倒予防の評価スキルをさらに深めたい方は、
臨床理学Lab|リハの地図〜学びnote〜でより詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
