「超加工食品」で死亡リスクが20%上昇?理学療法士が解説するUPFと身体機能・栄養への影響
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フランスで44,551人を対象に行われた大規模追跡研究(NutriNet-Santé コホート)は、食事に占める超加工食品の割合が10%増えるごとに、全死亡リスクが約20%上昇するという衝撃的な結果を示しました(JAMA Internal Medicine, 2019)。
理学療法士として患者さんの身体機能や生活習慣に日々向き合う立場から、この研究が私たちに何を伝えているのかを丁寧に解説します。
① そもそも「超加工食品(UPF)」とは何か?——NOVA分類を知ろう
「加工食品=体に悪い」と単純に考えると、正確ではありません。食品加工には幅があり、研究ではすべての食品を加工度に応じて4段階に分類する 「NOVA分類」 が使われています。
| グループ | 分類名 | 具体例 |
|---|---|---|
| G1 | 未加工・最小限加工食品 | 生鮮野菜・果物、肉・魚、卵、砂糖不使用のフルーツジュース、無糖ヨーグルト、乾燥豆類 |
| G2 | 調理用加工食品成分 | 砂糖、塩、油、バター、酢(単体では食べない調理素材) |
| G3 | 加工食品 | 塩蔵魚・缶詰野菜、シロップ漬け果物、チーズ、伝統的製法のパン |
| G4 | ⚠️ 超加工食品(UPF) | 炭酸飲料、スナック菓子、大量生産パン・菓子パン、即席スープ・麺、ソーセージ・ナゲット、甘いシリアル、フレーバー付き乳飲料 |
UPFを見分けるポイント
UPFの特徴は「家庭料理では通常使わない物質が入っている」ことです。原材料欄に以下が含まれていたら要注意です。
- 色素・着色料(クルクミン、カラメル色素など)
- 人工甘味料・香料・風味増強剤
- 乳化剤・増粘剤・消泡剤・保湿剤
- 高果糖コーンシロップ、マルトデキストリン、加水分解タンパク質
たとえば「チキンとリーキのスープ」の原材料には、「乾燥グルコースシロップ、じゃがいもデンプン、香料、リーキパウダー、ヤシ油、乾燥チキン(0.7%)、クルクミン(着色料)、安定剤(リン酸二カリウム、クエン酸三ナトリウム)」といった記載が並びます。これがUPFの典型的な姿です。
② 研究の概要——44,551人を追跡した結果
Schnabel L, et al. 「Association between ultraprocessed food consumption and risk of mortality among middle-aged adults in France」
JAMA Internal Medicine(2019年2月掲載)
対象: フランスのNutriNet-Santéコホート研究 参加者44,551人
方法: 食事記録からUPFの割合を算出し、追跡期間中の死亡との関連をCox比例ハザードモデルで解析
調整変数: 年齢・性別・収入・教育歴・BMI・身体活動量・喫煙・アルコール・エネルギー摂取量・既往歴など
食事に占めるUPFの割合は、重量比(全食品中の重さの割合)とエネルギー比(総カロリーに占める割合)の両方で評価されています。平均的な参加者では、エネルギーの約29%がUPFから摂取されていました。
③ 衝撃のデータ——死亡リスクとの関連
UPFの重量割合が10%増えるごとに全死亡リスクが約20%上昇
(HR 1.20, 95%CI 1.08–1.32, Model 1)
この関連は、年齢・性別だけでなく、収入・教育水準・BMI・身体活動量・喫煙・飲酒・既往歴・食事の栄養スコアなど、考えられる多くの交絡因子を調整した上でも持続しました(Model 3: HR 1.19, 95%CI 1.05–1.35)。
また、感度分析(フォローアップ開始後2年以内の死亡を除外、あるいは心疾患・がん既往者を除外するなど)でも、同様の傾向が確認されています。これは、結果が「逆因果バイアス(もともと病気の人が手軽な食品を選ぶ)」だけでは説明できないことを示唆しています。
4分位で分けた場合、最もUPF割合が低いグループ(Q1: <9.3%)を基準にすると、最も高いグループ(Q4: >18.0%)では死亡リスクが有意に高い傾向が示されました(p for trend = 0.03〜0.04)。
④ 栄養バランスへの影響——理学療法士が注目すべき点
UPFが健康に悪影響を及ぼすメカニズムのひとつが、栄養の「偏り」と「欠乏」です。研究では、UPF摂取割合が高いほど以下のような栄養プロフィールの変化が示されました。
⬆️ 過剰になるもの
- 総カロリー(+0.66%/10%増加)
- 単純糖質(+3.88%)
- 脂質・飽和脂肪酸(+4.43%)
- ナトリウム(塩分)(+0.68%)
⬇️ 不足するもの
- 食物繊維(−5.46%)
- タンパク質(−2.55%)
- ビタミンC(−7.81%)
- 葉酸(B9)(−3.96%)
- ビタミンB12(−3.37%)
- ビタミンD(−1.99%)
- カリウム(−3.92%)
- β-カロテン(−9.23%)
🦴 理学療法士の視点:筋力・リハビリへの直接的影響
この栄養プロフィールは、私たちPTが日々向き合う筋力低下・サルコペニア・リハビリテーションの阻害因子と深く重なります。
- タンパク質不足:筋タンパク合成の材料が減る。特に急性期・術後患者では筋萎縮が加速しやすい。
- ビタミンD不足:筋力(特に下肢筋)の維持・神経筋機能に直接関与。転倒リスクとも関連。
- ビタミンC・β-カロテン不足:酸化ストレスへの防御力が低下。慢性炎症が持続しやすくなり、組織修復が遅れる可能性。
- 食物繊維不足:腸内環境の悪化 → 全身性炎症の持続 → リハビリ効果の阻害という負のサイクル。
- ナトリウム過剰:心不全・高血圧患者では特にリスク。心臓リハビリにおける食事管理の重要な観点。
「運動だけ頑張ってもなかなか改善しない」という患者さんの背景に、UPF過多による栄養の歪みが隠れているケースは少なくないと思われます。
⑤ どんな人がUPFを多く食べている?
研究では、UPFの摂取割合が高いグループには以下の共通点が見られました(いずれも統計学的に有意)。
- 📍 若年層(年齢が高いほどUPF割合は低い傾向)
- 📍 低収入・低学歴の層でUPF割合が高い
- 📍 独身・離別・配偶者なしの人
- 📍 BMIが高く、身体活動量が低い
- 📍 現在喫煙中の人
一方、エネルギー比率でみると女性のほうがUPFの割合が高い傾向も示されています(29.4% vs 28.3%)。これは食品の選択パターンや食の機能(社交・娯楽など)の性差を反映している可能性があります。
リハビリ医療の現場では、社会経済的背景が脆弱な患者ほど食事の質が低い傾向があることも認識した上で、患者教育にあたる必要があります。
⑥ 研究の限界と解釈の注意点
この研究の強みと同時に、いくつかの限界も正直にお伝えします。
- 観察研究のため、UPFが「因果的に」死亡リスクを高めるとは言い切れない(交絡の残存)
- 参加者がフランス在住・インターネット利用可能な層に偏っており、日本の食環境に直接外挿するには慎重さが必要
- 食事記録は自己報告であり、測定誤差を含む
- エネルギー比率でのUPF割合は死亡との関連が有意でなかった(重量比での解析が主結果)
ただし、複数の感度分析で結果の頑健性が確認されており、「UPFを減らすことが望ましい」という方向性は現時点の証拠として十分な説得力を持ちます。
⑦ 理学療法士として何ができるか——実践的なアドバイス
「患者さんに食事の話なんてしていいの?」と思う方もいるかもしれません。しかし、栄養は身体機能・リハビリ効果に直結する重要な要素です。多職種連携の中で、PTが栄養の視点を持つことは、より質の高いケアにつながります。
✅ 患者さんへの声かけのヒント
- 「毎日のお食事で、袋に入ったものや缶詰・レトルトはどのくらい食べますか?」——現状把握の問いかけ
- 「筋肉をつくるためにはタンパク質が必要で、魚・肉・豆腐などが優先です」——UPFではなくG1食品へ誘導
- 「市販のスープに頼るとき、原材料が少ないシンプルなものを選ぶのもひとつの工夫です」——現実的な選択肢の提示
✅ 自身の食事を見直す3ステップ
- 原材料を見る習慣をつける——成分表示で「香料」「乳化剤」「甘味料」の有無をチェック
- G1(未加工)食品を1食に必ず1品以上入れる——生野菜、果物、ゆで卵など手間のかからないものから
- UPFを「なくす」ではなく「置き換える」——菓子パン→全粒粉パン、フレーバーヨーグルト→無糖ヨーグルト+果物、など
まとめ
- 超加工食品(UPF)とは、家庭料理では使わない添加物を多く含む工業的食品(NOVA分類G4)
- 44,551人の追跡研究で、UPFの割合が10%増えるごとに全死亡リスクが約20%上昇
- UPF摂取増加は、タンパク質・食物繊維・ビタミンD・C・B群・カリウムの不足と関連
- これらの栄養欠乏は筋力低下・慢性炎症・リハビリ阻害因子とも深く関わる
- 「完全排除」より「G1食品への置き換え」という現実的アプローチが有効
食事はリハビリの「隠れた土台」です。運動療法と同様に、栄養の視点を持つことで患者さんの回復を多面的に支援できると確信しています。
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メンバーシップを見てみる →参考文献:Schnabel L, et al. Association between ultraprocessed food consumption and risk of mortality among middle-aged adults in France. JAMA Intern Med. 2019. doi:10.1001/jamainternmed.2018.7289
