心配運動負荷試験について勉強しよう。

心肺運動負荷試験ってなに?

心肺運動負荷試験(CPX)とは、トレッドミルやエルゴメーターなどの運動負荷装置を持ちて運動負荷試験を行い、呼気中の酸素濃度・二酸化炭素濃度・換気量をリアルタイムに計測し、最高酸素摂取量や嫌気性代謝閾値(AT)などの呼吸・循環・代謝指標などを計測するものです。この検査により労作時の息切れや動悸などの鑑別診断、各種心疾患の有無、心不全の重症度、ならびに治療効果判定、心臓リハビリテーションに用いる運動処方の作成に役立ちます。

運動負荷試験の適応

前述したように運動負荷試験を行うと様々なことを知ることができます。どんな時に運動負荷試験を行うのでしょうか。

適応には以下のような場合が挙げられます。

  • 運動耐容能の評価
  • 運動制限のある患者の鑑別診断
  • 心血管疾患患者の評価
  • 呼吸器疾患患者の評価
  • 特定の臨床応用

運動負荷試験は、原因不明の運動制限の鑑別診断や、心不全患者の運動耐容能や予後の評価、心臓移植を含む各種治療適応とその効果判定、最大運動の自覚症状による評価が不正確な患者での運動耐容能評価などに用いられる。

こちらの記事には運動負荷試験の禁忌や中止基準について書いています。

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直線的漸増負荷法(ramp負荷法)で得られる指標

直線的漸増負荷法では、通常エルゴメーターを用いて毎分10〜40ワット程度で仕事率を増加させていく。Ramp負荷中の呼気ガス分析指標の主な変曲点は、乳酸産生が顕著になり血中乳酸が増加する運動強度、すなわちAT(嫌気性代謝閾値)と、その乳酸に対する緩衝系が不十分になって代謝性アシドーシスが始まり、代償性過換気が始まる点、呼吸性代償開始点(RC point)がある。

嫌気性代謝閾値 (AT)

ATって?

ATは、嫌気性代謝閾値、無酸素性作業閾値、乳酸閾値など色々な呼び方をされます。

通常、O2は代謝経路の中の電子伝達系に入ります。O2供給が十分な状態では解糖系により産生されたピルビン酸がアセチルCoAとなり、TCA回路でH2OとCO2に分解されます。しかしながら、運動強度が高くなると解糖系でのエネルギー代謝亢進により、ピルビン酸産生がTCA回路における代謝率を上回ることになります。そうすると、ピルビン酸が乳酸になり、乳酸が重炭酸イオンで緩衝されてCO2を生じる。この無気的代謝が加わる前の運動強度がATとされました。

CO2が過剰に産生されると動脈血のCO2が増加し、VO2や換気を亢進されるためVO2、VCO2および分時換気量(VE)を測定すると体内で生ずる代謝の変化を推測することが可能となります。

ガス分析によるATを決定するには以下のような判断基準があります。

  • ガス交換比の運動強度に対する上昇点
  • VCO2のVO2に対する上昇点
  • VE/VCO2が増加せずVE/VO2が増加する点(換気当量)
  • 終末二酸化炭素分圧(PETCO2)が上昇せずに終末酸素分圧(PETO2)が増加する点
  • VEのVO2に対する上昇点

上記のポイントを読み取りATレベルの運動強度を決定してきます。

ガス交換比はVCO2/VO2であるため、基本的にはV-slopeと同じです。運動開始後わずかに低下し、一定になるか再び上昇し、AT以降ではさらに急激に上昇する。VO2に対する換気当量はAT時点まで低下し、再度上昇するため、この点をAT点と判断する。

臨床的意義

ATはPeak VO2と同様、健常例、心疾患例いずれにおいても身体活動能力、生命予後規定因子として重要な指標として重要です。ただし、持続的な運動が可能な運動強度、「中等度」の運動強度であることがPeak VO2と異なる点です。また心ポンプ機能と骨格筋での酸素利用が規定因子であることはPeak VO2と同じとなりますが、骨格筋への依存度がより少なく末梢血管拡張能や酸化的リン酸化酵素活性によるところが大きいと考えられています。

日常活動のレベルを示す重要な指標であるとともに、日常生活能力を高めるための目標としても利用されるのがAT点になります。

仕事率増加に対する酸素摂取量増加(VO2/WR)

VO2/WRって?

VO2/WRとは、仕事率増加に対する酸素摂取量(VO2)の増加の程度のことを言います。これは仕事率の定量可能な自転車エルゴメーターなどによるramp負荷試験でのみ得られる指標です。末梢の運動筋への酸素輸送の増加の程度を示しています。

1W(ワット)余分な仕事を行う時に増加するVO2と表現されます。この指標は、一定の仕事率に多雨するVO2と運動強度増加によるVO2の応答時間延長により決定されます。

臨床的な意義

この指標が低値であれば、活動筋での酸素消費量の増加に見合うだけで酸素摂取量が増加しないことを意味しており、その結果酸素不足が増大して運動耐容能時間は短くなる。

直線的漸増負荷(ramp負荷)に対する酸素摂取量(VO2)の応答に関して、健常者例では運動強度が高くなると、動員される筋肉群が増えたり換気の亢進による呼吸筋の酸素消費の増加、体温上昇などによって仕事率増加に対するVO2の増加が増えることがある。

一方、心機能低下症例では中等度以下での運動強度でもVO2の増加は少なくなります。また、虚血性心疾患症例で運動中に虚血が誘発されると心ポンプ機能の低下に伴ってVO2の増加は減少し、虚血出現後でのVO2/WRは低値となります。

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