はじめに
心臓リハビリテーションは、心臓病からの回復を支援する重要なプロセスです。心臓リハビリにおける運動療法では有酸素運動が主に推奨されますが、近年ではレジスタンストレーニング(抵抗運動)がその有効な補完手段として注目されています。
本記事では、心臓リハビリにおけるレジスタンストレーニングの効果と具体的な活用方法について解説します。
日々の臨床や勉強に役立つと幸いです。
レジスタンストレーニングの効果
レジスタンストレーニングは、筋力と筋持久力を向上させることで、以下のような多くの健康効果をもたらします。
- 筋力の向上: 筋力が増すことで、日常生活での活動が楽になり、独立性が保たれます。
- 代謝の向上: 筋肉量の増加により基礎代謝が向上し、体重管理がしやすくなります。
- 骨密度の向上: 骨に適度な負荷をかけることで骨密度が高まり、骨折のリスクを減らします。
- 心理的な効果: 運動によりストレスが軽減され、気分が向上することが報告されています。
心臓リハビリにおけるレジスタンストレーニングの具体的な方法
心臓リハビリ中にレジスタンストレーニングを取り入れる際には、以下の点に注意が必要です。
- 医師の指導の下で開始する: 心臓病の種類や状態によっては、特定の運動が制限されることがあります。必ず医師の許可を得てから開始しましょう。
- 軽い負荷から始める: 初めは軽い負荷で始め、徐々に負荷を増やしていきます。例えば、2〜3kgのダンベルを使った上腕二頭筋カールや、軽い抵抗バンドを使った運動から始めるのが良いでしょう。
- 全身の筋肉をバランスよく鍛える: 上半身、下半身、コア(体幹)をバランスよく鍛えることが重要です。具体的な例としては以下のような運動があります。
- 上半身: ダンベルを使った肩のプレス、バンドを使った肩甲骨のリトラクション
- 下半身: 椅子に座ってのレッグエクステンション、バンドを使ったヒップアブダクション
- コア: バンドを使ったロシアンツイスト、安定した椅子を使ったシットアップ
- 適切な回数とセット数を守る: 初心者の場合、各運動を10〜15回、1〜2セット行うことから始めます。徐々に回数やセット数を増やし、筋力がついてきたら3セットに増やしていきます。
- 十分な休息を取る: 筋肉が回復する時間を確保するために、レジスタンストレーニングは週に2〜3回、非連続の日に行うことが推奨されます。
運動強度の決め方について
運動負荷量の設定は、1RMを求めてそれに対する相対的割合で処方する方法が一般的です。心疾患患者に対して1RMを用いて運動処方を作成する場合は、1RMの30〜40%程度の強度から始めることが推奨されています。
1RMを測定できない場合は、8〜10回反復できる負荷量として考えると有効です。
12〜15回続けても自覚的疲労度が高くならない場合には負荷を漸増していくことも有効となります。また、自覚的疲労度を目安にする場合には、Borgスケール11〜13【ややきつい】を以下となるように実施すべきとなります。
レジスタンストレーニングの実際
元々活動量が少ない(低身体活動者)方や運動習慣がない方に対しては、開始2習慣は20〜30%1RMの低強度で高頻度の運動で筋線維の参加動員数を改善し、その後は筋肥大を目的として目標の運動負荷へ徐々にあげていくことが望ましいです。
慢性心不全患者や高齢者に特徴的なサルコペニア等の対象者にも同様に20〜30%1RM程度の低強度から開始し、2週間程度かけて徐々に漸増していくようにしましょう。
レジスタンストレーニングを取り入れた成功事例
実際にレジスタンストレーニングを取り入れた心臓リハビリの成功事例を紹介します。
例1: Aさん(65歳、男性)
Aさんは、心筋梗塞からの回復を目指して心臓リハビリを開始しました。当初はウォーキングを中心にした有酸素運動のみを行っていましたが、医師の勧めでレジスタンストレーニングも取り入れることにしました。週に3回、軽いダンベルを使った腕と脚の運動を始め、3ヶ月後には筋力が明らかに向上し、日常生活での疲労感も減少しました。また、趣味であるゴルフの再会もすることができました。
例2: Bさん(58歳、女性)
Bさんは、心臓バイパス手術後のリハビリ中に、低強度のレジスタンストレーニングを始めました。医師と理学療法士の指導の下、バンドを使った運動や軽い自重運動を週に2回行いました。6ヶ月後には体力が回復、自覚的疲労感が軽減し、趣味のガーデニングを再開することができました。
まとめ
心臓リハビリにおいて、レジスタンストレーニングは筋力や体力を向上させ、全体的な健康状態を改善する効果があります。医師の指導の下で安全に行い、徐々に負荷を増やしていくことで、その効果を最大限に引き出すことができます。心臓病からの回復を目指す方にとって、レジスタンストレーニングは強力な味方となると思われます。