心臓リハビリテーション指導士試験対策:運動処方 問題&解説2

はじめに

問題1 心疾患患者の有酸素運動に対する運動処方として正しいものはどれか。

  • 運動療法開始初期は運動中の心拍血圧モニタリングが容易で、運動強度が一定に保ちやすい形態(トレッドミルや自転車エルゴメーターなど)を選ぶとよい。
  • 嫌気性代謝閾値(AT)は至適強度の一つである。
  • 運動負荷試験を行っていれば心電図や血圧のモニタリングはする必要がない。
  • 有酸素運動は週3回以上行うように指導する。
  • 有酸素運動は軽い〜中等度程度の負荷で行われるために準備運動や生理運動は必要ない。

問題1の解説

運動療法開始初期には血圧・心電図のモニタリングは安全の観点から監視下で運動を行うことが推奨されます。ウォームアップは末梢血管を拡大し、心臓への急激な負荷を軽減したり、関節や骨格筋の傷害の予防のためにも行うことが推奨されます。さらに、クールダウンは運動終了時の静脈灌流および血圧の急激な低下による冠血流の低下を予防したり、筋肉痛を翌日に残さないようにするために有効と言えます。

問題2 心疾患患者の骨格筋トレーニングの運動処方として正しいものはどれか。

  • 心疾患患者には骨格筋トレーニングは適応でない。
  • 骨格筋トレーニングの目的には、除脂肪体重の増加や基礎代謝の増加がある。
  • 特に高齢心疾患患者には、自立性の改善や転倒予防なども期待できる。
  • 病態が安定していれば、どんなに高い負荷でトレーニングしてもよい。
  • 運動強度は最大1回反復負荷(1RM)に対する相対的強度(60〜80%程度を原則)とする。

問題2の解説

近年では心疾患患者に対する骨格筋トレーニング(レジスタンストレーニング)は注目されており、一般的になってきております。しかしながら、過度な負荷での骨格筋トレーニングに対する安全性は確認されていないことも事実となっています。

また、導入を行わない患者層には、以下のような場合が挙げられます。

  • 症状のあるうっ血性心不全
  • コントロールされていない不整脈
  • 重篤な弁疾患(弁形成術後)
  • 心筋梗塞急性期
  • コントロールされていない高血圧
  • 胸骨正中切開術後8週間以内
  • 大動脈穿刺直後24時間以内

状態によっては医師との相談のもと実施してもよい場合や、禁忌に値する場合もあるため心疾患患者に対する骨格筋トレーニングの導入についてはより慎重に導入するべきとなります。

絶対的禁忌や相対的禁忌についてはこちらの記事を参考ください。

レジスタンストレーニングの禁忌
はじめにレジスタンストレーニングは『抵抗運動』、『筋力トレーニング』などの同義語があります。レジスタンストレーニングは、有酸素運動と比較すると従来より敬遠される傾向にあったようですが、近年では有酸素運動と並行して取り入れることでよ...

問題3 心疾患患者の運動処方の種類として正しいものはどれか。

  • 自覚的運動強度で11〜13程度の運動書のうは曖昧なため心疾患患者には適さない。
  • β遮断薬服用時は運動に対する心拍応答が低下するため、心拍数による運動処方には注意が必要である。
  • Karvonen法による運動処方は、係数として0.4〜0.6を用いた計算により目標心拍数を算出する。
  • 嫌気性代謝閾値(AT)時の運動強度(ワット)で処方すること場合もある。
  • 心肺運動負荷試験を行った場合は、嫌気性代謝閾値(AT)時の心拍数で処方する。

問題3の解説

運動処方の検討や運動負荷時の評価を行い際には客観的指標である血圧や心拍数はもちろんのこと、自覚的疲労度、自覚的運動強度としてBorg指数を用いることは有用とされます。

Karvonen法による目標心拍数の設定はこのような式で求められます。

目標心拍数=【(220ー年齢)ー安静時心拍数】✖︎係数➕安静時心拍数

係数は0.4〜0.6が一般的です。

酸素摂取量には時定数(τ)があり、実際に嫌気性代謝閾値(AT)と認識された時点での酸素摂取量はその時定数の分だけ遡った時の運動強度(ワット)に対する応答となるため、実際の運動処方にはAT時の1分前に遡った運動強度(ワット)に設定します。

問題4 心疾患患者の運動療法中の心電図モニター基準として正しいものはどれか。

  • 運動時に出現あるいは増悪する心室性不整脈が認められる場合
  • 運動に伴う収縮期血圧の低下が認められる場合
  • 身体的あるいは知能障害のために自分で心拍監視ができない者に対して
  • 重篤な冠動脈病変ならびに運動によって誘発される著しい虚血(2mm以上のST低下)認められる場合
  • 左室駆出率30%以下の著しい左室機能障害を有する者に対して

問題4の解説

運動療法中の心電図モニター基準
  • 著しい左室機能低下(30%以下)
  • 安静時の複雑な心室性不整脈
  • 運動時に出現または増悪する心室性不整脈
  • 運動に伴う収縮期血圧の低下
  • 突然死状態からの生存者
  • うっ血性心不全、心原性ショック、重篤な不整脈あるいはその2つを合併した心筋梗塞症例
  • 重篤な冠動脈病変ならびに運動によって誘発される著しい虚血(2mm以上のST低下)
  • 身体的あるは知能障害のために自分で心拍監視ができない者

運動負荷試験の心電図変化陽性基準

陽性

  • 水平型:1mm以上の低下
  • 下向型:1mm以上の低下
  • 上向型:2mm以上の低下

陰性

  • 左記以外

(境界型:上向型1mm以上2mm未満の低下)

タイトルとURLをコピーしました