理学療法士の仕事はAIでどう変わる?厚労省がリハビリサマリーに生成AIを活用へ

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理学療法士の仕事はAIでどう変わる?厚労省がリハビリサマリーに生成AIを活用へ

「理学療法士の仕事にも、いよいよAIが本格的に入ってくるのか」

2026年9月、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士にとって気になるニュースが報じられました。

厚生労働省が、令和9年度の概算要求において、医療現場の業務効率化を目的としたAI活用事業を新規に要求。その用途の一つとして「リハビリサマリ作成」が示されています。

私はこのニュースを見て、「ついにここまで来たか」というより、率直には「やっと来たか」と感じました。

この記事では、厚生労働省の動きを整理したうえで、現役の理学療法士として、AIによってリハビリの仕事はどう変わるのか、そしてAI時代に理学療法士に何が求められるのかについて考えてみます。

1.厚労省がリハビリサマリーへの生成AI活用を検討

今回報じられたのは、厚生労働省の「ヘルスケアAX・DX推進本部」において、令和9年度概算要求のAI施策が示されたというニュースです。

その中で、国立病院機構の病院に導入する機器の用途例として、

  • 会議録作成
  • 看護サマリー作成
  • リハビリサマリー作成

などが挙げられました。

ポイント

ここで注意したいのは、現時点で「30億円の予算が確定した」という話ではないことです。報道されているのは、令和9年度概算要求として新規に30億円を要求したという段階です。

それでも、国の予算要求資料の中に「リハビリサマリ作成」が生成AIの具体的な用途として記載されたことには大きな意味があると考えています。

これまで「医療でもAIを活用していこう」という話はありました。

しかし今回は、より具体的に「リハビリテーションの記録業務」がAI活用の対象として示されたわけです。

2.私は「ついに」より「やっと来た」と感じた

このニュースを見たとき、私が最初に感じたのは、

「ついにここまで来たか」ではなく、
「やっと来たか」

という感覚でした。

もちろん、医療現場では個人情報や安全性、責任の所在など、AIを導入するうえで慎重に考えなければならない問題があります。

しかし、他の業界ではすでに生成AIを仕事の中に取り入れている場面が増えています。

文章作成、議事録作成、情報整理、データ分析、顧客対応など、AIによって効率化されている業務は少なくありません。

一方で、医療、とくにリハビリテーションの現場では、まだまだAI活用が十分に進んでいるとは言いにくいと感じます。

例えば、会議の議事録ですら、AIを活用している施設はまだ多くないのではないでしょうか。

そう考えると、今回の厚生労働省の動きは、私にとって「ようやく医療・リハビリの現場にも本格的なAI活用の流れが来た」という印象でした。

3.リハビリサマリーは、たしかにAIと相性がいい

今回、AI活用の対象として挙げられた「リハビリサマリー」について考えてみます。

理学療法士がリハビリサマリーを作成するとき、単純に現在の患者さんの状態だけを書けばよいわけではありません。

入院時の状態から現在までの経過を確認し、

  • どのような疾患・障害があったのか
  • 入院時の身体機能はどうだったのか
  • どのようなリハビリを行ったのか
  • どのように能力が変化したのか
  • 現在どのような課題が残っているのか
  • 退院後に何が必要なのか

などを整理して文章にします。

そのため、実際には過去のカルテ記録を何度も遡りながら文章を作成することになります。

これはかなり労力のかかる作業です。

「情報を集める」→「整理する」→「文章にする」

この一連の作業は、生成AIが比較的得意としている領域です。

その意味では、リハビリサマリーと生成AIは非常に相性が良いと考えています。

4.リハビリサマリーには「個人差」が出やすい問題もある

もう一つ、私がリハビリサマリーについて感じている問題があります。

それは、施設や個人によって書き方にかなり差が出る可能性があることです。

もちろん、必要な情報を適切に伝えられていれば問題ありません。

しかし、決まった書式や記載方法が全国で完全に統一されているわけではありません。

そのため、

PT A PT B
経過を詳しく記載する 現在の能力を中心に記載する
評価結果を多く記載する ADLや歩行能力を中心に記載する
今後の課題まで詳しく記載する 実施したリハビリ内容を中心に記載する

というように、情報量や文章構成に違いが出ることがあります。

AIを活用することで、一定の項目を整理し、必要な情報を漏れにくくするというメリットも期待できます。

ただし、AIが作成した文章をそのまま使用するのではなく、最終的には担当セラピストが内容を確認することが前提になるでしょう。

5.ただ、個人的には「サマリーよりカルテ記録をAI化してほしい」

ここからは、今回のニュースを見た私自身の意見です。

リハビリサマリーのAI化には賛成です。

ただ、個人的にもっとAI化してほしいと思っているのは、日々のリハビリカルテ記録です。

理由は非常にシンプルです。

リハビリサマリーを書く頻度より、日々のカルテ記録を書く頻度のほうが圧倒的に多いからです。

リハビリサマリーは、基本的には退院や転院など、一定のタイミングで作成します。

一方、カルテ記録は日々発生します。

患者さんの評価を行い、治療を行い、その結果を記録する。

これを担当患者数に応じて毎日繰り返します。

だからこそ、私は「リハビリサマリーをAIで作れるようにする」だけではなく、「日々のカルテ記録そのものをAIで効率化する」ことに大きな期待を持っています。

6.理想は「話す→AIが記録→PTが確認」

個人的にイメージしているのは、例えば次のようなシステムです。

1 患者さんのリハビリを実施

歩行練習、ROM、筋力訓練、起立練習などを実施します。

2 PTが音声などで内容を入力

「本日は歩行器歩行を20m実施。右立脚期に膝折れを認めた。前回と比較して……」 など、自然な言葉で記録します。

3 AIがカルテ形式に整理

AIが入力内容を整理し、施設で使用している記録形式に合わせて文章化します。

4 PTが確認・修正

AIの内容をPTが確認し、必要な修正を行います。

5 電子カルテへ記録

確認済みの内容を正式なカルテ記録として登録します。

こうした仕組みが実用化されれば、単純な文章作成にかかる時間を減らし、患者さんと向き合う時間を増やせる可能性があります。

7.リハビリ計画書などにもAIを活用してほしい

AIの活用範囲は、リハビリサマリーやカルテだけに限定する必要もないと思っています。

例えば、

  • リハビリテーション実施計画書
  • カンファレンス資料
  • カンファレンス議事録
  • 情報提供書
  • 退院時の情報整理
  • 患者・家族への説明資料

などにも活用できる可能性があります。

もちろん、それぞれの文書には目的があり、AIが勝手に作成してよいわけではありません。

しかし、情報を整理して文章の下書きを作る部分については、AIが担える仕事はかなりあるのではないでしょうか。

8.AIがアセスメントや治療プランまで作る時代が来る?

ここからは、少し話を先に進めてみます。

現在は「記録をAIで作る」という話が中心ですが、AIの能力がさらに向上すれば、

評価結果

アセスメント

問題点の抽出

治療プランの提案

というところまでAIが支援するようになる可能性があります。

例えば、

「右膝関節伸展制限、右大腿四頭筋筋力低下、歩行時の右膝折れを認めています。これらの情報から、立脚期の膝関節安定性低下が歩行能力に影響している可能性があります。追加評価として……」

といった文章をAIが提示する未来です。

こうなってくると、理学療法士の仕事は大きく変わるかもしれません。

9.「考えないセラピスト」が増える可能性

ここには、私は少し危機感も持っています。

AIが評価結果を入力するだけでアセスメントを作ってくれる。

さらに治療プランまで提案してくれる。

それが当たり前になったとしたら、セラピスト自身が症例について考える機会が減る可能性があります。

AIが正しい答えを出してくれるから、自分で考える必要がない。

この状態になってしまうと、理学療法士としての臨床推論能力が育ちにくくなる可能性があります。

特に新人理学療法士にとっては、この問題は大きいと思います。

臨床経験が少ない時期には、

「なぜこの評価をするのか?」 「なぜこの問題が起こっているのか?」 「他にどのような可能性があるのか?」 「この治療を選択する理由は何か?」 と考える経験そのものが重要です。

その思考過程をAIに丸ごと任せてしまえば、目の前の症例について考える機会を失ってしまうかもしれません。

10.では、AI時代にはアセスメント力より技術力が重要になるのか?

ここは、これからの理学療法士を考えるうえで非常に興味深い問題だと思います。

もしAIがかなり正確にアセスメントできるようになったら、

「この患者さんには何が問題なのか」

をAIが教えてくれるようになるかもしれません。

では、理学療法士には何が残るのでしょうか。

一つ考えられるのが、実際に患者さんの身体に触れて治療する技術です。

しかし、私は単純に「アセスメント力より技術力が重要になる」とは考えていません。

むしろ、

「AIが提示した情報を、患者さんの実際の状態と照らし合わせて判断する能力」

が重要になるのではないかと思います。

AIが「右膝伸展制限が問題」と判断したとしても、実際に患者さんを見てみると、歩行能力を制限している主要因は別のところにあるかもしれません。

検査結果だけでは分からないことがあります。

患者さんの表情、疲労、痛み、動作の癖、生活背景、本人の希望。

これらを含めて最終的に判断するのは、やはり人間のセラピストなのではないでしょうか。

11.AI時代に価値が高まるのは「何を考えるか」

AIが文章を作ってくれるようになる。

AIが情報を整理してくれるようになる。

AIがアセスメントを提案してくれるようになる。

AIが治療プランまで提案してくれるようになる。

ここまで進んだとき、私は「自分で文章を書く能力」そのものの価値は相対的に下がっていくと思います。

一方で重要になるのが、

  • 何をAIに入力するのか
  • どの情報が重要なのか
  • AIの回答は本当に正しいのか
  • 他の可能性はないのか
  • この患者さんには本当に当てはまるのか
  • 患者さん自身は何を望んでいるのか

といった判断です。

AI時代に必要なのは、「AIより多く知識を持つこと」だけではなく、「AIの出した答えを疑い、患者さんに合わせて判断する能力」なのかもしれません。

12.AIを使うPTと、AIに使われるPT

私は今後、理学療法士の間でも大きな差が生まれる可能性があると思っています。

AIを使うPT AIに使われるPT
AIを情報整理の道具として使う AIの答えをそのまま信じる
自分の臨床推論をAIで補強する AIにアセスメントを丸投げする
AIの回答を検証する 検証せずに採用する
患者さんを実際に観察する AIが提示した情報だけを見る
AIによって時間を作る AIによって考える時間を失う

同じAIを使っていても、その使い方によって結果は大きく変わると思います。

13.新人理学療法士こそ「AIに任せる前に考える」経験が必要

特に新人PTについては、AIを使うこと自体を否定する必要はないと思っています。

むしろ積極的に使ってよいと思います。

ただし、

「まずAIに答えを聞く」

という使い方には注意が必要です。

例えば症例についてAIに相談する前に、

  1. 自分は何が問題だと思うのか
  2. なぜそう考えたのか
  3. 何を追加で評価したいのか
  4. どのような治療が必要だと思うのか

を一度自分で考える。

そのうえでAIに、

「私はこう考えました。別の可能性はありますか?」

と聞く。

この使い方であれば、AIは思考を代替するものではなく、思考を深めるための壁打ち相手になります。

14.それでも「人間のPT」が必要だと思う理由

AIがどれだけ進化しても、私は理学療法士の仕事がそのままなくなるとは考えていません。

なぜなら、理学療法は単純な情報処理だけではないからです。

患者さんの歩行を実際に見る。

身体に触れる。

動作を一緒に行う。

患者さんの反応を見る。

その日の体調によって運動負荷を調整する。

「今日は少し不安です」という患者さんの言葉を聞く。

そして、その人が退院後にどんな生活を送りたいのかを考える。

こうした情報は、単純な検査データだけでは捉えきれません。

AIは理学療法士の「代わり」になるというより、理学療法士が本来やるべき仕事に集中するための「道具」になっていく。

15.AIによって「患者さんと向き合う時間」が増えるなら歓迎したい

私がAIの導入に基本的に賛成なのは、AIそのものに興味があるからだけではありません。

患者さんに向き合う時間を増やせる可能性があるからです。

理学療法士の仕事には、患者さんに直接関わる時間だけではなく、多くの記録・書類作成・情報整理があります。

もちろん記録は必要です。

医療安全のためにも、情報共有のためにも、記録をなくすことはできません。

だからこそ、

「必要な記録は残す。でも、文章を作るためだけに費やしている時間は減らす」

という方向にAIを活用できれば理想的だと思っています。

16.これからの理学療法士に求められる能力

AIが普及したとき、理学療法士に求められる能力は変わっていく可能性があります。

これまで以上に重要になる可能性がある能力 理由
臨床推論 AIの提案を評価し、患者に合わせて判断するため
動作観察 実際の患者の状態を捉えるため
評価能力 AIに入力する情報そのものの質を高めるため
治療技術 実際の患者への介入を行うため
コミュニケーション 患者の希望や生活背景を把握するため
AIリテラシー AIを適切に使い、出力を検証するため

17.理学療法士の仕事がなくなるのではなく、「仕事の中身」が変わる

「AIが理学療法士の仕事を奪うのではないか」

という不安を持つ人もいると思います。

しかし私は、少し違う方向に進むのではないかと思っています。

例えば、

記録を書くPT

記録をAIに作成させ、内容を判断するPT

アセスメントを書くPT

AIのアセスメントを検証するPT

情報を探すPT

AIを使って必要な情報を短時間で集めるPT

というように、仕事の中身が変わっていく可能性があります。

私が考えるAI時代の理学療法士

AIに仕事を奪われないようにすることよりも、

「AIに任せられる仕事は任せて、人間にしかできない仕事に時間を使う」

という考え方が重要なのではないでしょうか。

18.まとめ|AIは理学療法士の敵ではなく、使い方次第で強力な道具になる

今回、厚生労働省が令和9年度概算要求において、医療現場のAI活用を進める事業を新規要求し、その用途例としてリハビリサマリ作成が示されたことは、理学療法士にとっても大きなニュースだと思います。

私はこのニュースを見て、「ついに」というより「やっと」という感覚を持ちました。

リハビリサマリーは、過去の記録を確認して情報を整理し、文章化する必要があるため、生成AIとの相性は良いと考えています。

一方で、私自身がより期待しているのは、日々のリハビリカルテ記録へのAI活用です。

サマリーよりも日々の記録のほうが圧倒的に頻度が高く、そこを効率化できれば、理学療法士の働き方そのものが変わる可能性があります。

そして、さらにAIが進化すれば、アセスメントや治療プランまでAIが提案する時代が来るかもしれません。

そのときに重要なのは、AIにすべてを任せることではありません。

AIが出した答えを疑い、患者さんの実際の状態と照らし合わせ、自分自身で判断する能力。

これが、これからの理学療法士により求められるのではないかと私は考えています。

AIに考えてもらうのか。
AIと一緒に考えるのか。

この違いは、これからの理学療法士にとって非常に大きな意味を持つのではないでしょうか。

AIによって記録や情報整理にかかる時間が減り、その分、患者さんを観察する時間、考える時間、治療する時間が増える。

私は、そんなAI活用の形に期待しています。

参考情報

・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士向けニュースサイト「POST」掲載記事「リハビリサマリ作成に生成AI 厚労省、69病院に30億円要求」

・厚生労働省「医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業」

・大阪病院・富士通Japan・日本マイクロソフトによる医療現場での生成AI活用に関する取り組み

※本記事では、現時点で公表されている情報をもとに、生成AIと理学療法士業務の今後について筆者の見解を述べています。AIによる医療情報の生成・整理を実際の診療業務で利用する場合は、各施設の規定、個人情報保護、セキュリティ、医療安全に関するルールを確認する必要があります。

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