心リハ指導士試験対策:問題形式で勉強しよう!6

問題1 運動負荷装置・方法について誤っているものはどれか。

  • 1 心リハでのトレッドミルは時速10km程度で十分である。
  • 2 6分間歩行は患者のモチベーションに左右されやすい。
  • 3 エルゴメーターは仕事率を定量化できる。
  • 4 マスター負荷試験は仕事率を定量化できない。
  • 5 トレッドミルは最大負荷まで行いにくい。

問題2 運動負荷試験室について正しいものはどれか。2つ選べ。

  • 1 データ処理用のデスクは必要ない。
  • 2 温度は20℃、湿度は40%が望ましい。
  • 3 下肢挙上可能なベッドが必要である。
  • 4 直流除細動器が必要である。
  • 5 部屋は8m×8m程度必要である。

問題3 運動負荷試験(CPX)に対する準備で誤っているものはどれか。2つ選べ。

  • 1 どのような場合で中止するか事前に話し合う。
  • 2 胸部誘導は安静時心電図同様に臥位で装着する。
  • 3 検査の2時間前から飲食禁止となる。
  • 4 完全な空腹時ではガス交換比が上昇するので注意が必要である。
  • 5 服薬内容・時間を把握しておく必要がある。

問題4 CPXの相対的禁忌について誤っているものはどれか。

  • 1 左主幹部冠動脈狭窄
  • 2 電解質異常
  • 3 高度房室ブロック
  • 4 下肢血栓症
  • 5 著明な肺高血圧症

問題5 CPXプロトコールについて正しいものはどれか。2つ選べ。

  • 1 一段階負荷試験は運動負荷心電図に用いられる。
  • 2 多段階漸増負荷試験は虚血目的に行われる。
  • 3 ramp負荷法は仕事率を直線的に上げる。
  • 4 ramp負荷法は毎分20〜50W増加させていく。
  • 5 ramp負荷法は運動事件が20分程度で終了するように設定する。

問題6 CPXの中止基準で正しいものはどれか。

  • 1 血圧上昇(200mmHg)
  • 2 ふらつき
  • 3 頻脈
  • 4 II度房室ブロック
  • 5 下向型ST低下(1mm)

問題7 一段階負荷における運動中の指標で正しいものはどれか。

  • 1 心不全症例では安静時にノルエピネフリンが低下する。
  • 2 仕事率(WR)がAT以下の場合、VO2は1分以内に定常状態になる。
  • 3 定常状態時のVO2は心不全症例で増加する。
  • 4 VO2は個体の運動効率を示す。
  • 5 運動中、交感神経活性亢進により骨格筋や重要臓器以外の血管は拡張する。

問題8 一段階負荷における運動開始時の指標で誤っているものはどれか。

  • 1 運動開始時とともに急激にVO2は上昇する。
  • 2 第1相をτonという。
  • 3 第1相ではRは変化しない。
  • 4 第3相ではRは低下する。
  • 5 心拍出量増加は主に末梢血管拡張に規定される。

問題9 ATの決定方法として誤っているものはどれか。

  • 1 VE/VCO2が増加せずにVE/VO2が増加する点
  • 2 Rの運動強度に対する上昇点
  • 3 VO2のVCO2に対する上昇点
  • 4 ETCO2が上昇せずにETO2が増加する点
  • 5 VEのVO2に対する上昇点

問題10 RCPの決定方法で正しいものはどれか。

  • 1 ATを超えてVO2の増加がVCOの増加より大となる点
  • 2 Rが1.10を超えた点
  • 3 ETCO2が持続的に低下を開始する点
  • 4 VE vs VCO2 slopeでVEの増加に対するVCO2の増加がより大となる点
  • 5 VE/VO2が最下点から上昇を開始する点

問題1の解説

解答 

運動負荷試験に用いられる方法についての問題である。基本的なところだがしっかり押さえておく必要がある。

マスター負荷試験
  • 階段昇降による負荷試験を標準化し、その後長らくマスターニ段階負荷試験は虚血性心疾患診断に用いられてきた。ニ段の山形の階段を用いて1分半の昇降や通常用いられる3分間の昇降を行なって、心電図変化により虚血の有無を判定する。
  • 装置が安価な利点はあるが、仕事率の定量化はできず負荷中の心電図をモニターしなかったり、高齢者が転びやすかったりする安全性の問題があり、さらに診断制度が低いため専門病院ではほとんど実施されなくなった。
  • あくまで虚血診断に用いられる検査であり、心臓リハビリテーションの運動処方に資するところは少ないという。
トレッドミル

速度は持続0.1kmから0.1km刻みで時速15km程度、角度は0%から20%程度を外部から制御できれば良い。通常、若年健常男性でも時速7km以上は歩行が難しく、走行となる点を考えると、心リハでのトレーニング用には時速10km程度の速度で十分となる。トレッドミルは最大負荷まで行いやすいが、転倒への危険性という短所もある。

エルゴメータ

トレッドミルが仕事率を定量できないおkとに対して、エルゴメータは仕事率の定量化、安全性などに優れており急性期の患者や安全域の狭い患者、不整脈を有する患者などに好ましい。現在入手可能なエルゴメータには以下の3種類がある。

  • 機械式:ブレーキ用のホイールに掛け、ベルトにかかる力を増減して制御する。
  • 電磁制動式:回転する円板に発生する渦電流を利用する。
    • 最も多く用いられている。
    • 定期的なキャリブレーションが必要であり20(10)ワット以下の負荷は設定できない。
  • サーボモータ型:サーボモータを使用する。
6分間歩行テスト

虚血誘発を目的としたものではなく、歩行時の息切れや易疲労性を評価しようとするもの。ATレベルよりやや強い強度で6分間で症候性限界となるような歩行速度で歩行する場合が最も良い成績が出せる、症候限界性最大運動負荷試験の一つである。患者のモチベーションや検査者の声掛け、身長に影響され、再現性の低さや施設間での比較が困難である場合が多い。

問題2の解説

解答 3 4

運動負荷試験室の準備

心肺運動負荷試験を行う検査室は、採光が十分で清潔かつ換気がよく、温度は25℃前後、湿度は60%程度が望ましい。部屋の広さは最低4m×4m程度で、下肢挙上可能なベッド、データ処理用のデスクが必要である。救急カートは緊急時に処置を行うのに必要な機材、採血用具、救急薬品などを揃え、緊急時に迷わないように院内で薬品や機材の配置を統一しておくと良い。直流除細動器や酸素吸入装置も必要である。

問題3の解説

解答 2 4 

被検者の準備

事前に、運動負荷試験の目的や危険性などに関して、十分なインフォームドコンセントを取得する。どのように負荷が強くなり、どのような場合に中止するか、意思の疎通方法について十分に説明する必要がある。検査の2時間前からは飲食・喫煙・激しい労作は禁止する。心肺運動負荷試験では完全に空腹の状態では血糖値が下がるためガス交換比が低下するで注意が必要である。検査に先立って必ず問診を行い、運動を制限する末梢血管疾患、整形外科的疾患、神経学的疾患の徴候や症状を確認する。これは安全性を確保する目的だけでなく、適切なプロトコル選択する際の助けにもなる。また、服薬内容、服薬時間を把握することも重要であり、特に運動負荷試験の結果に影響を及ぼすような薬剤には注意する。

  • 心電図装着について
    • 胸部誘導は安静時心電図と同じであるが、臥位ではなく座位または立位で装着する。四肢誘導は工夫が必要であり、下肢電極(LF・LR)はそれぞれ左右の肋骨弓下端へ、上肢電極(LA・RA)は背部の肩甲棘突起付近に装着すると剥がれにくい。

問題4の解説

解答 

運動負荷試験における絶対禁忌と相対禁忌

絶対的禁忌
  • 急性心筋梗塞発症期(3日以内)
  • 不安定狭心症
  • 症状または血行動態障害を起こすコントロールされていない不整脈
  • 症候性大動脈狭窄
  • コントロールされていない症候性心不全
  • 急性肺塞栓または肺梗塞
  • 運動機能に影響を及ぼすか、運動によって悪化する恐れがある急性の非心臓性疾患(感染症、腎不全、甲状腺中毒症、運動器疾患)
  • 急性心筋炎または心膜炎
  • 安全で適正な試験の実施を妨げると思われる身体障害
  • 下肢の塞栓症
相対的禁忌
  • 左主幹部冠動脈狭窄またはそれと同等の状態
  • 中等度の狭窄性弁膜症、症状のない重症大動脈弁狭窄症
  • 電解質異常
  • 著明な動脈高血圧または肺高血圧
  • 頻拍性不整脈または徐脈性不整脈
  • 肥大型心筋症
  • 試験協力不能を招く精神的障害
  • 高度房室ブロック

問題5の解説

解答 2 3

一段階負荷試験

一段階負荷試験は基本的な負荷試験であるが、異なった運動強度に対する反応を見るには、十分休息をとった後運動強度を変えて複数回実施しなけらばならない。

多段階漸増負荷試験(Bruce法)

多段階漸増負荷試験は一段階負荷試験の欠点を補うものであるが、同じ運動強度の漸増分に対しても、運動強度の低いところと高いところで呼吸循環応答が異なり解析が難しい。そのため心肺運動負荷試験には不向きである。虚血性心疾患診断を主な目的として開発されており、運動負荷心電図に用いられる。

直線的漸増負荷試験(Ramp負荷)

Ramp負荷試験は直線的に仕事率を増加させる負荷法であり、心肺運動負荷試験などで換気指標の応答をみるためには必須の方法である。通常は4分間のウォーミングアップに続いて、エルゴメータで1.5〜6秒ごとに1ワットずつ(毎分10〜40ワットの増加率)増加さえる方法が一般的である。負荷の増加割合をramp slopeとよび、被検者の体力に合わせて8〜12分程度で終了するように選択する。運動時間が長すぎると最高酸素摂取量が低くなり、短すぎると解析に十分な測定値が少なくなる。

問題6の解説

解答 

運動負荷試験では、自覚症状や他覚所見に基づく中止基準(エンドポイント)が定めたれており、これを元に検査担当医が検査の終了を決定する。

運動負荷試験の中止基準
  • 自覚症状
    • 進行性に増強する胸痛
    • 強い息切れ
    • 強い疲労感
    • めまい
    • ふらつき
    • 下肢痛
  • 他覚的所見
    • チアノーゼ
    • 顔面蒼白
    • 冷汗
    • 歩行障害
  • 心拍数
    • 運動中に生じる徐脈
    • 頻拍発作
  • 心電図変化
    • 水平型または下向型ST低下(2mm以上)
    • Q波形がない誘導でのST上昇(1mm以上)
    • 心房細動・上室頻拍・心室頻拍・心室粗細動・II度の房室ブロック・心室内伝導障害の発生
  • 血圧変化
    • 過度の上昇(250mmHg)
    • 過度の低下(負荷前より10mmHg以上の低下)
    • 上昇不全(仕事率を増加しても収縮期血圧の上昇が認められない場合)

問題7の解説

解答 

酸素摂取量(VO2)は、Fickの式(心拍出量=酸素摂取量/動静脈酸素含有量較差)からもわかるように、心拍出量の指標であり、同時に個体のエネルギー代謝量の指標かつ運動強度の指標である。早朝臥位安静時の酸素摂取量は基礎代謝量と呼ばれ、生命維持のための最低エネルギー代謝量である。また、40歳、体重70kgの白人男性の座位の酸素摂取量である3.5mL/min/kgを1METsと定義し、各種労作に対するエネルギー所要量の単位として汎用される。

一段階運動負荷試験では、VO2は安静時から運動開始とともに急激に上昇する。これは第I相と呼ばれる時期で、混合静脈血中の酸素含有量は運動開始前の安静時と同じであるため、動静脈酸素含有量較差は変化せず、この時相ではVO2の上昇はそのまま心拍出量の上昇を示している。第I相は、健常例では20〜30秒間、心疾患例では延長して1分以上となることもある。その後、指数関数的に上昇し(第II相)、この増加曲線の時定数(τon)は心拍出量の増加の時定数によく一致する。したがって、第I相ではガス交換比は変化しないが、第II相になると産生されたCO2は組織溶解度が高く、すぐには呼気中に排泄されないため、ガス交換比は低下する。

運動開始時の酸素摂取量動態はτonとして計測される。AT以下の一定運動強度を付加した場合、酸素摂取量は3分以内に定常状態になるので、その値1/2に達するまでの時間、すなわちT1/2を同じ目的で計測することもある。

運動中の指標として、仕事率(WR)がATレベル以下の場合、VO2は3分以内に定常状態になり、一定の仕事率に対するVO2は個体の運動効率を示す指標になる。一段階負荷で定常状態に達した時、VO2は心不全症例では低下する。また、安静時でもノルエピネフリンが増加し、生命維持に直接影響の少ない末梢組織への血流を減らして、少ない血液量を重要な臓器に優先的に送っている。特に、運動中は交感神経活性亢進により骨格筋や重要臓器以外の血管は収縮して骨格筋に優先的に血液を送り、代償的に運動効率を良くする機転が働いている。

運動終了後、VO2は減少するが比較的速い相と遅い相がある。VO2の減少が速い相では健常例では約2、3分、心疾患例では3分以上となる。

問題8の解説

解答 

第II相をτonという。

問題7の解説を参照。

問題9の解説

解答 

ガス分析法によるAT決定の判定基準
  • ガス交換比の運動強度に対する上昇点
  • VCO2のVO2に対する上昇点(V-slope method)
  • VE /VCO2が増加せずVE/VO2が増加する点
  • 終末呼気二酸化炭素分圧 (PETCO2)が上昇せず終末呼気酸素分圧(PETO2)が増加する点
  • VEのVO2に対する上昇点

問題10の解説

解答 

呼吸代償開始点(RC point)

運動強度がATを超えてさらに強くなると、乳酸に対する緩衝が不十分となり呼吸性代償が始まる。RC pointはこの呼吸性代償開始点でありこの点以降は動脈血のpHが急速に低下を開始する。RC point以上では換気はCO2だけでなくアシドーシスや高カリウム血症、カテコラミンなどでドライブされるためVE/VCO2は上昇に転じ、VE/VO2はさらに急速に増加、VE vs VCO2 slopeの傾きは増加、PETCO2は減少を始める。

  • ATを超えてVCO2の増加がVO2の増加より大となる点
  • RがAT以降変曲点を持って増加する点
  • VE/VCO2が最下点から上昇を開始する点
  • VE vs VCO2 slopeでVCO2の増加に対するVEの増加がより大となる点
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