脳卒中リハビリ・歩行評価|資料確認日:2026年11月7日
「10m歩行テストを12秒で歩いた」と記録があったら、速度は何m/sでしょうか。実際に計時した距離が6mなら0.50m/s、10mなら約0.83m/sです。歩行速度を求めるときは、コースの全長と計時区間を分けて確認します。
この記事では、安全に短距離を歩ける成人の脳卒中患者を主な対象に、計測の準備から再評価の読み方までを整理します。
この記事で学べること
10m歩行テストの計時区間を確認する
国内の脳卒中理学療法ガイドラインでは、歩行速度は頻用されるアウトカムで、測定距離には複数の設定があると整理されています。ここでは、米国神経理学療法アカデミー(ANPT)の実施資料に沿って、全長10m、中央6mを計時する方法を紹介します。
コースの目印
0mで出発 → 2mで計時開始 → 8mで計時終了 → 10mで停止
最初の2mは助走、中央の6mは計時、最後の2mは歩き抜けて停止する区間です。
- 準備:平坦で障害物のない直線に、0m・2m・8m・10mの目印を付けます。活動指示、体調、靴・装具・補助具、必要な見守りや介助を確認します。
- 説明:快適速度では普段の歩きやすい速さで、速歩では安全に出せる速さで歩いてもらいます。ANPTでは快適速度を先に測り、次に速歩を行います。各条件2試行の平均を記録します。
- 計時:先行する足の一部が2mの線を越えた時点で開始し、同様に8mの線を越えた時点で終了します。停止位置は10mと伝え、計時終了の線を目標に減速しないよう説明します。
安全に歩ける条件で実施します。新たな胸痛、強い息切れ、めまい、急な神経症状、転倒しかける不安定さが出たら計時を中断し、安全を確保します。急な症状や回復しない症状では施設の急変対応に従い、医師・看護師へ速やかに報告します。快適速度の歩行から不安定なら速歩を見合わせます。
歩行速度を計算し、条件を記録する
歩行速度(m/s)=実際に計時した距離(m)÷所要時間(秒)です。中央6mを12秒と10秒で歩いた場合、各試行は0.50m/sと0.60m/sで、その平均は0.55m/sです。計時距離と、採用した集計方法を記録しておくと再評価で条件を再現できます。
| 項目 | 記録例 | 記録する理由 |
|---|---|---|
| コースと計時 | 全長10m、中央6m、足が線を越えた時点 | 加速区間と分子に使う距離をそろえる |
| 速度の指示と試行 | 快適速度2試行、12秒・10秒、平均0.55m/s | 快適速度と速歩を区別し、同じ方法で集計する |
| 靴・装具・補助具 | 普段の靴、短下肢装具、四点杖 | 歩行を支える条件を再現する |
| 介助と症状 | 近接見守り、身体接触なし。計時中の停止なし | 速度と安全性、必要な支援を別々に伝える |
転倒を防ぐために必要な支援を優先します。前に進ませる介助が必要な場合や完遂できない場合は、採用する手順に従って扱い、支援の内容や測定を終えられなかった理由を記録します。
再評価で「速くなった」と言う前に
同じ条件で測れたかを確認する
歩行速度の差を見つけたら、計時区間、スタート方法、速度指示、装具・杖、介助の有無を照合します。距離の影響を検討した脳卒中の原著も、対象と手順が定まった研究です。異なる開始方法や支援条件を含む測定全般に、その結果を当てはめることはできません。
条件の変化と生活上の変化を分けて記録する
架空例です。初回は四点杖・近接見守りで0.55m/s、再評価は一本杖・近接見守りで0.60m/sでした。この記録からは、異なる補助具の条件で、それぞれの速度で歩けたことが分かります。速度差を機能改善の大きさとして解釈するには、比較可能な条件での測定が必要です。安全に再現できる場合は同一条件での結果を取り、実際に使う補助具での結果も条件を分けて記録します。
小さな差には測定誤差や日ごとの変動が含まれます。最小検出可能変化を使うときは、対象の病期と測定手順が近い資料を選びます。病棟や自宅での移動を判断する場面では、方向転換、疲労、段差、必要な介助、本人の目標も確認します。
次の評価に引き継ぐ一文
快適歩行速度0.55m/s。全長10mの中央6mを2試行(12秒・10秒)。普段の靴、短下肢装具と四点杖を使用し、近接見守りで実施。次回は同じ条件で再評価する。
歩幅・歩行率と速度の関係を確認する際は、正常歩行の基礎もあわせて参照してください。
【参照元】
- 脳卒中理学療法ガイドライン
- Quick Reference Guide for Administration of the CPG Measures
- Walkway lengths for measuring walking speed in stroke rehabilitation
- A Core Set of Outcome Measures for Adults With Neurologic Conditions Undergoing Rehabilitation: A Clinical Practice Guideline
