理学療法評価の優先順位の決め方|「検査したいことが多すぎる」理学療法士へ
急性期リハの限られた時間で、「今日、何を評価するか」を判断するための考え方を整理します。
「患者さんを評価したいけれど、検査したいことが多すぎて時間が足りない」。そう感じたことはありませんか。
急性期リハビリテーションでは、1人にかけられる時間や単位数が限られています。ROM、MMT、感覚、疼痛、バランス、歩行、ADL、認知機能、バイタルサイン…確認したい情報は尽きません。
しかし、すべての検査を一度に行うことが、必ずしも良い評価とは限りません。この記事では、理学療法評価の優先順位を決める考え方を、5つの質問・3STEP・症例を使って解説します。
「今、この患者さんに何を評価する必要があるか」
なぜ理学療法士は「全部評価したい」と思ってしまうのか
評価項目は疾患ごとに増えていきます。
脳卒中
運動麻痺、感覚障害、筋緊張、バランス、歩行
整形外科疾患
疼痛、ROM、筋力、アライメント、歩行
心不全
血圧、心拍数、SpO2、自覚症状、運動耐容能
共通して見たい項目
起居動作、ADL、認知機能、呼吸・循環状態
急性期リハでは「時間」という制約がある
急性期では、全身状態やリスクを確認しながら、離床・起居動作・立位・歩行・ADL練習まで進める必要があります。評価だけに時間を使えないのが現実です。
だからこそ、「すべてを評価する」から「今必要な評価を選択する」へ、考え方を切り替えることが重要です。
「評価する時間」と「治療する時間」を完全に分けない
治療や動作練習そのものが、評価の機会になります。たとえば歩行練習をしながら、次の点を観察できます。
- 歩行速度・歩行パターン
- 左右差・荷重状態
- バランス・疼痛
- 呼吸状態・疲労
評価=ベッドサイドでの検査、とは限りません。動作観察から情報を集め、次の評価や介入につなげることも立派な理学療法評価です。
評価項目を4つに整理する
① 安全性を判断する評価
バイタルサイン、意識、疼痛、呼吸・循環動態、医師の指示、禁忌・リスク
② 現在の問題を把握する評価
ROM、MMT、感覚、筋緊張、協調性、バランス、歩行、ADL
③ 仮説を検証する評価
「なぜ歩けない?」「なぜ立位が不安定?」を確かめる評価
④ 介入方針を決める評価
結果をもとに「今後どんな理学療法を行うか」を考える
評価は検査結果を集めるためではなく、介入方針を決めるために行います。
評価項目を選ぶときの5つの質問
検査の前に、次の5つを自分に問いかけてみましょう。
- この検査で何がわかる?患者さんについて何が明らかになるのかを考えます。
- 結果によって治療方針は変わる?結果がどうであっても今日の理学療法が変わらないなら、優先順位は低くなります。
- 今すぐ知る必要がある?翌日以降に追加してよい項目もあります。
- 安全性に関係する?離床・運動療法の安全に関わる情報は最優先です。
- すでに別の方法で確認できていない?カルテ、看護記録、画像、血液データ、他職種の情報、動作観察で把握できている場合があります。
筋力を測って介入を変えるのか、ROMの結果で運動内容を変えるのか。判断が変わるなら、実施する意義があります。
症例で考える「今日、何を評価する?」
80歳男性・心不全増悪後
- ベッド上で自力寝返り可能、座位保持可能
- 立位でふらつきあり
- 10m程度の歩行で息切れあり
- 本日のリハビリ時間は20分
ROM、MMT、BBS、10m歩行、握力、感覚検査、姿勢評価…やりたい検査は次々に浮かびます。ここで先に決めたいのは、「今日の評価で何を判断したいのか」です。
すべての検査をしなくても、今日の判断に必要な情報は得られます。
「評価できなかった=失敗」ではない
若手のうちは「ROMを全部測れなかった」「MMTまでできなかった」と、評価不足を感じやすいものです。しかし、実施できなかった項目があることと、その日の理学療法が不十分であることは同じではありません。
評価は一度で完成させなくていい
急性期は患者さんの状態が日々変わります。評価は少しずつ積み重ねるサイクルで考えましょう。
理学療法評価の優先順位を決める3STEP
「今、何をしても安全か?」
バイタルサイン、意識状態、呼吸・循環状態、疼痛、医師の指示を確認します。
「今日、何を判断する必要があるか?」
歩行練習を進めるか、離床を進めるか、介助量や運動負荷をどうするか。その判断に必要な評価を優先します。
「より深く理解するために、次に何を評価するか?」
初日にすべて行う必要はありません。臨床推論の進み具合に合わせて追加します。
よくある質問
Q. 新人でも優先順位をつけられるようになりますか?
はい。まず「結果を知ったあと、自分の行動は変わるか?」の1問だけでも習慣にすると、評価の目的意識が育ちます。
Q. 評価を後回しにして見落としが心配です。
安全性に関わる項目は最優先で確認し、それ以外は翌日以降に計画的に追加します。後回しにする項目を記録に残しておくと安心です。
Q. 動作観察だけで評価してよいですか?
観察は重要な情報源です。必要に応じて正式な検査で補うことで、より確かな判断につながります。
まとめ
- 「すべてを評価する」から「今必要な評価を選ぶ」へ
- 5つの質問:何がわかる/方針は変わる/今すぐ必要か/安全性/別の方法で確認済みか
- 評価は一度で完成させず、少しずつ積み重ねる
- 「今日はここまで、次回はこの評価」と決められることも臨床能力の一つ
安全性を確認し、今日必要な情報を集め、仮説を立てて追加評価する。このサイクルが、限られた時間でも質の高い評価につながります。
