問題1 心臓リハビリの時期的区分の基本的事項について正しいものはどれか。
- 1 AMIの時期的区分には第I相から第V相に分けられる。
- 2 急性期リハでは二次予防に向けた教育を開始する。
- 3 回復期リハは自己の健康管理対策が主となる。
- 4 維持期リハでは社会復帰、復職目標にする。
- 5 急性期リハの目標は退院、家庭復帰である。
問題2 米国医療政策局(AHCPR)からみた心リハ効果として謝っているものはどれか。
- 1 16〜25%の患者が禁煙に成功した。
- 2 安全性として運動により死亡率が上昇した報告はない。
- 3 包括的リハにより死亡率が25%低下する。
- 4 運動療法と患者教育により肥満が改善する。
- 5 情動ストレスやA型行動様式が改善する。
問題3 心不全の運動療法の効果として誤っているものはどれか。2つ選べ。
- 1 BNPの低下
- 2 THF-αの低下
- 3 左室リモデリングを悪化させない。
- 4 冠動脈側副血行路減少
- 5 左室拡張早期機能不変
問題4 運動療法のリスク分類Cの特徴はどれか。2つ選べ。
- 1 不安定な虚血が対象
- 2 運動耐容能<6METs
- 3 監視は必要ない
- 4 NYHA IまたはII
- 5 運動時に非持続性VT
問題5 運動処方の原則について正しいものはどれか。
- 1 有酸素運動低強度から中等度の運動頻度は週5回以上
- 2 一般的に5METs未満は低強度と表現される。
- 3 1回あたりの時間は最低40分を目標とする。
- 4 FITTのIは時間のことである。
- 5 小さい筋群を使う動的運動が適している。
問題6 レジスタンストレーニングの効果として上昇・増加しない項目はどれか。2つ選べ。
- 1 安静時心拍数
- 2 インスリン感受性
- 3 除脂肪体重
- 4 基礎代謝
- 5 最大運動時の心拍出量
問題7 HIITについて正しいものはどれか。
- 1 高強度の運動でも心疾患リスクはかわらない。
- 2 高強度の運動を連続して20分間行う。
- 3 頻度は週3回が望ましい。
- 4 運動療法アドヒアランスに影響を与える可能性が低い。
- 5 HRMaxの60〜80%の強度で行う。
問題8 急性心筋梗塞に対するリハビリテーションの運動療法について正しいものはどれか。2つ選べ。
- 1 発症後絶対安静、臥床状態は24〜48時間以内とすべき。
- 2 14日間パスはCK値が1500U/L以上の時である。
- 3 8METsの運動耐容能力があれば、8METsまでの作業なら行って良い。
- 4 退院1ヶ月は静的な運動を勧め、動的な運動は避ける。
- 5 運動耐容能力改善が最も期待できるのはphaseIIである。
問題9 AMI二次予防クラスIでないものはどれか。
- 1 減塩1日6g未満
- 2 10〜15RMほどの運動を行う。
- 3 AMI後のSASに対してCPAPを使用する。
- 4 脂肪摂取量を総エネルギーの25%以下に制限する。
- 5 低リスク患者にβblockerを投与する。
問題10 心不全に対する運動療法の相対的禁忌はどれか。
- 1 3週間以内の心筋梗塞
- 2 コントロール不良の糖尿病
- 3 最近おこった塞栓症
- 4 新たに発症した心房細動
- 5 NYHA IV
問題1の解説
解答 2
心リハの時期区分は第I相・第II相・第III相に分けられる。
- 急性期(第I相):身の回りの活動を安全に行うことができること。二次予防に向けた教育を開始すること。
- 回復期前期(第II相):退院・家庭復帰
- 回復期後期(第II相):社会復帰・復職
- 維持期(第III相):障害にわたる快適な生活の維持。自己の健康管理対策が主となる。
問題2の解説
解答 4
心臓リハビリテーションの効果として、基本的な利点はAHCPR(米国医療政策局)の心臓リハビリテーションガイドラインに記載されている7点である。
- ①運動耐容能の改善
- 冠動脈疾患や心不全に罹患した高齢者を含めた男・女患者の運動耐容能の改善し、特に運動耐容能が低下した患者に改善効果が著明である。運動療法は心リハの必須部分であり、運動療法の持続は運動耐容能を改善し続けるために不可欠。
- ②自覚症状の改善
- 心リハは、心筋虚血や心不全の臨床的な指標を改善し、適切な薬剤管理による症状改善にさらなる症状改善を付加する。
- ③脂質代謝の改善
- 運動療法と患者教育により脂質やリポ蛋白値を改善する。
- ④禁煙率の改善
- 包括的心リハによって、16〜25%の患者は禁煙に成功し、自発的な禁煙率もさらに上昇させる。
- ⑤QOLの改善
- 運動療法は包括的心リハの一部として精神的・社会的な機能を向上させ、情動ストレスやA型行動様式を改善させる。
- ⑥死亡率の改善
- 包括的心リハは、3年間の経過観察によると死亡率を25%低下(運動療法のみでは15%)させる。
- ⑦安全性(上記の効果が安全に獲得可能)
- 対照患者に比べて、運動療法患者で有病率や死亡率が上昇したとの報告はない。
問題3の解説
解答 4 5
- 運動耐容能の改善
- 安静時左室駆出率不変または軽度改善
- 運動時心拍出量増加反応改善
- 左室拡張早期機能改善
- 冠動脈内皮機能改善
- 運動時心筋灌流改善
- 冠動脈側副血行路増加
- 左室離モデリングを悪化させない
- BNP低下
- 筋力増加、筋量増加
- 好気的代謝改善
- 抗酸化酵素発現増加
- 血管内皮依存性血管拡張機能反応改善
- 一酸化窒素合成酵素(eNOS)発現増加
- 交換神経活性抑制
- 副交感神経活性亢進
- 心拍変動改善
- 炎症性サイトカイン(TNF-a)低下、CRP低下
- 健康関連QOL改善
- 心不全入院減少
問題4の解説
解答 2 5
心疾患患者の運動療法実施に際するリスク分類は、AHAが代表的で、対象者の疾患重症度や臨床的特徴、運動耐容能、既往歴などを考慮し、A〜D4段階にクラス分類されている。
今回の問題ではクラスCの特徴について問われている。
- NYHA IIIまたはIV
- 運動負荷試験の結果
- 運動耐容能<6METs
- <6METsの運動強度で狭心症または虚血性ST低下
- 運動中の収縮期血圧が安静時より低下
- 運動時に非持続性VT
- 以前に心停止エピソードがある
- 医師が生命を脅かす可能性があると考えている医学的な問題がある
- NYHA IまたはII
- 運動能力<6METs
- 心不全がない
- 安静時または6METs以下の運動負荷テストで心筋虚血または狭心症を認めない
- 運動時に収縮期血圧の適切な上昇
- 安静時または運動時の持続性VTまたは非持続性VTを認めない
- 活動の強度を自己監視する十分な能力
- 不安定な虚血
- 重症で症状のある狭窄症または逆流症
- 先天性心疾患
- 代償されていない心不全
- コントロールされていない不整脈
- 運動によって悪化する可能性のあるその他症状
問題5の解説
解答 1
近年、運動処方としてFrequency(頻度)、Intensity(強度)、Time(時間)、Type(種類)の頭文字をとってFITTがよく用いられる。
- 運動の頻度
- 「心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドラインでは、運動の頻度は「週3回以上、できれば毎日行うことが望ましい。」とされている。AHAでは、週5回以上の有酸素運動を推奨し、ACSMでは外来患者は最低週3回、できれば週5回以上の有酸素運動が推奨される。
- 運動の強度
- 心疾患に対する運動処方では、呼気ガス分析を併用した心肺運動負荷しけんを実施し、最適な運動強度を決定することが推奨される。
- 運動の時間
- 心疾患に対するリハビリテーションに関するガイドラインでは、前後にウォーミングアップとクールダウンを入れて、20〜60分の運動が推奨されている。
問題6の解説
解答 1 5
- 上昇・増加する項目
- 骨ミネラル含量
- 除脂肪体重
- 筋力
- インスリン感受性
- HDL
- 最大酸素摂取量
- 亜最大、最大持久性時間
- 基礎代謝
- 健康関連QOL
- 下降・低下する項目
- 脂肪率
- 糖負荷試験に対するインスリンの反応
- 基準インスリンレベル
- LDL
- 中性脂肪
- 亜最大運動時の二重積
問題7の解説
解答 3
HITTトレーニングの効果は冠動脈疾患患者で多く検証されており、通常の有酸素うんどうよりも有酸素能力の改善効果は高いことが知られている。一方で、高強度での運動療法は運動療法のアドヒアランスに影響を与える可能性が高いため、患者の運動療法プログラムからの脱落に注意が必要である。
- 頻度 : 週2〜3回 12週間
- 強度 : 85%〜95% HR max
- 時間 :運動の感覚は4分間の高強度と低強度の運動を交互に繰り返して実施し積極的休憩も挟む。
- 種類 : 自転車エルゴメータまたはトレッドミル、またはその両方を使用
問題8の解説
解答 2 5
- AMI発症直後の絶対安静・臥床状態は12〜24時間以内とすべきである。
- 血中CK値が1500IU/L以上では14日間パスを、以下では10日パスを採用している。
- PhaseII(特に回復期後期での心臓リハビリ)では、運動耐容能の改善が最も期待できる時期であり、その後のphaseIIIへの継続のためにも重要である。
- 運動耐容能が8METs程度であれば、許容運動負荷としては3〜6METs程度が望ましい。
- 退院後1ヶ月程度の期間はできるだけ動的な運動を勧め、静的(等尺的)要素の強い動作は避けるように指導する。
問題9の解説
解答 5
低リスク以外で禁忌のない患者にβ遮断薬を投与する。中等度ないし高度の左室機能低下のある患者に徐々に増量しながら投与する。
問題10の解説
解答 5
心不全に対する運動療法の禁忌について
- 最近3〜5日間で安静時、労作時の運動耐容能または息切れが進行性に増悪
- 低強度での明らかな虚血
- コントロール不良の糖尿病
- 急性全身疾患または感染症
- 最近起こった塞栓症
- 血栓性静脈炎
- 活動性の心膜炎または心筋炎
- 中等度から高度の大動脈弁狭窄
- 外科的治療を必要とする逆流性弁膜症
- 3週間以内の心筋梗塞
- 新たに発症した心房細動
- 最近1から3日間に体重1.8kg以上増加
- 持続的または間歇的ドブタミン治療中
- 運動による収縮期血圧低下
- NYHA IV
- 安静時または労作時に危険な不整脈の出現
- 臥位安静時心拍数100拍/分以上
- 以前より有する疾患の状態(貧血・喘息・末梢血管疾患など)