はじめに
心臓リハビリに関わるには切っても切り離せないのが薬の話。そのため心臓リハビリテーション指導士の試験にはほぼ100%と言っていいほどの確率で出題されると思われます。
今回は問題形式で記載し、後に詳しく解説しています。
少し文章が多めの勉強記事にはなりますが、内容としてはしっかり書いています。参考になれば幸いです。
問題1 降圧薬の薬理作用について誤りはどれか
- カルシウム拮抗薬は、血管拡張、心収縮力抑制、刺激伝導形抑制が主な作用である。
- アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は、レニン・アンジオテンシン系を抑制するとともに、カリクレイン・キニン・プロスタングランジン系の作用を増強する。
- アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)はAーII受容体のType2受容体を選択的に阻害し、血管収縮、体液貯留、交感神経亢進作用を抑制する。
- β遮断薬は、心拍出量を低下させ、レニンの産生を抑制し、中枢での交感神経活動を抑制する。
- α遮断薬は、交感神経末端の血管平滑筋細胞側のα1受容体を選択的に遮断することにより血管を拡張する。
問題2 次の各種薬剤の併用による相乗作用について誤りはどれか。
- β遮断薬とジルチアゼム ー 徐脈
- ACE阻害薬とスピロノラクトン ー 高K血症
- ジギタリスとCa拮抗薬 ー 房室結合部性頻拍
- カルシウム拮抗薬とH2ブロッカー ー 過度の血圧低下
- 利尿薬と非ステロイド系抗炎症薬 ー 尿量増加
問題3 利尿薬についての記載で誤りはどれか。
- サイアザイド系利尿薬は、レンレ系蹄でのNaとClの再吸収を抑制し、尿中のCa再吸収を促進する。
- ループ利尿薬は、遠位尿細管でのNaの再吸収を抑制し、腎血流量や糸球体濾過値は減少しない。
- K保持性利尿薬は、遠位尿細管・接合集合管に作用し、Kを喪失せずにNa排泄を促進する。
- 浸透圧利尿薬は、尿細管内浸透圧を上昇させ、水、Naの再吸収を抑制する。
- 心房性Na利尿ペプチドは、ペプチドホルモンで強力なNa利尿、平滑筋弛緩作用を有する。
問題1の解説
L型Caチャネルに作用し細胞内へのCaの流入を阻害することにより、冠動脈を含む血管平滑筋を弛緩し末梢血管抵抗を下げる。主な薬理作用は①血管拡張作用、②心収縮力の抑制、③刺激伝導系の抑制である。
レニンアンジオテンシン系抑制作用と降圧系のカリクレイン・キニン・プロスタングランジン系増強作用を併せ持っている。AーIをAーIIに変換する酵素キマーゼにより、ACE阻害薬によりACEを阻害してもAーIIは生成される。組織アンジオテンシンの抑制により、降圧とは独立して臓器障害の改善や進展予防が期待できる。さらに心肥大の改善やインスリン感受性の改善がある。大規模調査では糖尿病新規発症を抑制する効果を認めた。
具体的には抗動脈硬化作用、尿蛋白減少・腎保護作用、脳循環調整改善作用があり、糖尿病、心不全、脳循環不全などの合併例では第一選択薬となる。
咳の誘発作用があり高齢者の誤嚥性肺炎の予防にも用いられる。空咳はブラじき人がC線維を刺激し、サブスタンスPなど咳を誘発する物質を遊離することにより生じると考えられている。
AーII受容体にはType 1とType2のふたつの受容体があるが、Type1受容体に特異的に結合し選択的に阻害することによりAーIIの生理作用である血管収縮、体液貯留、交換試験系亢進作用を抑制する。ACEを介さないキマーゼ系も阻害する。さらにストレッチなどの機械的な受容体刺激も阻害する。副作用が少なく、ACE阻害薬と同等以上の降圧効果を有している。ACE阻害薬と異なり、キニンの分解を阻止する作用がないため、咳、発疹、血管神経浮腫などの副作用は少ない。
心拍出料の低下、レニン産生の抑制、中枢での交感神経抑制作用がある。投与初期には末梢血管抵抗は上昇するが、長期的には元に戻る。若中年者・虚血性心疾患、頻脈合併の高血圧に適応となる。しかし、β受容体全身の様々な臓器に分布しているため、非選択性遮断薬は心臓以外の臓器に関連する副作用を起こすことがある。そのため気管支喘息、除幕、II度以上の房室ブロック、レイノー症状には禁忌である。糖尿病治療中は低血糖症状が隠蔽されることもあるため注意が必要である。急に中止すると離脱症候群(狭心症・高血圧発作)を起こすことがある。
交感神経末端お血管平滑筋細胞側α1受容体を選択的に遮断する。交換神経末端側の抑制系α受容体は阻害しないので頻脈は少ない。前立腺肥大を伴う排尿障害症例には良い適応となる。初回投与時には起立性低血圧によるめまい、動悸、失神を起こすことがあるため少量より開始し、漸増する。長期的な副作用として、めまい、頭痛、眠気、脱力感、動悸などがある。
問題2の解説
- ジルチアゼム(ヘルベッサー)やベラパミル(ワソラン)は心筋収縮力抑制作用が強い。
- β遮断薬と併用すると徐脈や血圧低下が生じるため注意が必要。
- ACE阻害薬やARBは血清K濃度が上昇する。
- そのため利尿薬を選択する際には、K保持性作用のある利尿薬は避けるべきである。
- Ca拮抗薬(ベラパミル、ニフェジピン、ジルチアゼム)はジギタリスの血中濃度を上げるため、ジギタリス中毒を起こしやすい。
- 他にジゴキシン血中濃度を上昇させる薬剤には、スピロノラクトン、トリアムテレン、スクロスポリン、アミオダロンなどがある。
- Ca拮抗薬は肝臓代謝であるため、かん薬物代謝酵素CYP3A4との相互作用が臨床的に問題となる。H2ブロッカーのシメチジン、抗真菌薬はCYP3A4と非競争阻害と、Ca拮抗薬の血中濃度が上昇する。
- そうすると過度な血圧低下が起こりやすくなる。
- 非ステロイド系抗炎症薬は利尿薬、ACE阻害薬、β遮断薬の効果を減弱するとされている。
問題3の解説
利尿薬についての問題である。腎糸球体で濾過された原尿の99%は再吸収され、この再吸収を抑制するのが利尿薬である。上位の近位尿細管で再吸収を抑制するのが最も効果的であるが、以後のネフロンで代償機能が働くてため薬剤の使い分けが重要とされている。
遠位尿細管でNa+Cl -共輸送体を阻害し、NaとClの再吸収を抑制し、尿中のCaの再吸収を促進する。低濃度で利尿効果が高く作用時間が長い。高尿酸血症ではアロプリノールを併用し、痛風では禁忌となる。クレアチニン値が2mg/dL以上では効果がない。
ヘンレ上行脚でのNaとClの再吸収を抑制する。利尿作用が強いが降圧効果は弱く、持続が短い。腎血流量、糸球体濾過値は減少させないため腎機能が悪化しない。頻度が高い副作用として低Ca血症脱水がある。
遠位尿細管、接合集合管に作用し、Kを喪失せずにNs排泄を促進する。ステロイド性のスピロノラクトン、エプレレノンはアルドステロンに拮抗し、Na再吸収・K排泄を抑制し、さらに臓器保護効果がある。
サイアザイド系薬と併用することが多い。スピロノラクトンの副作用には勃起不全、女性化乳房、月経痛、高K血症であるが、選択的アルドステロン拮抗薬のエプレレノンは副作用が少ない。
心房性Na利尿ペプチドはアミノ酸28個からなるペプチドホルモンで、強力なNa利尿、平滑筋弛緩作用があり、レニン・アルドステロン分泌を抑制する。
最後に
心臓リハビリ指導士試験対策のブログにお越しいただき、ありがとうございました。皆さまの合格に向けて共に頑張りましょう。どうぞよろしくお願いいたします。