はじめに
運動負荷試験はさまざまな目的のために行われますが、医療現場で最も多く行われているのは胸痛を有す患者さんの診断、検査のためであることが多いです。例えば、労作性狭心症のように安静時には症状や心電図変化がないが、労作時にそのような所見の有無を検査する際に有用です。また、急性期での心臓リハビリ時にADLの拡大に際して、自覚症状や他覚症状の有無をチェックする際にも有用となっています。
かず
この記事では、運動負荷試験とはなんなのか。概要的なことをお話しします。
運動負荷試験とは何か
運動負荷試験を行う際の負荷のかけ方のことをプロトコールと呼ばれます。
前述した通り運動負荷試験は診断などに有用です。また、心臓リハビリ領域では心肺運動負荷試験を行い、正確な運動耐容能の評価ならびにそれをもとに運動処方を提示し、効果的な心臓リハビリの施行・効果判定に用いられます。
運動負荷試験プロトコールの種類
運動負荷試験は大別して3種類あります。
- 一段階負荷
- 多段階漸増負荷
- 直線的漸増負荷(ramp負荷)
一段階負荷
一段階負荷試験は基本的な負荷試験です。異なった運動強度に対する反応をみる際には、十分な休息をとった後、運動強度を変え複数回行う必要があります。
多段階漸増負荷
多段階漸増負荷試験は一段階負荷試験のその欠点を補うものであるが、同じ運動強度の増分に対しても運動強度の低いところと高いところで呼吸循環応答が異なり解析が難しいと言われている。
直線的漸増負荷(ramp負荷)
概要
・運動負荷試験は3種類に分けられる。
・一段階負荷は負荷試験としても用いられることよりは、実際のトレーニング、急性期においてADLの向上に際して行われることが多い。
・多段段階漸増負荷試験は虚血誘発目的で行われる。代表的なものにはBruce法がある。
・ramp負荷方法は、直線的に負荷を漸増される負荷法で、代表的な方法に心肺運動負荷試験(CPX)などが挙げられる。
運動負荷試験の中止基準
- 進行性に増強する胸痛
- 強い息切れ・強い疲労感・めまい
- チアノーゼ・顔面蒼白・冷汗・歩行障害
- 運動中に生じる徐脈、頻拍発作
- 水平型または下向型ST低下(2mm以上)
- Q波がない誘導でのST上昇(1mm以上)
- 心房細動・上室頻拍・心室細動・心室頻拍
運動負荷試験における絶対禁忌と相対禁忌
絶対的禁忌
- 急性心筋梗塞発症期(3日以内)
- 不安定狭心症
- 症状または血行動態障害を起こすコントロールされていない不整脈
- 症候性重症大動脈狭窄
- コントロールされていない症候性心不全
- 急性肺塞栓症または肺梗塞
- 運動機能に影響を及ぼすか、運動によって悪化する恐れがある急性の非心臓性疾患
- 急性心筋炎または心膜炎
相対的禁忌
- 左主幹冠動脈狭窄または同等の状態
- 中等度の狭窄性弁膜症、症状のない重症大動脈弁狭窄症
- 頻脈性不整脈または徐脈性不整脈
- 肥大型心筋症
- 高度房室ブロック
- 著明な動脈高血圧または肺高血圧