心リハ指導士試験対策:問題形式で勉強しよう!7

問題1 ramp負荷法でのVO2/WRについて誤っているものはどれか。

  • 1 年齢とともに低下する。
  • 2 末梢運動筋への酸素運送の増加程度を表す。
  • 3 仕事率増加に対するVO2の増加
  • 4 負荷3分から呼吸性代償開始点(RCP)までのVO2プロットを一次回帰して求める。
  • 5 10〜11ml/min/wが正常である。

問題2 ETCO2について誤っているものはどれか。

  • 1 運動中の心ポンプ機能を推測できる。
  • 2 心不全症例ではETCO2とPaCO2の差は大きい。
  • 3 安静時のETCO2はPaCO2より若干高い。
  • 4 ETCO2が低値であることは肺血流量が少ないことを意味している。
  • 5 NYHA IIIでは運動に対する増加が少なくなる。

問題3 VE/VCO2について誤っているものはどれか。

  • 1 RCPで最低値となる。
  • 2 AT以降換気効率は低下する。
  • 3 解剖学的死腔と肺胞死腔に依存する。
  • 4 二酸化炭素排泄効率を示す。
  • 5 肺疾患があればVEvsVCO2 slopeの異常よりVE/VCO2の異常が目立つ。

問題4 VE/VO2について誤っているものはどれか。2つ選べ。

  • 1 安静時VEに対するVO2の割合とほぼ一定となる。
  • 2 運動時の心拍出量増加が大きいほど低値をとる。
  • 3 ATで最低値となる。
  • 4 VEはVO2に依存して増加する。
  • 5 RCPで換気効率が最も良い。

問題5 Peak VO2について正しいものはどれか。2つ選べ。

  • 1 安静時の8〜12倍増加する。
  • 2 トレッドミルよりエルゴメーターの方が一般的に高値を示す。
  • 3 低値の原因に貧血がある。
  • 4 心移植の適応基準の指標である。
  • 5 >14ml/min/kgで生命予後が不良。

問題6 徒手筋力テストについて誤っているものはどれか。

  • 1 運動指導、生活指導に欠かせない指標である。
  • 2 握力は第2〜5指の中手指節関節屈曲位、近位指節関節ほぼ90度屈曲位で測定する。
  • 3 膝伸展期力で体重比は40%を下回ると平地歩行が困難となる。
  • 4 ハンドダイナモメーターを用いた測定方法は体重の影響を受けない。
  • 5 徒手筋力検査は定性的評価である。

問題7 栄養指標について誤っているものはどれか。

  • 1 GNRIはアルブミン値を利用した指標である。
  • 2 MHAは18項目の合計点で評価する。
  • 3 総リンパ球数は感染や侵襲の影響を受ける。
  • 4 COUNT scoreは5つの生体情報から評価する。
  • 5 総コレステロールは薬剤の影響を受ける。

問題8 日本の心臓リハビリの歴史について誤っているものはどれか。

  • 1 1960年代にデコンディションニングの概念が確立された。
  • 2 1980年代にAMIパス(4週間)の形が作られた。
  • 3 1995年に日本心臓リハビリテーション学会が創立された。
  • 4 2000年に心臓リハビリテーション指導士制度が創設された。
  • 5 2010年代に心臓リハビリ対象として慢性心不全、閉塞性動脈硬化症、大血管疾患が追加された。

問題9 日本の心臓リハビリテーションの現状として誤っているものはどれか。

  • 1 心大血管リハの施設、算定件数はいずれも他のリハに比べて少ない。
  • 2 海外のAMI後の外来心リハ参加率と比較し日本はかなり低い。
  • 3 2015年のAMI後の外来心リハ実施率は9%である。
  • 4 2016年の調査では入院した心不全患者が退院後に外来心リハに参加したのは7%である。
  • 5 心不全に対する外来リハは再入院目的ではクラスIIaとされている。

問題10 心臓リハビリテーション運動療法の身体効果で正しいものはどれか。2つ選べ。

  • 1 血小板凝集能低下
  • 2 左室リモデリング抑制
  • 3 嫌気性代謝閾値低下
  • 4 I型からII型へ筋繊維型の変換
  • 5 HDLコレステロール低下

問題1の解説

解答 

仕事率増加に対する酸素摂取量増加(VO2/WR)

VO2/WRは、仕事率増加に対するVO2の増加の程度を表している。これは仕事率の定量可能な自転車エルゴメータなどによるramp負荷試験のみで得られる指標であり、末梢の運動筋への酸素輸送の増加の程度を示している。具体的には1ワット余分な仕事を行うときに増加するVO2で表す。

この指標は、一定の仕事率に対するVO2と運動強度増加によるVO2の応答時間延長により決定される。VO2/WRは中等度の運動強度以上で値が変化するため、通常、ramp負荷開始30〜60秒後からAT付近までのVO2プロットを一時回帰して求める。さらにこの指標はramp slopeが急峻になる程低下する。

この指標が低値であれば、活動筋での酸素消費量の増加に見合うだけ酸素摂取量が増加しないことを意味し、その結果、酸素不足が増大して運動耐容時間は短くなる。運動中に血流再配分が起こり心拍出量の増加分が運動きんに優先的に分配されれば個体全体としての運動効率は改善し、VO2/WRは低下する。

正常値は年齢や性別による差は少ないが、女性より男性で高く、年齢とともに低下する。10/ワット分の1ramp負荷の場合、10〜11ml/min/ワットであり、運動中の心筋虚血や心不全の重症度が高くなると低下する。

問題2の解説

解答 

呼気終末二酸化炭素分圧(PETCO2)は呼気の最後の相に排出される肺胞の呼気中のCO2分圧である。呼気終末二酸化炭素分画(FETCO2)と表されることもある。肺胞の呼気は肺動脈のPaCO2とほぼ等しく、動脈血中のCO2濃度が反映されると言われている。しかしながら健常例でも安静時には若干の酸素血流不均衡がみられる。肺胞死腔のために安静時のPETCO2はPaCO2より若干低い。

運動を開始すると、1回換気量が増えて換気血流不均衡が減少し、血管も拡張するためPETCO2は徐々に上昇し、さらに運動が強くなると換気血流不均衡は減少しPaCO2を超える。心不全例では安静時よりPaCO2とPETCO2のあいだの差は大きく、運動によって差は縮まるものの、PETCO2はPaCO2と等しくなったりそれを超えたりすることはなくなる。PETCO2は運動中の換気血流不均衡は肺血流量(=心拍出量)に大きく依存するため、運動中の心ポンプ機能を推測できる。

問題3の解説

解答 

VE/VCO2は一定の二酸化炭素を排出する際に必要な分時換気量であり、換気効率(二酸化炭素排泄率)である。VEは有効肺胞換気量(VA)と肺胞換気量(VD)の和である。PETCO2と同様、解剖学的死腔ならびに肺胞死腔に依存するVE/VCOはRC pointで最低値をとり、(min.VE/VCO2:正常値28以下)それ以降は上昇する。解剖学的死腔が増加する肺疾患では、VE vs VCO2 slopeの異常より、 min.VE/VCO2の異常が目立つことがある。AT以降ではRCpointまでは換気効率が改善し、VE/VCO2は低下する。

問題4の解説

解答 4 5

VE/VO2は一定の酸素を摂取するのに必要な分時換気量である。換気効率(酸素摂取効率)である。運動時の心拍出量の増加が大きいほど低値をとる。運動開始後、肺胞死腔換気量の減少により次第に減少するが、VE/VCO2とは異なりATで最低値となる。AT以降はCO2産生増加により、VEの亢進がVO2の増加を上回るためである。換気効率はATで最も良い。

問題5の解説

解答 3 4

運動負荷試験の指標としては、最大負荷時の指標が汎用されており、最大酸素摂取量は個体の最大有酸素運動能力を示す指標として重要である。通常、健常者においては、最大運動時には心拍出量が約4〜5倍、動静脈酸素較差が約3倍まで増加するため、酸素摂取量は安静時の12〜15倍に達すると言われている。

PeakVO2は同一負荷症例においても運動負荷試験様式によって異なり、エルゴメータ負荷と比較してトレッドミル負荷の方が一般的に高値を示す。心疾患例のいずれにおいても身体活動能力の指標として、生命予後指標として重要である。<14mL/min/kg以下の生命予後が悪いことが示されており、<14mL/min/kg以下が心移植の一つの判断基準として使われている。

健常例においては15〜30歳で最大となり、その後は加齢に伴い減少し、年間0.9%ほど低下する。また、男性より女性では低値となりやすいが、この理由には骨格筋量が少ないことやヘモグロビン値が低い、血液量が少なく1回拍出量が少ないことなどが関係しているとされる。

問題6の解説

解答 

筋力・柔軟性・バランステスト

  • 筋力テスト(握力・膝伸展筋力)
    • 筋力テストの方法には、筋収縮、重力に抗した運動及び検者の徒手抵抗感を判断基準とする徒手筋力検査法があるが、段階的な定性的評価であるめ筋力トレーニングの目標値や効果の程度を具体的に提示することができない。このような欠点を補完するため、簡便な握力系やハンドヘルドダイナモメーターを用いて定量化することが大切である。
    • 握力
      • グリップ幅が調整でき、結果がデジタル表示されるため握力計が最も利用されている。握り幅は第2〜5指の中手指節関節屈曲位、近位指節関節がほぼ屈曲90度となるように調整する。
    • 等尺性膝伸展筋力
      • 下肢筋力の指標として、等尺性収縮による膝伸展筋力が広く採用されている。このハンドヘルドダイナモメータを用いた測定法では、体重の影響を受けるため、本測定器で出力された筋力値を体重で除した値を解析値とする。膝伸展筋力体重比が40%を下回ると、平地歩行が困難になるなど、移動動作の自立度の予測としても応用できる。
    • 柔軟性テスト
      • 柔軟性の評価として長座体前屈テストが採用されている。また、シニア用の体力テストとして採用されているSit and reachは長座位の姿勢を取る必要がないため限られた環境でも簡便に活用できるテスト法である。いずれの方法も他動的に反動をつけてはならない。
    • バランステスト
      • 姿勢保持能力テスト(静的バランステスト)
        • Romberg肢位テストとMann肢位テストおよび片脚立位テストはいずれも定めた条件(開眼・閉眼・支持基底面面積)を変化させて、その姿勢の保持時間と条件の違いによる偏kなを評価するものである。片脚立位テストは神経学的な要素の他に筋力の要素も大きく影響することから、移動動作の自立度を予測する指標にもなりうる。片脚立位保持時間が5秒未満になると歩行において何らかの介助が必要となることが報告されている。
      • Functional reach テスト
        • 持基底面を変化させずに腕をできるだけ前方に戻した時の移動距離を評価する。15cm未満は転倒の危険性が高いことが報告されている。
      • Time up and go テスト
        • 腰掛け椅子から立ち上がり、3m歩行し方向転換して椅子に戻ってくるまでの時間を測定する、30秒以上では階段や外出が困難となる。

問題7の解説

解答 

栄養指標
  • 近年、二次性サルコペニアおよびカヘキシーを念頭においた栄養不良の評価方法や介入方法が検討され始めている。しかしながら、現在は十分なエビデンスがない。
  • COUNT scoreは、蛋白代謝(血清アルブミン値)、免疫能(総リンパ球数)、脂質代謝(総コレステロール値)の3つの整体情報から栄養状態を評価する方法。
  • GNRIもアルブミン値を利用した指標であり、手術後や透析患者などの生命予後予測指標として使用されている。
  • しかしながら、血清アルブミン濃度は循環血液量による希釈と濃縮の影響を受け、総リンパ球数は感染や侵襲の影響を受ける。また、総コレステロール値は脂質異常症治療薬などの薬剤の影響を受けるため、多面的に評価することが重要となる。

問題8の解説

解答 

1950年〜1960年代:長期臥床から早期離床へ

欧米では、1950年以前は急性心筋梗塞発症から6〜8週間はベッド上安静を守るということが厳格に実施されてきた結果、長期臥床の合併症のためにAMI患者が職場復帰や社会復帰することが稀となっていた。1950年代になると早期離床の試みが始めり、1960年代には、「デコンディショニング」の概念が確率され、早期離床・早期退院・早期社会復帰の流れが始まった。

1960年〜1970年代:急性心筋梗塞後の早期社会復帰を目指す入院型段階的プログラム

1970年代になると、AMI患者が早期に離床しても心事故や死亡が増加しないことが明らかにされ、退院までの身体活動の各段階が体系化され、現在の第I相(入院型)心リハプログラムに相当するものが形作られた。その結果、1960年代後半に3週間であった合併症のないAMI患者の入院期間は1970年後半には2週間にまで短縮した。ただしこの時期の心リハは、身体的デコンディショニングを是正し、社会復帰を早期かつ安全に実現するためのもの。

1970年〜1980年代:入院型から外来型心リハへ

米国では、1980年代になると、AMI患者の入院期間は14日間から10日間に短縮した。入院期間の短縮により入院中に十分な運動指導や患者教育を実施することが困難となり、退院後の外来通院型心リハが広まった。

1980年〜1990年代:長期予後とQOLの改善を目指す包括的外来心リハへ

1990年代になると、運動療法だけでなく患者教育やカウンセリングを含む「包括的心リハ」が長期予後改善効果を有することが認識されるようになり、米国ではガイドラインが発行された。

日本における心リハの歴史

1982年にAMI4週間リハビリプログラムが発表され、1996年に3週間プログラムが発表されたが、欧米に比べると20年以上遅れいている状況であった。2002年になって「心疾患における運動療法に関するガイドライン」が発表され、2004年にそれまで集中治療室を有する施設でしか実施できなかった厳格な心リハ施設基準が緩和され、さらに2006年に心リハ対象疾患として急性心筋梗塞・狭心症・開心術後に加えて慢性心不全・閉塞性動脈硬化症・大血管疾患が追加された。その後、「心大血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」のタイトルで2007年版、2012年版、2021年版が最新の改訂版として発表された。

日本心臓リハビリテーション学会

特定非営利活動法人・日本心臓リハビリテーション学会は1995年に創立された。2000年「心リハ指導士制度」、2007年「心リハ研修制度」、2014年「心筋梗塞急性期・回復期リハ標準プログラムの公表」、2014年「心リハ症例レジストリー制度開始」、2015年「心リハ認定医・上級指導士制度の創設」、2015年「心リハ学会地方支部制度創設」、2017年「心不全リハ標準プログラム公表」。1995年学会創立時の会員数は248人、2000年の初年度心リハ指導士試験合格者は101人だが、2020年時点で会員数は15000人を超え、心リハ指導士数は5800人を超えている。

問題9の解説

解答 

日本における心臓リハビリの実施状況

AMIの診療と心リハの実施状況については、2004年・2009年・2015年に全国実態調査が行われている。2004年ではPCI実施率は94%に対して、外来心リハ実施率は9%と著しく低値でPCI普及に比べて心リハの普及がかなり遅れいている状況であった。3回にわたる実態調査にてAMI入院数はほぼ横ばいであるが入院日数は短縮していることがわかった。また、PCI実施率は2015年において98%でほぼ全ての施設で実施され実施件数も増加傾向にある。一方、心リハ実施率は入院・外来ともに上昇し特に外来心リハ実施率は2015年には48%と大幅な上昇が見られた。しかしながら、AMI診療ガイドラインでクラスIとして強く推奨されている外来心リハの実施率が50%に到達してないという実態であった。

問題10の解説

解答 1 2

心臓リハビリ運動療法の身体効果
  • 最高酸素摂取量増加
  • 嫌気性代謝閾値増加
  • 心筋虚血閾値の増加による狭心症発作の軽減
  • 同一労作時の心不全症状の軽減
  • 最大同一負荷強度での換気量減少
  • 最大下同一負荷強度での心拍数減少
  • 最大下同一負荷強度での心仕事量(二重積)の減少
  • 左室リモデリングの抑制
  • 左室収縮機能を増悪せず
  • 左室拡張機能改善
  • 心筋代謝改善
  • 冠動脈病変の進展抑制
  • 心筋灌流改善
  • 冠動脈血管内皮依存性、非依存性拡張反応の改善
  • 最大動静脈酸素較差の増大
  • 安静時、運動時の末梢血管抵抗の減少
  • 末梢動静脈内皮機能の改善
  • CRP、炎症性サイトカインの減少
  • ミトコンドリアの増加
  • 骨格筋酸化酵素活性の増大
  • 骨格筋毛細血管密度の増加
  • II型からI型への筋繊維型の変換
  • 収縮期血圧の低下
  • HDLコレステロール増加、中性脂肪減少
  • 喫煙率減少
  • 交感神経緊張の低下
  • 副交感神経緊張の亢進
  • 圧受容体反応感受性の改善
  • 血小板凝集機能低下
  • 血液凝固能低下
  • 冠動脈事故発生率の減少
  • 心不全増悪による入院の減少
  • 生命予後の改善
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