理学療法の目標設定が「ただの作業」になっていませんか?科学的な思考を取り戻すための視点

基礎知識

はじめに

日々の臨床で、当たり前のように書いている「目標設定」。評価をして、計画書を作成し、カンファレンスで共有する。理学療法士(PT)であれば、毎日欠かさず行っている業務です。

しかし、ふと立ち止まったときに、こんなモヤモヤを感じることはないでしょうか。

「とりあえず歩行自立と書いたが、介入はなんとなく筋トレをしている」

「書類上の目標と、実際のリハビリ内容が噛み合っていない」

「期限が来たから、それっぽい文章で埋めているだけ」

もし、目標設定が「臨床を導く設計図」ではなく「提出するための書類」になっているとしたら、それは**「思考」ではなく「作業」**に陥っているサインかもしれません。

今回は、目標設定が形骸化してしまう原因を紐解き、私たちが目指すべき「科学的に正しい目標設定」の本質について考えます。

なぜ目標設定が「形だけ」になってしまうのか?

目標設定がうまくいかないとき、多くのセラピストが無意識にハマってしまう3つの典型的なパターンがあります。

1. 評価結果を並べただけ

「筋力低下があるから、筋力向上を目指す」。これは評価の事実に過ぎません。大切なのは「なぜ、今その筋力が必要なのか」という未来への仮説です。

2. 制度や期間に引っ張られている

「退院が3週間後だから」という理由だけで目標を立てると、患者さんの回復過程が後回しになります。期間は「条件」であって「理由」ではありません。

3. 患者さんの希望をそのまま書く

「歩けるようになりたい」という言葉をそのまま目標にしていませんか?プロの役割は、その希望を「どんな環境で、いつまでに、何をもって達成とするか」という具体的な設計図に分解することです。

「科学的に正しい目標設定」の本当の意味

「科学的」と聞くと、論文の引用や難しい専門用語をイメージするかもしれません。しかし、臨床における科学性とは、**「なぜその目標なのかを自分の言葉で説明できること」**です。

科学的に正しい目標設定には、以下の3つの核心があります。

1. 「なぜ?」に答えられる: 評価結果・病態・回復段階に基づいた根拠があるか。

2. 整合性がある: 病態だけでなく、患者さんの生活環境や時期とズレがないか。

3. 設計図になっている: その目標を見ただけで「次に何を評価し、どう介入すべきか」が自然と導き出されるか。

目標は「臨床推論の出口」であり「入口」である

目標設定は、評価の「終わり」ではありません。

出口として: 膨大な評価データ(材料)を整理し、「ここを目指す」という一文に収束させる行為。

入口として: 立てた目標を達成するために、「次はここを深く評価しよう」「この介入を優先しよう」という次の一手を決める起点。

目標が明確になれば、自ずと「今やらなくていいこと」も決まります。限られたリハビリ時間の中で、介入の精度を最大化させるための羅針盤、それが本来の目標設定の姿です。

まずは「立ち止まる」ことから始めよう

目標設定がうまくいかないのは、あなたの能力不足ではなく、忙しさや制度といった「考えなくても済んでしまう構造」に原因があることがほとんどです。

だからこそ、今日から完璧を目指す必要はありません。

次に計画書を書くとき、たった一度だけ自分に問いかけてみてください。

「なぜ、私はこの目標を書いたのだろう?」

その違和感や言葉の詰まりこそが、思考が動き出した証拠です。

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