はじめに
フィットネスやスポーツ愛好家にとってウォーミングアップとクールダウンは基本的な要素です。また、心臓リハビリにおいても運動を安全に実施するためには必要不可欠な要素です。
・この記事では運動療法におけるウォーミングアップとクールダウンの効果について解説します。
・その効果は、酸素運搬系を構成する肺・心臓・血管・筋に分けて考えると理解しやすくなります。
ウォーミングアップにおける効果について
肺への効果
- 静脈灌流量の増加
- 肺循環量の増加
- 安静時に生じている換気血流不均衡の改善
- 生理学的死腔の減少・過度な換気の抑制
心臓への効果
- 心筋虚血の予防
- 左室収縮能低下の予防
ウォーミングアップなしの急激な運動では、健常人でも60〜70%の割合で心筋虚血と左室収縮能の低下が生じたと報告から、心筋血液量と左室収縮能の増加には一定の適応時間が必要であると示されたようです。
末梢骨格筋の血管への効果
- 運動筋の血管拡張
- 血管抵抗の減少・後負荷の減少
運動筋の血管拡張を促すことで血管抵抗の減少を図り、その結果心臓への後負荷減少につながります。特に動脈硬化症や糖尿病を罹患している患者さんでは血管拡張能が障害されています。そのため、重症心不全症例の場合、血管拡張に時間を要するため時間を長く設定する必要があります。
運動骨格筋への効果
- 筋・関節結合組織の伸張性を高める
- 関節可動域の拡大
- 骨格筋障害の予防
- エネルギー代謝の亢進
クールダウンの効果
- 急激な静脈灌流量の減少の予防
- 心拍出量・冠血流量の低下の予防
- 重篤な不整脈出現の予防
- めまい等の自覚症状の予防
クールダウンの効果は、運動直後の急激な静脈灌流量の減少を防ぐことで、心拍出量、冠血流量の低下を防ぎ、運動後の低血圧症状やめまい、心筋虚血により誘発される重篤な不整脈の出現を予防することです。運動後には運動中に活性化した交感神経の緊張を緩徐に落としていくことが求められます。
クールダウン中のモニタリング指標としては心拍数の監視が必須であり、目安としては運動終了後2分間の心拍数低下を緩徐にしていくことが重要となります。特に心不全患者では十分な時間が必要となるためウォーミングアップ含めクールダウンの重要性を軽視すべきではありません。
まとめ
運動療法におけるウォーミングアップとクールダウンは、効果的な運動プログラム重要であり、それぞれ心臓リハビリにおいても運動を安全に実施するためには必要不可欠な要素です。