「心不全って何ですか?」
こう質問されて説明することはできますか?
この記事では、
・心不全はそもそもどんな状態なのか。
・心不全はどのように進行していくのか。
心不全の概要的な部分をお話していきます。
現在日本では超高齢社会を迎えており、心不全患者が増加傾向にあります。心不全自体も多様な症状、臨床症状を示すため、様々な立場の人が共同して指導にあたるにはどんな人を心不全患者として接し、どのような症状にあって何を必要としているのか、共通認識が必要となります。
心不全とは
心不全とは何でしょう。
「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」において、心不全とは「なんらかの心機能障害、すなわち、器質的あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果、呼吸困難、倦怠感や浮腫が出現し、それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」と定義されています。
一般向けな定義としては、「心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなる病気」とされる。※本来は病気ではないがわかりやすくため表現として病気とされています。
定義に表されている心不全とは「①なんらかの心機能障害があり、それを補うべくして働く②前負荷、後負荷、心収縮力などの心ポンプ機能の代償機転が破綻して循環不全が生じ、症状や兆候が出現し、③運動耐容能が低下をきたし、進行性のものであり死亡につながる症候群である。」と言うことです。
診断には循環不全によって生じる症状や兆候を捉えることが重要です。しかしながら、労作時呼吸困難感は心不全でよく認められる症状の一つですが、肺疾患でも同じような症状や兆候を認める場合もあります。またさらに、そのような症状は主観的で個人差も生じやすいです。
心臓以外の要因でも心不全と同じような症状や兆候を認める場合も少なくなく、心不全を診断するには、症状や兆候に加えて何らかの方法で心臓機能障害を捉えることが重要となってきます。
心不全の診療には大切な要素があります。
①原因となっている心疾患の評価
②どこがどれぐらい破綻しているのか、重症度を含めた評価
③代償破綻を引き起こした誘因の評価
特に代償破綻を引き起こした誘因については、塩分や水分の過多、過労などの患者に由来する要因と、肺炎や不整脈などの医学的な要因があります。代償破綻につながるこれらの誘因を理解して予防することは非常に大切になります。
心不全の分類
心不全は単一の病名ではなく多様性を示す症候群です。そのため、心機能障害や血行動態、病態、重症度などどこに着目するかによって分類することができます。
例えば、
左室駆出率(LVEF)が高度に低下しているForrester分類IV型の虚血性心疾患による慢性のNYHA心機能分類III度ぐらいの心不全の患者さんです。
と申し送りを受けると概ねどれぐらいの状態でどんな治療・療養指導が必要かがわかります。
LVEFによる分類
分類のなかで左室の収縮機能の指標のひとつであるLVEFによる分類があります。
HErEFというのは、LVEFが低下した心不全とされます。心不全治療等で用いられるβ遮断薬などの薬剤によって生命予後の改善効果が示されている対象は主にこのHErEFの心不全です。一方、HEpEFというのは、LVEFが保たれた心不全とされます。HFpEFで有効性が示されている薬物療法の多くの有効性はHEpEFでは示されておらず、診療ガイドラインにおける推奨される治療も異なります。
Forrester分類
分類
病態により、急性心不全、慢性心不全の急性増悪、慢性心不全、または原因部位により左心不全、右心不全、両心不全に分類されます。また、その原因の多くを占める左心室機能異常は収縮機能異常を拡張機能異常に分類され、最近は後者の重要性が強調されるようにもなってきました。病態のなかで後方障害(左室の手前)による肺うっ血や静脈圧上昇に起因する兆候が明らかな場合はうっ血性心不全と呼ばれます。