はじめに
大動脈は、左心室から出て全身の動脈に血液を送り出している血管です。
大動脈壁が何らかの原因で、血圧に耐えれなくなり局所的に通常の1.5倍ほど膨張したものを大動脈瘤と呼びます。
この記事では、
大動脈手術後のリハについてのお話をしていきます。
- 大動脈壁は3層(内膜・中膜・外膜)。
- 全てが拡張したものを真性動脈瘤。
- 内膜に亀裂が入り中膜が2層に解離したものを大動脈解離。
- 血管壁が破れて内膜中膜から漏れ出た血液が血管周囲に血栓を作り瘤を形成するのは仮性大動脈瘤。
治療について
仮性大動脈瘤は破裂の危険性が高い。
そのためサイズによらず手術適応となります。(人工血管置換術またはステントグラフト)
大血管疾患術後のリハビリ中止基準
炎症
- 発熱37.5℃以上
- 炎症所見の増悪(CRPの増悪期)
循環動態
- 新規に発生した重篤な不整脈
- 頻脈性心房細動の場合は医師と相談
- 安静時収縮期血圧130mmHg以上
- 離床時に収縮期血圧30mmHg以上低下
- 新規の虚血性心電図変化
貧血
- Hb8.0g/dL以下への急性増悪
- 適宜主治医へ相談
呼吸状態
- SpO2の低下(酸素投与中でも92%以下、運動誘発性にSpO2が4%以上低下)
- 呼吸数40回以上
意識状態
- 意識・鎮静レベルがRASS≦-3
- 鎮静薬増量、新規投与が必要な場合
術後のリハビリの流れ
術後、上記の中止基準に基づき全身状態が許すなら手術翌日から離床が開始されます。
僕が勤務している病院では翌日より起立練習が開始し、負荷試験クリアすれば術後翌日より歩行負荷試験が開始されます。
もちろん、疾患や病態により異なります。
大動脈ステントグラフト内挿術後のリハビリテーション
近年ではステントグラフト内挿術が保険収載され、急速に普及している傾向にあります。
胸部大動脈瘤に対するステントグラフト治療
→TEVAR
腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療
→EVAR
と言われます。
当院ではステントグラフト内挿術後のプロトコルを導入しており、術翌日から歩行負荷試験が開始されます。
状態に応じて運動負荷を漸増し、ADL改善を図ります。また、定期的なCT(造影検査)にてエンドリーク※1がないかを確認し、経過に問題なければ退院となることが多いです。
※1ステントグラフト留置後に大動脈瘤内へ血流の漏れがある状態のこと。
急性大動脈解離のリハビリテーション
緊急性の要する大血管疾患です。
Stanford分類では上行大動脈解離があるA型とないB型に分けられます。
A型では早期に手術治療が望ましいと言われています。基本的にはどちらの分類も降圧を目的とした内科的治療は必要不可欠になります。
手術治療として人工血管置換術を施行された場合、当院では術後翌日から開心術後のプロトコルを導入し負荷試験が開始されます。
最後に
大動脈瘤術後のリハビリテーションに関するこの記事が少しでも日々の臨床の一助、勉強のためになりますと幸いです。