もう迷わない!ティルトテーブルの適応と使い方〜理学療法士のための活用ガイド〜

理学療法士

はじめに

かず
かず

理学療法士にとって、ティルトテーブル(起立台)は、患者さんのリハビリテーションにおいて非常に重要なツールの一つです。

皆さんは使用したことがありますか?

特に、長期にわたる臥床が必要な患者さんや、筋力低下や運動麻痺などの状態にある方々にとって、ティルトテーブルを使用することで立つことの練習や重力に耐える訓練が可能になります。このテーブルは、傾斜角度を自由に調整できる特徴があり、寝た状態から立位へと段階的に移行する練習ができます。

これまでにティルトテーブルを使ったリハビリを行った経験がある理学療法士は多いかと思いますが、使用したことがなくても名前を聞いたことがある方は多いでしょう。僕自身は急性期の病院に勤務している際、学生時代の実習先においても、どの病院でも必ずと言っていいほどティルトテーブルが導入されていました。急性期から慢性期に至るまで、幅広い患者層に対して使用されている機器です。

本記事では、ティルトテーブルの使用方法を深堀りして、姿勢制御の向上から感覚統合の促進に至るまで、どのようにしてリハビリテーションをサポートするかについて詳しく解説していきます。

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ざっくりと以下の内容について記載します。

  • ティルトテーブルの基本的な使い方
  • 使用するべき患者像と適応条件
  • 臨床現場での具体的なケース

ティルトテーブルをどのような場面で活用するか

理学療法士の役割は、患者さんのリハビリテーションを支援し、機能的な回復を促進することです。この過程でティルトテーブルは、非常に有効なツールの一つとして活用されます。

以下では、ティルトテーブルがどのように患者さんのリハビリを支援するのか、その具体的な方法を詳細に説明します。

姿勢制御の向上

ティルトテーブルを使用することにより、患者さんの姿勢制御能力を向上させることができます。特に、脳卒中後や脊髄損傷患者など、姿勢の安定性が乏しい患者さんにとっては非常に有効なリハビリツールです。寝た状態から立位を取ることで、重力に抗う力を養い、身体の各部位がどう連携して姿勢を保持するかを学ばせることができます。

また、ティルトテーブルの傾斜角度を微調整することにより、患者さんに合わせた最適な角度で立位訓練を行うことができます。これにより、徐々に姿勢の安定性を高めることが可能となります。特に、急性期の患者さんや重度の麻痺がある患者さんにとって、この段階的なアプローチが重要です。

重力に対する耐性の向上

患者さんが立つことに慣れていない場合や、立位に持続的に保持することが難しい場合、ティルトテーブルを使うことで、重力に対する耐性を高める訓練が可能です。特に、起立性低血圧がある患者さんや、筋力が低下している患者さんにとって、テーブルの傾斜角度を少しずつ増やすことで、体が重力に適応できるよう訓練します。

この方法は、特に寝たきりの患者さんに有効で、立位に必要な筋肉を強化することができると同時に、立つことに対する恐怖心や不安感を軽減する効果もあります。急性期では、患者さんが起き上がる際に感じる不安定さや動悸を抑えるため、慎重に傾斜角度を調整しながら進めていくことが求められます。

関節可動域の向上

ティルトテーブルは、関節可動域の向上を目的として使用することもできます。寝た状態での関節可動域訓練は、特に関節の拘縮や筋肉の短縮を防ぐために重要です。テーブルの傾斜角度を調整することで、股関節、膝関節、足関節の可動域を拡大することが可能です。

例えば、下肢を少しずつ伸ばしながら傾斜を増すことで、筋肉や関節にかかる負荷を調整しながらストレッチを行うことができます。このようなストレッチは、関節可動域を改善し、筋肉の柔軟性を向上させるために非常に有効です。

覚醒度の向上

ティルトテーブルは、患者さんの覚醒度を改善する手段としても活用できます。特に、意識状態が低下している患者さんに対しては、起立台を使用することで、立位に伴う荷重感覚や前庭感覚が脳に伝わり、神経系の覚醒を促す効果が期待できます。こうした感覚入力が、患者さんの意識を高め、意識レベルの回復をサポートします。

起立によって体全体に重力を感じさせることは、感覚神経を活性化させ、脳への情報をより多く伝えるため、患者さんの神経系を刺激する重要な役割を果たします。

感覚統合の促進

ティルトテーブルを使うことで、感覚統合を促進することができます。テーブルの傾斜角度を変更することで、患者さんは異なる角度で重力や体性感覚を感じ取ります。これにより、体のバランスをとるために必要な感覚が統合され、患者さんの身体意識を高めることができます。

また、前庭感覚や触覚、筋肉の緊張感など、複数の感覚が統合されることで、患者さんの運動機能が向上し、日常生活動作の自立が促進されます。

適応となる具体例なケース

脳卒中

脳卒中を発症した患者さんは、急性期において意識状態が不安定であり、長時間臥床していることが多いです。この時期には、閉眼が増えたり、重力に対する耐性が低下したりするため、起立台を使用して座位や立位の練習をすることが重要です。特に脳卒中の急性期には、全身管理が重要であり、患者さんの体調に合わせて慎重にリハビリを行う必要があります。

テーブルを使用して、まずは30°の角度から始め、徐々に傾斜をつけていくことで、身体を少しずつ立位に慣れさせます。この訓練により、患者さんは重力に抗って姿勢を維持する能力を養い、意識改善にもつなげることができます。

脊髄損傷

脊髄損傷患者さんにおいて、起立台を使った立位訓練は、下肢の運動麻痺がある場合に非常に有効です。特に、高位頸髄損傷では自律神経の過反射や異常反応を引き起こすことがあるため、傾斜角度の調整が非常に重要です。また、血圧が低下することがあるため、段階的に角度を変えながら行うことが推奨されます。

脊髄損傷の患者さんには、体重をかけることが非常に重要であり、荷重感覚を提供することで神経系を刺激し、リハビリの効果を高めます。

まとめ

ティルトテーブルは、患者さんの姿勢制御、重力に対する耐性、関節可動域の向上、活動度の促進、感覚統合など、さまざまなリハビリテーションの目的を達成するための非常に効果的なツールです。理学療法士は、患者さんの状態やリハビリの目標に応じて、ティルトテーブルを慎重に活用し、安全かつ効果的なリハビリプランを提供します。

記事を読んでいただき、ありがとうございました。ティルトテーブルを使ったリハビリの有用性を改めて理解できるきっかけとなれば幸いです。

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