リハビリの声かけが苦手なあなたへ。明日から使える具体的なコツとフレーズ集

検査・評価

はじめに

「リハビリ中の声かけ、なんだかうまくいかないな…」
「患者さんとの会話が続かず、沈黙が気まずい…」
「『頑張って!』しか言えなくて、自分の引き出しのなさに落ち込む…」

実習中の学生さんや経験の浅い療法士さんなら、一度はこんな風に悩んだことがあるのではないでしょうか。

何を隠そう、私自身も新人時代は声かけが本当に苦手でした。しかし、いくつかのコツを意識するだけで、患者さんとのコミュニケーションは劇的に変わります。

この記事では、リハビリ中の声かけに悩むあなたが、明日から自信を持って患者さんと向き合えるようになるための具体的な5つのコツとフレーズを、私の経験を交えながらご紹介します。

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なぜリハビリの声かけは難しい?よくある失敗パターン

まず、あなたがつまずいているポイントはどこか、一緒に確認してみましょう。私の経験上ですが多くの人が、以下のパターンで悩んでいます。

  • ①沈黙が怖い「無言型」:緊張で頭が真っ白。何を話せばいいか分からず、気まずい空気が流れてしまう。
  • ②ワンパターンな「応援団型」:「頑張って!」「いいですよ!」ばかりで、中身のある声かけができない。
  • ③一方的な「マシンガントーク型」:沈黙を埋めようと必死に話すが、患者さんの反応が薄い。もしかしたら不快にさせているかも…と不安になる。
  • ④専門的すぎる「教科書型」:「大腿四頭筋を収縮させて!」など、専門用語を使いすぎて指示がうまく伝わらない。

一つでも当てはまったなら、大丈夫。この記事を読み終える頃には、具体的な解決策が手に入っていますよ。

もう悩まない!リハビリ声かけの具体的な5つのコツ

さあ、ここからが本題です。難しい理論は抜きにして、明日からすぐに実践できる5つのコツをご紹介します。

コツ1:「頑張って」を卒業!具体的な言葉に変換するフレーズ集

「頑張って」は万能なようで、実は患者さんによっては「もう十分頑張ってるよ…」とプレッシャーに感じさせてしまうことも。この言葉を、もっと具体的で効果的なフレーズに変換してみましょう。

【「頑張って足を上げましょう!」の変換例】

  • 目標を具体的に提示する
    • 「あと5cmだけ、天井に近づけてみましょうか!」
    • 「この線まで、かかとを上げてみましょう!」
  • 動きを実況中継する
    • 「お、いいですね!今、しっかりお尻が浮きましたよ!」
    • 「ゆっくり、ゆっくり下ろせていますね。素晴らしいコントロールです。」
  • 身体の感覚に問いかける
    • 「太ももの前に、グッと力が入る感じはありますか?」
    • 「この動き、どのあたりが一番キツく感じますか?」
  • 回数や時間で区切る
    • 「よし、あと3回だけ一緒にやりましょう!せーの、1、2、3!」
    • 「あと10秒キープです!私が数えますね!」

このように言い換えるだけで、患者さんは何をすべきかが明確になり、自分の体の変化にも気づきやすくなります。

コツ2:準備が8割!情報収集と「目的意識」で会話の質を上げる

行き当たりばったりの声かけは失敗のもと。リハビリ前の「準備」が声かけの質を決めると言っても過言ではありません。

  • 情報収集:カルテから病歴だけでなく、仕事、趣味、家族構成、出身地などをチェックしましょう。「〇〇がお好きなんですね」という一言から、会話が大きく広がることがあります。看護師さんや先輩に「〇〇さん、最近どんな様子ですか?」と聞くのも非常に有効です。
  • 目的意識:その声かけは何のためですか?
    • 指示・誘導:「膝をもう少し曲げましょう」
    • 励まし・意欲向上:「前回よりスムーズに動けていますね!」
    • 共感・関係構築:「この動きは少し辛いですよね」
    • 注意転換(痛みから逸らす):「そういえば、昨日の野球見ました?」

この「目的」を頭の中で意識するだけで、言葉の選び方が自然と変わってきます。

コツ3:観察の達人になる!言葉以外のサインを見逃さない

患者さんは、言葉以外にも多くのサインを発しています。表情、呼吸の速さ、顔色、声のトーン、汗のかき方などを注意深く観察しましょう。

  • 辛そうな表情が見えたら…
    • (NG例)「大丈夫ですか?頑張って!」
    • (OK例)「少し表情が曇りましたね。痛みがありますか?」「呼吸が少し速いので、一度休憩して、ふーっと息を吐きましょうか。」

「私のことをちゃんと見てくれている」という感覚は、何よりの信頼につながります。観察した事実を客観的に伝えるのがポイントです。

コツ4:質問力を磨く!「オープン」と「クローズド」を使い分ける技術

会話を弾ませるには、質問の使い分けが効果的です。

  • クローズドクエスチョン(はい/いいえで答えられる)
    • 例:「痛いですか?」「疲れていませんか?」
    • 目的:患者さんの負担を少なくし、状態を素早く確認する。
  • オープンクエスチョン(自由に答えられる)
    • 例:「リハビリが終わったら、まず何をしたいですか?」「お孫さんとは、いつもどんなお話をされるんですか?」
    • 目的:会話を広げ、患者さんの価値観や目標を引き出す。

リハビリ中はクローズドで状態を確認し、休憩中やリハビリの前後にはオープンで関係を深める、という風に使い分けてみてください。

コツ5:「沈黙」も武器になる!意図的な静寂の効果

「何か話さなきゃ…」と焦る必要は全くありません。沈黙が有効な場面もあります。

  • 患者さんが運動にグッと集中している時
  • 痛みや辛さと向き合っている時
  • リハビリ後に「ふぅ…」と安堵のため息をついている時

こんな時は、あえて何も言わずにそっと隣にいることで、「あなたのペースを尊重していますよ」というメッセージが伝わります。気まずい沈黙ではなく、**「意図的な沈黙」**は、深い信頼関係を築くための強力な武器になるのです。

まとめ:失敗は、最高の学びの機会

リハビリ中の声かけは、単なるおしゃべりではありません。患者さんの心と身体の状態を深く理解し、意欲を引き出し、目標達成へと導くための高度な治療技術の一つです。

うまくいかなくて落ち込むのは、あなたが真剣に患者さんと向き合おうとしている証拠。今日の失敗は、明日の成功のための最高の教材です。

ぜひ、今回ご紹介した5つのコツを一つでもいいので、明日のリハビリから試してみてください。そして、リハビリ後に「今日の声かけ、どうだったかな?」と数分でいいので振り返る習慣をつけてみましょう。

その悩みと向き合う真摯な姿勢こそが、あなたを「患者さんから信頼される理学療法士」へと成長させてくれます。応援しています!

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