なぜこの人の発信は信じられるのか?感想で終わらない“説得力”を宿す根拠ある発信の作り方

こんな経験はありませんか?

「理学療法士として、SNSやブログで正しい知識を発信したい」
「自分の臨床経験を、もっと多くの人に役立てたい」

そんな想いを持って情報発信を始めたものの、「本当にこの内容でいいのだろうか?」「ただの感想になっていないか?」と不安になった経験はありませんか?

この記事は、まさにそんな悩みを抱えるあなたのために書きました。

情報が溢れる現代において、理学療法士の発信に求められるのは、単なる「正しさ」だけではありません。読者の心を動かし、「この人から学びたい」と思わせる**「説得力」と「信頼性」**です。

この記事を読めば、あなたの発信が「個人の感想」から「信頼される専門家の主張」へと生まれ変わる具体的な方法がわかります。

1. はじめに:「その発信、ただの感想になっていませんか?」― 批判コメントが教えてくれたこと

以前、私がSNSでとある運動療法の効果について投稿したときのことです。ある方からこんなコメントが届きました。

「根本的な質問にも答えられない人が、偉そうに発信するな」

正直、胸にグサリと刺さりました。自分なりに論文を読み込み、臨床経験も踏まえて書いたつもりの投稿でした。しかし、その方には私の意図はまったく伝わらず、ただの“偉そうな感想”にしか見えなかったのです。

この経験から、私は重要な事実に気づかされました。

SNSやブログで発信する理学療法士が増える今、読者は**「完璧に正しい情報」を探しているわけではないのかもしれない。むしろ、「この人なら信頼できる」と感じる人**を探しているのだ、と。

どれだけエビデンスレベルの高い情報を並べても、発信者に信頼がなければ、その言葉は誰にも届かないのです。

2. 「正しさ」だけでは届かない。発信が“専門家の自己満足”に陥るワナ

「エビデンス(科学的根拠)に基づいて発信しています」
これは、私たち専門家にとって大前提であり、非常に大切な姿勢です。

しかし、それが読者に伝わらなければ何の意味もありません。以下のような発信は、”専門家の自己満足”に陥っている可能性があります。

  • 専門用語を多用し、読者を置き去りにしている
  • 論文のURLをただ貼り付けて「根拠です」と言っている
  • 「なぜそう言えるのか」という背景の説明が不足している

読者が本当に知りたいのは、難解なデータそのものではなく、**「その情報が、なぜ自分にとって重要なのか」**という納得感です。

この「納得感」を生み出すカギは、**「なぜそう思うのか」「どんな経験からそう言えるのか」**という、あなたの思考プロセスやストーリーを丁寧に共有することにあります。

3. 【実践編】感想を「説得力のある主張」に変える3つの文章ステップ

では、具体的にどうすれば「感想」から「説得力のある主張」へと文章を昇華させられるのでしょうか。ここでは、誰でも実践できる3つのステップをご紹介します。

ステップ①:主張(結論)を明確にする

まず、あなたが一番伝えたいことは何か、一文で言い切りましょう。

(悪い例)膝が痛い人には、太ももの前の筋肉を鍛えるのがいいかもしれません。

(良い例)【主張】 変形性膝関節症による痛みを改善するには、大腿四頭筋のトレーニングが有効です。

「〜かもしれない」という曖昧な表現を避け、結論を最初に提示することで、読者は「何についての話なのか」を瞬時に理解できます。

ステップ②:根拠(データ・文献+臨床経験)を添える

次に、なぜその主張が言えるのか、根拠を示します。ここで重要なのは**「客観的な根拠(データや文献)」「主観的な根拠(あなたの臨床経験)」**を組み合わせることです。

(良い例)【客観的根拠】 なぜなら、2020年の〇〇という研究報告で、大腿四頭筋の筋力強化が膝関節への衝撃を平均15%軽減させるというデータが示されているからです。

【主観的根拠】 また、私の臨床経験上でも、このトレーニングを継続した患者様の多くが「階段の上り下りが楽になった」とおっしゃっており、歩行の安定性を実感しています。

客観的なデータは発信の信頼性を担保し、あなた自身の経験談は情報に体温とリアリティを与えます。この両輪が、読者の深い納得感を引き出すのです。

ステップ③:反対意見や懸念点に配慮する

最後に、あなたの主張に対する反対意見や、考えられるリスクにも触れておきましょう。これにより、一方的な意見の押し付けではなく、多角的な視点を持った誠実な専門家であるという印象を与えます。

(良い例)【配慮】 もちろん、痛みの原因は多様であり、急性期の炎症が強い場合など、このトレーニングが適さないケースもあります。しかし、多くの慢性的な膝の痛みにおいて、まず試すべき有効なアプローチの一つだと私は考えています。

あえて異なる視点に触れ、「それでも自分はこう考える」と締めくくることで、主張に深みと説得力が生まれます。

4. あなたの発信の信頼性を“劇的に”高める4つの視点

3つのステップで骨格を作ったら、さらに信頼性を高めるための4つの視点を意識してみましょう。

  1. ファクト(事実)で語る
    曖昧な「〜と言われている」という表現は避けましょう。「〇〇学会の診療ガイドラインでは」「厚労省のデータによると」など、具体的な事実を元に語ることで、発言の重みが格段に増します。
  2. 情報源を明示する
    論文や公的機関のデータを引用する際は、必ず情報源を明記しましょう。読者が自分で元情報を確認できる状態にしておくことは、誠実さの証です。
  3. 経験談は“1つの例”として使う
    「私の担当した患者さんはこれで治った」という経験は貴重ですが、「だから全員これで治る」という一般化は危険です。あくまで「一つの成功事例として」というスタンスを保ちましょう。
  4. 専門外の領域には謙虚になる
    栄養学や心理学など、隣接する領域に触れる際は、「私の専門は理学療法ですが」「専門家の先生によれば」といった前置きをすることで、越権行為と見なされるリスクを減らせます。謙虚な姿勢は、信頼につながります。

5. まとめ:批判は、あなたの言葉が届いている証拠。誠実な発信を続けよう

情報発信を続けていれば、心ない批判や予期せぬ反論を受ける日が来るかもしれません。かつての私のように、落ち込むこともあるでしょう。

しかし、覚えておいてください。批判が来るということは、それだけあなたの言葉が誰かに届いている証拠です。

すべての人に好かれる発信など、どこにも存在しません。だからこそ、私たちは小手先のテクニックに走るのではなく、自分の言葉一つひとつに**「根拠」と「誠実さ」**を込める必要があります。

理学療法士であるあなたの発信には、目の前の患者さんだけでなく、その先にいる多くの人々の“健康観”をアップデートし、より良い未来を作る力が眠っています。

今日ご紹介した方法を参考に、ぜひ明日からあなたの言葉に“説得力”という武器を宿らせてみてください。応援しています。

タイトルとURLをコピーしました