はじめに
医療従事者にとって、診療記録は非常に重要です。その中でも、SOAPフォーマットは一般的な記録形式の1つであり、患者さんの状態を包括的に記録するために広く使用されています。
この記事では、医療カルテの書き方に焦点を当て、SOAPフォーマットの理解と効果的な活用方法について解説します。
SOAPとは何なのか?
そもそも、SOAPとはカルテの記載方法のこと。
医療現場では広く使用される記録方法です。
4つのアルファベットから頭文字をとって呼ばれます。
S(Subject):主観的情報
O(Object):客観的情報
A(Assessment):評価・考察
P(Plan):計画
1. S(Subject):主観的な情報の記録
患者さんの主観的な症状や状態に関する情報を記録します。これには、患者さんが訴える症状や不快感、過去の医療歴、家族歴などが含まれます。このセクションでは、患者さんから得られた情報を正確に記録することが重要です。患者さんの主観的な報告は、診断や治療計画の決定に影響を与える可能性があります。
2. O(Object):客観的な情報の記録
検査結果や身体検査の結果など、客観的なデータを記録します。このセクションでは、医師や看護師、理学療法士行った検査や観察結果を詳細に記録します。客観的な情報は、患者さんの状態を客観的に評価し、正確な診断を行うために不可欠です。
3. A(Assessment):評価・考察の記録
評価や考察を記録します。患者さんの主観的な症状と客観的な情報を基に、医療従事者が状態を評価し、考察し今後の治療計画を検討に役立てます。
このセクションでは、診断の根拠や意見を明確に記録することが重要です。正確な診断は、適切な治療計画を立てるために必要不可欠です。
4. P(Plan):治療計画とフォローアップの記録
治療計画やフォローアップの予定を記録します。
このセクションでは、医療従事者が患者さんの治療やケアの方針を具体的に記述します。これには処方箋の記載、手術や検査の予定、リハビリ計画予定などが含まれます。治療計画の明確な記録は、患者のケアの連続性を確保し、適切なフォローアップを行うために不可欠です。
カルテに記載すべき項目
具体的にどんな情報を記載するのが良いと思いますか?
リハビリスタッフの観点から挙げてみます。
- 患者さんの基本・医学的情報
- 身体所見や検査結果
- 現在の基本的動作能力
- 注意・リスク管理における事象
- 今後の治療方針・計画
最低限とこれらが挙げられると思われます。
SOPAの記録方法の具体例
※短く端的にまとめることもできましたが、今回はあえて文章で具体的に記載してみました。
S) 主観的情報
手術直後は痛みが常にある状態でしたが、今はじっとしてる分にはほとんど痛みはなくなりました。ただし、まだ歩き出すと痛みが傷口周囲にあって上手く歩けません。
O) 客観的情報
変形性股関節症に対して右THAを施行された術後9日目の方。疼痛は経時的に軽減傾向にあるが歩行動作時には術創部周囲において疼痛が残存している。NRS評価では安静時は0/10、動作時に4〜6/10となっている。
理学療法検査では、関節可動域測定:右股関節屈曲80°、伸展(膝屈曲位)-15°(膝伸展位)-5°、内転0°、内旋20°、外旋15、右膝関節屈曲130°、伸展0°。徒手筋力検査:右股関節屈曲2、伸展2、外転2、右膝関節伸展2、屈曲4。
基本的動作能力:現在病棟ADLは歩行器を使用し自立。その他立ち上がり動作や立位動作については物的支持がなくとも遂行可能。
歩行観察:歩行器歩行路は安定しているものの歩行器にもたれかかるように体幹は前屈姿勢となっている。立脚終期における股関節伸展は乏しく骨盤は回旋している。杖歩行になると荷重応答期から立脚中期にかけて体幹の側屈を認めるデュシェンヌ歩行を認めている。
A) 評価・考察
THA術後の症例である。疼痛は軽減傾向にあるが動作時痛は残存している状態ではあるがADLは歩行器を使用し自立できるまで動作能力は向上傾向にある。創部周囲での訴えであるため術後炎症の可能性が高い。創部以外での疼痛の出現には注意深く観察していこう。リハビリ負荷は疼痛に応じて調整する必要がある。
退院時には杖歩行自立を目指しているがまだ跛行を認めており安定性は低下している。問題点としては①右荷重応答期から立脚中期における体幹の側屈、立脚期時間の短縮②立脚終期での股関節伸展が不十分であり骨盤回旋、体幹が屈曲姿勢であること。
①の原因としては股関節内転制限や右股関節外転筋の筋力低下が挙げられる。本来であれば初期接地から立脚中期にかけて股関節内転位となるが制限があることにより体幹の側屈で代償している可能性がある。また、筋力検査により外転筋の筋力低下を認め、股関節内転モーメントを制御できず体幹側屈が生じている可能性もあると考えられる。
②立脚終期が乏しいため骨盤の回旋で代償し歩幅を確保しているものと思われる。本来であれば股関節伸展により腸腰筋張力を利用し振り出しにつながるがこの歩容だと歩行効率が不良である。また、骨盤代償に伴い体幹前屈位となっており今後腰痛や股関節痛につながる可能性もあり改善の必要がある。検査の結果原因としては股関節伸展制限が考えられ、膝関節屈曲位で股関節伸展可動域が変化しているために2関節筋の影響が強いと考えられる。
上記の考察から治療プランを検討していく。
P) 計画
関節可動域運動
・股関節伸展・内転可動域運動
・ストレッチング・伸張運動
筋力増強運動
・股関節外転筋トレーニング
基本的動作練習
・杖歩行練習
運動機能トレーニング・運動学習
・ウエイトシフト・荷重トレーニング
・ステップ練習
まとめ
医療カルテの書き方は、患者さんの診療記録を正確に記録し、適切な医療ケアを提供するための重要なスキルです。SOAPフォーマットは、患者さんの情報を包括的に記録するための効果的な方法であり、医療従事者にとって不可欠なツールです。
適切な記録は、患者さんの治療結果を改善し、医療チームのコミュニケーションを促進するために重要です。
この記事をお読みいただきありがとうございました。少しでも参考になれば幸いです。