問題1 血管疾患で女性に多い疾患はどれか。2つ選べ。
- 大動脈炎症候群
- ASO
- 大動脈瘤
- Buerger病
- Raynaud病
問題2 心臓手術関連合併症について当てはまらないのはどれか。
- 1 縦隔炎
- 2 心アミロイドーシス
- 3 肺炎
- 4 血栓・塞栓症
- 5 脳出血
問題3 On-pump CABGの特徴として当てはまらないものはどれか。
- 1 吻合場所の制約がある。
- 2 一時的な心機能低下をきたす。
- 3 気管挿管期間が相対的に長い。
- 4 臓器不全の危険がある。
- 5 入院期間が相対的に長い。
問題4 ワルファリン使用上の注意について誤っているものはどれか。2つ選べ。
- 1 ワルファリン投与時の洞調律生体弁植え込み患者の血栓塞栓症リスクは年間1〜2%である。
- 2 ワルファリンは消化管より吸収され肝臓で代謝される。
- 3 投与時は打撲による青あざの有無に注意する。
- 4 ビタミンKの多い食事を摂取すると抗凝固作用が増強される。
- 5 大動脈弁置で、二葉弁はPT-INRを2.0〜2.5に維持させる。
問題5 フレイル診断基準に当てはまらないものはどれか。
- 1 1年で3kgの体重減少
- 2 握力 男性<18kg
- 3 月1回の運動習慣
- 4 ここ数日疲労感がある。
- 5 通常歩行速度<0.8m/秒
問題6 血圧について正しいものはどれか。2つ選べ。
- 1 平均血圧は収縮期血圧に脈圧の1/3を加えて近似する。
- 2 収縮血圧150mmHg以上または90mmHg以上を高血圧の定義とされる。
- 3 副交感神経系の興奮は血圧低下を引き起こす。
- 4 血圧の調節には神経性と液性が働いている。
- 5 心室容積は拡張終期の壁応力を規定し収縮血圧で代用することができる。
問題7 以下の文で正しいものはどれか。
- 1 解剖学的死腔は鼻腔から終末細気管支を指す。
- 2 心不全例において分時換気量が健常人と比較し低下している。
- 3 肺活量は成人健常人で2000〜3000mLである。
- 4 動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)は心不全例で低下する。
- 5 下気道は喉頭から終末細気管支を指す。
問題8 調節機能について正しいものはどれか。2つ選べ。
- 1 体温上昇は運動強度に影響を受ける。
- 2 血圧上昇に反応して腎臓はレニンを分泌する。
- 3 延髄は血中O2の変化を感知する。
- 4 運動時には皮膚血流量は低下し体温の伝導・輻射を助ける。
- 5 頸動脈洞は血圧変化を感知する。
問題9 胸痛の循環器系の特徴について正しいものはどれか。
- 1 不安定狭心症は硝酸薬で軽快することが多い。
- 2 不安定狭心症の症状の持続時間は20分以内なことが多い。
- 3 狭心症時の痛みは左肩に多い。
- 4 大動脈解離の性質は絞扼感である。
- 5 心外膜炎の痛みは胸背部に起こる。
問題10 動機をきたす疾患として可能性が低いのはどれか。
- 1 完全房室ブロック
- 2 アミノフェリン
- 3 高血糖
- 4 甲状腺機能亢進症
- 5 心不全
問題1の解説
解答 1 5
- 高安動脈炎とも呼ばれている。大動脈炎症候群は大動脈およびその主要分枝血管や肺動脈などの弾性血管に非特異的炎症が起こり、閉塞または拡張性病変が出現する原因不明の症候群。10〜30歳の若年女性に多く9:1の割合である。
- 初期症状には、発熱や全身倦怠感、血管炎症が進行し閉塞や拡張病変が進行すると頭骨動脈が触知しにくくなり血圧の左右差が生じる。血管病変が起こる場所によって様々な症状が出現する。
- 急性期では血液検査にて炎症反応の上昇を認めるが慢性期では認めないことも多い。画像検査では、進行につれ大動脈の狭窄や拡張病変、石灰化などを認める。
- 原因は動脈硬化であり、近年増加傾向にある。50歳以上の男性に多くみられる。
- ある一定の距離を歩行すると筋肉痛が生じ、休むと消失する。
- ABI(足関節/上腕血圧比)≦0.9であれば、末梢動脈疾患として局所診断を進めていく。
- Fontain III以上の重症歌詞虚血には、動脈硬化危険因子のコントロールをしながら早期に血行再建術(カテーテルによる血管形成術またはバイパス手術)を行い、その後から運動療法を開始していく。Fontain II度以下であれば、最初から運動療法を指導していく。
- 大動脈壁が何らかの原因で弱くなると、血圧に耐えられなくなり外側に向かって膨張する。局所的に通常径の1.5倍以上になったものを大動脈瘤と呼ぶ。大動脈壁3層(内膜・中膜・外膜)全てが膨張した真性動脈瘤、大動脈内膜に亀裂が入り、流れ込んできた血液により中膜が2層に解離したものが大動脈解離、血管壁が破れて内膜、中膜から漏れ出した血液が血管周囲に血栓を作り瘤を形成する仮性大動脈瘤がある。
- 大動脈瘤は動脈硬化が疑われる初老期の男性に多い。
- 仮性大動脈瘤は破裂の危険性が高いため、瘤のサイズによらず手術(人工血管置換術)の適応である。真性大動脈瘤については、胸部なら最大直径が6cm以上m、腹部であれば5cm以上が手術適応となる。
- 瘤直径が1cm /1年以上の増加を示す場合も破裂の危険性が高いため手術適応と考えられる。
- 喫煙している若年男性に多く、原因不明の血管炎である。
- 20〜40歳代の女性に多い(女性:男性=2〜3:1)。
- 寒冷などの誘因により四肢末梢の動脈が発作性に攣縮するため、蒼白となりチアノーゼ色を経て紅潮するRaynaud現象が両側性に起こり、皮膚潰瘍た壊死はない。
問題2の解説
術後合併症に関する知識を問われる問題。術直後では特にICU・CCUでの全身状態の把握意外に、下記手術合併症の出現に注意する。
- 創部疼痛
- 無気肺・肺炎
- 不整脈(頻脈・心房細動・心室頻拍・心室細動)
- 心電図異常(ST変化)
- 血栓・塞栓症(心筋梗塞・脳梗塞・末梢動脈・深部静脈血栓)
- 抗凝固療法、抗血小板薬
- 出血(ドレーン、脳出血)
- 心嚢液貯留、心タンポナーデ
- 創感染(縦隔炎・敗血症)
問題3の解説
解答 1
冠動脈バイパス手術後、残存狭窄がなければプログラムに沿って運動を始め、運動処方を作成する。残存狭窄がある場合は自覚症状、モニター心電図初見に注意しながらプログラムを進める。人工心肺を使わないOff-pump手術では、On-pump手術と比較して運動耐容能の低下は少なく術後の回復も早い。術ご早期からの運動療法を開始することが可能であり、術後3〜7日目に心肺運動負荷試験を実施する施設もある。
On-pump CABGとOff-pump CABGの違い
- 確実な吻合ができる。
- 人工心臓・人工心肺の使用(高価な消耗品)
- 術後合併症、臓器不全の危険性
- 動脈硬化性病変の強い患者
- 超高齢
- 腎機能・呼吸機能低下例
- 気管挿管時間が相対的に長い。
- 入院期間が相対的に長い。
- 一時的な心機能低下
- 希釈体外循環や血管透過性亢進による浮腫、血漿成分の血管外漏出、血小板減少・機能低下、血液凝固因子消耗
- 吻合箇所の制約がある。
- 冠動脈の性状や走行により難易度が上昇。
- 気管挿管時間が相対的に短い。
- 入院気管が相対的に短い。
問題4の解説
解答 1 4
人工弁置換術後と僧帽弁形成術後(3ヶ月未満)の症例には、ワルファリンを投与して抗凝固療法を行う。ワルファリン投与時の機械弁植込み患者の血栓塞栓症リスクは年間で1〜2%、洞調律の生体弁え込み患者は年間で0.7%とされている。
ガイドライン上では、大動脈弁置換術後で、二葉弁とMedtronic Hall弁はPT-INRを2.0〜2.5に、その他の機械弁では2.0〜3.0に維持すべきとされている。僧帽弁置換の場合はいずれも2.0〜3.0に維持すべきとされている。
ワルファリンは用量依存性であり、PT-INRを指標にしてコントロールされる。歯磨きの際の出血や打撲による青あざ(内出血)の有無に注意する。ワルファリンは消化管により吸収され、血中のアルブミンと結合し肝臓で代謝される。一般的には食事に含まれるビタミンK量により大きく影響を受け、抗凝固作用が減弱化してしまうため注意する必要がある。
問題5の解説
解答 1
フレイルとは、加齢に伴う様々な臓器機能低下や予備能力低下によって外的なストレスに対する脆弱性が亢進した状態であり、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態であることを意味する。
フレイルの代表的な診断方法 には、Phenotype model(表現型モデル)とAccumulated model(欠損累積モデル)がある。また、Friedらがこの基準をCHSに適応し日本語版CHS基準(J-CHS基準)が作成され、予後予測への妥当性が検証されている。
- ① 体重減少 ー 6ヶ月で2〜3kg以上の体重減少
- ② 倦怠感(疲れやすさ) ー ここ2週間わけもなく疲れたような感じがする。
- ③ 活動性低下 ー 1軽い運動をしていますか? 2定期的な運動・スポーツをしていますか? この2項目いずれも「週に1回もしていない」と解答
- ④ 筋力低下 ー 握力:男性<26kg 女性<18kg
- ⑤歩行速度の低下 ー 通常歩行速度<1.0m/秒
問題6の解説
血圧は、心臓のポンプ作用(心拍出量)と動脈のトーヌス(末梢血管抵抗)によって規定される。高血圧は、心血管疾患の最大の危険因子で、特に冠動脈疾患、脳卒中、心不全の発症と強く関係している。日本での高血圧患者は約4300万人いるとされる。
正常血圧は診察室で収縮期血圧120mmHg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満、家庭血圧で収縮期血圧115mmHgかつ拡張期血圧75mmHg未満である。収縮血圧140mmHgまたは拡張期血圧90mmHg以上を高血圧と定義される。平均血圧は拡張期血圧に脈圧の1/3を加えて近似する。心室内圧は拡張終期の壁応力を規定し前負荷と呼ばれ収縮期血圧で代用できる。
問題7の解説
解答 1
- 解剖学的死腔:鼻腔・鼻咽頭・咽頭・喉頭・気管・気管支・終末細気管支
- 肺胞死腔:呼吸細気管支・肺胞
- 上気道:鼻腔・鼻咽頭・咽頭
- 下気道:咽頭・喉頭・気管・気管支・終末細気管支
- 呼吸部:呼吸細気管支・肺胞
- 1回の呼吸で体内に流入したまたは体内から呼出した空気の量を1回換気量(TV)と言い、成人の安静時で約500mLとなる。1分あたりのあたりの換気回数は呼吸回数と言い分時換気量/呼吸回数が1回換気量となる。
- 1分あたりに体内に吸入したまたは体内から呼出した空気の量を分時換気量(VE)という。
- 安静時に測定した最大努力下の換気量を最大換気量という。一般的には一定時間(例えば12秒間)に最大の努力で換気を行うことで測定する。
- 最高運動時の換気量と最大換気量の差は呼吸予備能という。
- 普通に空気を吸った時から最大まで空気を吸った時の空気量を予備吸気量(成人で約2000〜3000mL)という。
- 普通に空気を吐いた時から最大まで空気を吐いた時の空気量を予備呼気量(成人で約1000mL)という。
- 肺活量は、1回換気量と予備吸気量と予備呼気量の和であり、成人で約3000〜4500mLである。
- 心不全症例においては、分時換気量が健常者と比較し増大している。
- 運動中のPaCO2は心不全例でも健常者例でもほぼ40mmHgで一定。
問題8の解説
解答 1 5
延髄は血中CO2の変化を感知する。血中O2の変化は頸動脈小体と大動脈小体で感知する。腎臓は、血圧低下に反応してレニンを分泌する。運動時には皮膚血流は増加し体温の伝導・輻射を助ける。
問題9の解説
解答 2
狭心症とは、心筋が一過性に虚血に陥るために生じる胸部または隣接部の特有の不快感(狭心痛)を生じる症候群である。狭心症は症状の特徴によって①安定性(労作性)狭心症、②不安定狭心症、③無症候性狭心症、④冠攣縮性狭心の4つに分けられる。なかでも不安定狭心症は、心臓死および心筋梗塞の発症リスクが高い。
- 狭心症時の痛みは前胸部付近に多い。
- 不安定狭心症は硝酸薬で軽快しないことも多い。
- 大動脈解離の性質は裂けるような痛みである。
- 心外膜炎の痛みは胸骨裏面から心尖部に起こることが多い。
問題10の解説
解答 3
動悸とは、普段は意識しない心臓の拍動を不快なものとして自覚する症状。
- 不整脈
- 上室性や心室性の期外収縮は「脈がとぶ」、心房細動は「脈が不規則だ」のように表現されることが多い。動悸の突然の発症と突然の停止は、発作性の上室性・心室性の頻脈発作を示唆する。動悸にめまいや失神を伴う場合は、徐脈頻脈症候群や房室ブロック、心室頻拍が疑われる。
- その他の循環器疾患
- 心不全に伴う動悸は労作時も感じ、息切れを伴うことが多い。
- 心筋炎や肥大型心筋症では胸痛を伴うこともある。
- 循環器以外の主な疾患
- 発熱・貧血、甲状腺機能亢進症、低血糖、褐色細胞腫、慢性呼吸器疾患など心拍数が上がる状態でも動悸を感じる。
- パニック障害、過換気障害、不安神経症
- タバコ、カフェイン飲料、アルコール、アミノフェリンなど。