患者さんの「歩きたい」をどう科学的な目標に変えるか?主観と専門性をつなぐ“翻訳”の思考プロセス

基礎知識

はじめに:その目標設定、しっくりきていますか?

臨床現場で、こんな違和感を抱いたことはありませんか?

• 患者さんの希望を聞いたはずなのに、計画書に落とし込むと形骸化してしまう。

• 自分の立てたい目標と、患者さんの願いがどこかズレている気がする。

• 「とりあえず歩行自立」と書いているが、根拠に自信が持てない。

理学療法・作業療法における「目標設定」は、治療の羅針盤です。しかし、患者さんの主観的な願いと、私たちの専門的なロジックの間には、深い溝(ズレ)が存在します。

今回は、そのズレを埋めるためのキーワードである**「翻訳」**という視点について解説します。

なぜ患者さんの言葉は「そのまま」では目標にならないのか

患者さんは「また前みたいに歩きたい」「家に帰りたい」と自然な言葉で語ります。これらは人生レベルの貴重な「願い」ですが、臨床目標としては不十分な場合があります。

抽象的すぎる: 「元気になりたい」では、何を評価し、いつ達成したかが判定できません。

認識のズレ: 患者さんの「歩ける」と、セラピストの「歩行自立」の定義が異なることがあります。

科学的妥当性の欠如: 願いだけでは、具体的な介入(運動療法や環境調整)の設計図になりません。

重要なのは、患者さんの言葉を**目標そのものではなく、目標を創るための「材料」**として捉え直すことです。

「主観」を「専門性」へ翻訳する3ステップ

患者さんの想いを切り捨てるのではなく、専門職の知識を使って構造化していくプロセスを、私たちは「翻訳」と呼んでいます。

STEP 1:言葉から「価値」を抽出する

「孫と遊びたい」という言葉の裏には、「家族内での役割を再獲得したい」という生活価値が隠れています。

STEP 2:ICF(国際生活機能分類)で整理する

抽出した価値を、ICFの「参加・活動・身体機能」にマッピングします。

参加: 孫と公園で遊ぶ

活動: 屋外での30分間の歩行

身体機能: 立位バランス、耐久性

STEP 3:SMARTな目標へデザインする

ここで初めて、誰が見ても評価可能な「具体的・測定可能・期限付き」の目標へと変換します。

翻訳後の目標例:

「4週間以内に、屋外平坦路を杖なしで20m、見守り下で安全に歩行できる」

翻訳された目標が臨床を変える

正しく「翻訳」された目標は、単なる書類上の文言ではありません。

評価が明確になる: 何を測ればいいか迷わなくなります。

介入が具体化する: 目標達成のために必要な練習メニューが逆算できます。

患者さんの主体性が引き出される: 「自分の願いが反映されている」と実感することで、リハビリへの意欲(SDM:共有意思決定)が高まります。

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ここから先のセクションでは、さらに踏み込んだ実践的な内容を解説しています。

具体的な症例提示: 脳卒中患者さんの「スーパーに行きたい」をどう翻訳したか?ビフォー・アフターで徹底比較。

セルフチェックリスト: 自分の目標設定が「専門職の押し付け」になっていないか確認する3つの問い。

SDM(共有意思決定)の具体的な進め方: 患者さんと合意形成するためのコミュニケーション術。

目標設定は、セラピストの「技術」であり「姿勢」そのものです。

「今の目標設定に自信を持ちたい」「もっと患者さんに寄り添ったリハビリを提供したい」という方は、ぜひ本編をご覧ください。

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【2026/1 第3回】患者さんの言葉を、科学的な目標へどう翻訳するか―― 主観と専門性をつなぐ思考プロセス|リハの地図~学びnote~
はじめに 日々の臨床で、患者さんとの面談や評価を進める中で、 こんな感覚を持ったことはありませんか? 「患者さんの“言いたいこと”を聞いたのに、臨床目標に落とし込むと何か違う…」 「患者さんが希望していることと、自分が『専門職として立てたい...
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