【理学療法士必見】心電図を勉強する前に!緊急事態で命を救う「4つの波形」と10秒の判断術

心大血管リハビリ

はじめに

理学療法士(PT)として臨床に出ると、離床時やリハビリ中に患者さんの容態が急変するリスクは常に隣り合わせです。

「心電図は難しいから、まずは詳しい人に任せよう」……そう思っていませんか?

実は、本格的な心電図読影(12誘導心電図など)を学ぶ前に、すべての医療従事者が絶対に身につけておくべき「最短の判断スキル」があります。それは、心停止という極限状態において、わずか数秒で次のアクションを決定する技術です。

今回は、臨床で「動けるPT」になるために、勉強を始める前の必須知識として心停止時の4つの波形分類と初期対応を徹底解説します。

心電図を診る前に。まず身体を診る「3つのなし」

モニター心電図の波形を確認する前に、私たちは「一人の人間」として患者さんの状態を確認しなければなりません。これを「心停止の3徴候」と呼びます。以下の3点を確認し、揃った瞬間に心停止と診断します。

  • 反応なし: 肩を叩きながら呼びかけても、目を開けない、返事がない。
  • 呼吸なし: 胸郭の動きがない。あるいは「死戦期呼吸」と呼ばれる、あえぐような不自然な呼吸のみ。
  • 脈なし: 頸動脈(首の横)を触れ、拍動が確認できない。

なぜ身体所見が最優先なのか?

心停止の診断に、高価な医療機器は必要ありません。自分の「目」と「手」さえあれば5〜10秒以内に判断可能です。

心停止と判断した瞬間、以下の「3点セット」を同時並行で行います。

  • 1. 応援要請(コードブルー): 決して一人で抱え込まず、周囲を巻き込みます。
  • 2. 胸骨圧迫(CPR): 診断後、直ちに開始します。1秒の遅れが脳予後に直結します。
  • 3. モニター・除細動器の準備: CPRを継続しながら、波形を確認するための準備を整えます。

10秒で運命を分ける「4つの心停止波形」

モニターが装着されたら、ここからが「心電図の出番」です。ただし、波形をじっくり解析してはいけません。目的は「電気ショック(除細動)が必要か、不要か」を仕分けることだけです。

判断に許される時間は、脈の確認を含めて10秒以内。波形は大きく分けて2つのグループ、計4種類に分類されます。

電気ショック(DC)が適応となる波形

これらは「心臓そのもの」に電気的なトラブルが起きている状態です。リセット(除細動)をかけることで、正常なリズムに戻る可能性があります。

  • VF(心室細動)
    • QRS波が全く判別できず、細かく震えているようなカオスな波形です。心臓が痙攣しているだけで、ポンプ機能はゼロ。最も除細動が有効な波形です。
  • 無脈性VT(心室頻拍)
    • 幅の広い(ワイド)QRS波が規則正しく並びます。一見、心臓が動いているように見えますが、あまりに速すぎて血液を送り出せていません。脈が触れなければ、VFと同様に即ショックの対象です。

電気ショック(DC)が適応とならない波形

これらは、心臓をリセットしても状況が改善しない状態です。心筋そのもののエネルギー枯渇や、心臓以外の原因(大量出血、窒息、薬物中毒など)を疑う必要があります。

  • Asystole(アシストリー:心停止)
    • いわゆる「フラットライン」です。全く波形が出ない状態。
    • ⚠︎注意点: 波形が平坦な場合、単なる「リード外れ」や「感度設定が低すぎる」可能性もあります。慌てず、機器の設定(感度・誘導)を確認する冷静さも必要です。
  • PEA(無脈性電気活動)
    • 「心電図上は波形が出ているのに、実際には脈が触れない」**という、PTが最も陥りやすい落とし穴です。P波があっても、QRSがあっても、脈がなければそれはPEA。いわば「波形のゴミ箱」的な診断であり、直ちにCPRを継続しながら原因を探ります。

理学療法士が「深読み」を捨てなければならない理由

心電図を勉強し始めると、どうしても「P波とQRSの関係は?」「STが変化していないか?」といった細かい部分に目が向きがちです。しかし、急変現場においてその分析は「毒」になることがあります。

  • ハンズオフタイム(胸骨圧迫を止める時間)の最小化
    • 胸骨圧迫を止めている時間が長いほど、救命率は低下します。波形を「鑑別」する10秒は、命を繋ぐための貴重な中断時間です。ここで悩むことは許されません。
  • 後回しにすべきこと
    • 「房室ブロックがある」「不整脈の種類は何か」といった詳細な読影は、自己心拍が再開(ROSC)した後に12誘導心電図をとってから、医師と共にゆっくり行えば良いのです。

まとめ:PTこそ「初動のプロ」であるべき

私たち理学療法士は、患者さんの離床を促し、活動性を高めるプロフェッショナルです。しかし、活動性を高める(負荷をかける)以上、心停止のリスクは常に隣り合わせです。

1. 「3つのなし」で即座に異変に気づく。

2. 10秒以内に、4つの波形のどれかを判断する。

3. 電気ショックの要否を叫び、CPRの手を止めない。

この一連の流れを迷いなく行えることが、専門的な心電図の知識を積み上げるための「揺るぎない土台」となります。

難しい解析の勉強を始める前に、まずはこの資料にある「4つの波形」の形と、その時の対応を完璧にイメージできるようにしておきましょう。それが、あなたの目の前の患者さんを守る最強の武器になります。

次のステップ:あなたの職場の「備え」は万全ですか?

記事を読み終えたら、まずは以下の3点を確認してみてください。

• 自分の病棟・リハ室のどこにAED(除細動器)があるか?

• 緊急時の呼び出しボタンの位置は?

• 除細動器のモニターをパッと見たとき、波形の大きさを変えるボタンはどこか?

タイトルとURLをコピーしました