こんな疑問を持ったことはありませんか?
末梢神経障害の症例を担当した際、多くの理学療法士が一度はこのような壁にぶつかります。
「いつまで回復を期待していいのか、見通しが立たない」
「筋力が戻らないのは、神経がまだ届いていないから?それとも廃用?」
「今やっている筋トレは、逆に回復を邪魔していないだろうか?」
末梢神経は中枢神経と異なり「再生」の可能性があります。しかし、「再生すること」と「機能が元に戻ること」はイコールではありません。
本記事では、国内の論文や最新の知見に基づき、末梢神経障害のリハビリにおける「回復期間の目安」と、時期に応じた「介入戦略」を整理して考え、解説していきます。
末梢神経障害の分類を「予後予測」に活かす
教科書で学ぶSeddonやSutherlandの分類ですが、大事なのは名前を暗記することではありません。「今、何が壊れていて、再生の余地がどれだけあるか」を判断することです。
臨床で押さえるべき3つのフェーズ
- 神経伝導障害(Neurapraxia):軸索は無事。数週〜数ヶ月で「戻る」可能性が高い。
- 軸索損傷(Axonotmesis):軸索が断裂。1日1mmの再生を「距離と時間」で計算する必要がある。
- 神経断裂(Neurotmesis):自然回復は困難。手術を前提とした戦略が必要。
理学療法士に求められるのは、評価を通じて「この症例はどの段階にいるのか」という仮説を立てる力です。
【論文から考える】末梢神経の回復期間と時間軸
「神経は1日1mmで伸びる」という言葉を鵜呑みにしてはいけません。実際には、再生が始まるまでの「待機期間」や、筋肉に到達した後の「再支配(Re-innervation)」のプロセスが存在します。
回復のタイムライン目安
急性期〜数週間: 炎症とワーラー変性の時期。リハビリの主役は「保護」と「二次的障害の予防」。
- 1〜3ヶ月:再生が始まる時期。微細な感覚変化やTinel徴候の変化を見逃さない「評価の解像度」が問われます。
- 3〜6ヶ月:回復の方向性が決まる分岐点。筋収縮が明確になり始める時期。
- 6ヶ月〜1年:神経再生は落ち着き、機能改善の主役は「再学習・適応」へとシフトします。
時期別・理学療法の介入戦略:攻めるべきか、待つべきか
「とりあえず動かす」リハビリは、時期によっては逆効果になることすらあります。
- ① 急性期・脱神経期:【守る】 神経再生の環境を整える時期です。過度な伸張や圧迫は避け、拘縮を作らないポジショニングを徹底します。
- ② 再生開始期:【育てる】 低負荷・高頻度の随意収縮促通と、**知覚再教育**を開始します。脳へのフィードバックを絶やさないことが、後の巧緻性回復に繋がります。
- ③ 回復進行期:【使う】 単関節の動きを、実用的な動作へと統合します。代償動作が出やすい時期でもあるため、課題志向型トレーニングで質の高い運動を学習させます。
症例で考える:なぜリハビリの結果に差が出るのか?
同じ腓骨神経麻痺や橈骨神経麻痺でも、順調に回復する症例と、停滞する症例があります。その差はどこにあるのでしょうか?
- 回復した症例: 障害型を早期に見極め、「待つ時期」と「促通する時期」を明確に分けていた。
- 停滞した症例:「いつか戻るはず」と漠然とした刺激を続け、神経が届いた頃には筋の線維化や代償パターンの固定化が進んでいた。

理学療法士の価値は、「今、この介入に意味があるか」を論理的に説明できることにあります。
まとめ:根拠を持って「待てる」セラピストへ
末梢神経障害のリハビリは、派手なテクニック以上に「時期の判断」が臨床結果を左右します。
- いま、神経に何が起きているのか?
- その介入は、再生を助けているか、邪魔しているか?
この視点を持つだけで、あなたの臨床推論は劇的に変わります。
さらに深い「臨床判断の軸」を学びたい方へ
今回の記事では末梢神経障害リハビリの全体像を解説しましたが、実際の臨床現場では、 「Tinel徴候が移動しない場合は?」「感覚再教育の具体的な段階付けは?」「医師との連携はどうすべき?」など、より深い悩みが出てくるはずです。
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