端座位離床の効果はどれぐらいあるのか
「じゃあ、今日はベッドの端に座ってみましょうか」
リハビリの臨床で、私たちが当たり前のように使うこの言葉。
でも、患者さんの顔色がサッと青ざめ、「クラっとする…」と訴えられた経験、一度はありませんか?
高齢者や長期臥床の患者さんを担当していると、必ず出会う「起立性低血圧」という壁。
そんな時、私たちは「じゃあ今日は端座位までにしておこう」と判断します。
でも、心の中でこんな疑問がよぎりませんか?
- 「端座位で止めておくことで、本当に起立性低血圧は改善するんだろうか?」
- 「そもそも“端座位”って、どのくらいの循環負荷があって、どんな生理的効果があるの?」
- 後輩に「なんで端座位から始めるんですか?」と聞かれた時、自信を持って根拠を説明できるだろうか?
「なんとなく安全だから」「先輩がそうしていたから」という理由だけで、大切な離床の第一歩である“端座位”を選択してしまっているとしたら、それはもったいないかもしれません。
この記事では、そんな臨床のリアルな悩みを解決するため、「端座位離床は、起立性低血圧にどれぐらい効果があるのか?」という問いに、生理学とエビデンス、そして臨床の視点から深く切り込んでいきます。
臨床でよく見る「端座位でのふらつき」、その正体とは?
まず、おさらいです。
起立性低血圧は、単に「立ち上がった時に血圧が下がる」だけではありません。
端座位の時点でも、めまい、ふらつき、冷汗といった症状は頻繁に起こります。
これは、長期臥床によって身体の「循環調整システム」がサボってしまっているサインです。
通常、体位を変えると重力で血液が下肢へ移動しますが、私たちの身体には「圧受容体反射(Baroreflex)」という素晴らしい機能が備わっています。
- 血圧低下をセンサー(圧受容体)が感知
- 自律神経(交感神経)がONになる
- 心拍数を上げ、血管を収縮させて血圧を維持する
しかし、長期臥床や高齢の患者さんでは、この反射が鈍くなっています。
だから、端座位という「中間ステップ」でさえ、循環が追いつかずに症状が出てしまうのです。
重要なのは、「端座位で血圧が下がった」という事実だけでなく、その反応の仕方や回復までにかかる時間を評価すること。
それが、次のステップへ進むための重要なヒントになります。
なぜ「端座位」が起立性低血圧のリハビリに有効なのか?
では、本題です。
端座位離床は、なぜ起立性低血圧の改善に効果が期待できるのでしょうか?
それは単に「安全だから」という消極的な理由ではありません。
端座位には、循環システムを再教育するための積極的な治療効果が隠されています。
- 臥位の重力負荷:0%
- 立位の重力負荷:100%
- 端座位の重力負荷:約40〜50%
いきなり100%の負荷をかけるのではなく、まずはその半分程度の負荷で身体を慣らしていく。端座位は、まさに循環器系の“筋トレ”におけるウォーミングアップとなります。
端座位を安全な範囲で保持することは、鈍くなった血圧センサー(圧受容体)を優しく刺激し、「そろそろ仕事の時間だよ」と再教育するプロセスです。
数日間これを繰り返すことで、反射機能が徐々に目覚め、血圧が安定しやすくなります。
端座位では、体幹や下肢の軽い筋活動が起こり、下肢に溜まった血液を心臓へ戻す「筋ポンプ作用」を促します。
また、横隔膜が下がることで呼吸がしやすくなり、「呼吸性ポンプ」も静脈還流を助けてくれます。
つまり、端座位は**「神経・筋・呼吸」を総動員して循環を安定させる、非常に合理的な姿勢**となります。
【続きが知りたい方へ】この記事を読めば、こんな臨床の疑問が解決します
ここまで読んで、「もっと具体的に知りたい!」と感じた方も多いのではないでしょうか。
今回ご紹介する記事 『起立性低血圧に端座位離床はどれぐらい効果があるのか?―理学療法士が臨床とエビデンスから考える“離床のリアル”』 では、さらに踏み込んだ内容を解説しています。

- ✅ 第3章:見逃しがちな「遅発性起立性低血圧」とは?
- 離床して5分後にふらつく…その原因と対策を解説。
- ✅ 第4章:「中間ポジション」の本当の意味
- なぜ端座位が、自律神経と心理面にまで良い影響を与えるのか?
- ✅ 第5章:実際、どれだけ血圧は安定する?エビデンスを読み解く
- 「端座位を5分続けるのと10分続けるのでは効果が違う?」論文データと臨床実感から効果を検証。
- ✅ 第6章:明日から使える!“端座位トレーニング”の具体的な進め方
- 評価からリスク管理まで、安全かつ効果的な実践プロセスをステップバイステップで徹底解説。
「なんとなく」で行っていた端座位離床が、「根拠のある治療的アプローチ」に変わります。
患者さんの状態に合わせて自信を持って離床を進められるようになり、チームや後輩からも頼られる存在になるための一歩を踏み出してみませんか?
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