カンファレンスで発言できない…そんなPTが“伝える力”を磨く方法

はじめに

「今日のカンファレンス、また何も発言できなかった…」
「先輩や医師の前だと、自分の意見がちっぽけに感じて口を開けない…」

新人・若手の理学療法士(PT)にとって、多職種が集まるカンファレンスの時間は、大きなプレッシャーを感じる場面ではないでしょうか。

患者さんのために伝えたいことがあるのに、うまく言葉にできない。リハビリの報告を求められても、しどろもどろになってしまう。そんな経験から、カンファレンスが苦手、怖いと感じている方も少なくないはずです。

でも、安心してください。カンファレンスで発言できないのは、決してあなたの知識や能力が不足しているからではありません。原因は、考えを整理し、相手に分かりやすく届ける**「伝え方の型」を知らないだけ**なのです。

この記事では、カンファレンスでの発言が苦手なPTが、自信を持って意見を言えるようになるための「伝える力」の磨き方を、具体的な3つのステップで解説します。

この記事を読めば、明日からのカンファレンスが少しだけ怖くなくなり、あなたの専門性をチームに届けられるための一助となれば幸いです。

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なぜPTはカンファレンスで発言しにくいのか?

まず、なぜ私たちはカンファレンスで発言することに苦手意識を持ってしまうのでしょうか。その原因を知ることで、対策が見えてきます。

新人・若手が感じる心理的ハードル

経験の浅い新人・若手PTにとって、カンファレンスは心理的なハードルが高い場所です。

  • 「的外れなことを言って、笑われたらどうしよう…」
  • 「経験豊富な先輩の意見を否定するみたいで言いづらい」
  • 「質問にうまく答えられなかったら恥ずかしい」

このような「失敗への恐怖」が、あなたの口を重くしてしまいます。しかし、これは多くのPTが通る道。あなただけが感じている特別な悩みではありません。

「何を言えばいいかわからない」よくある悩み

そもそも「何を、どのタイミングで話せばいいのかわからない」というのも、よくある悩みです。目の前の患者さんのリハビリに必死で、カンファレンスで話す内容まで頭が回らない、情報が整理できていない、というケースも多いでしょう。リハビリの報告がうまく話せないのは、準備不足が原因かもしれません。

他職種との比較で感じる“劣等感”

カンファレンスには、医師、看護師、ソーシャルワーカーなど、様々な専門職が参加します。それぞれの専門分野から次々と意見が出る中で、「PTとして何を言うべきか…」と気後れしてしまうことも。特に、医学的な視点で話が進むと、自分の専門性が及ばないように感じ、劣等感を抱いてしまうことがあります。


伝える力を育てる3つのステップ

では、どうすれば自信を持って発言できるようになるのでしょうか。特別な才能は必要ありません。正しい手順でトレーニングすれば、「伝える力」は誰でも身につけることができます。

① 伝える“内容”を整理する|SOAPや臨床推論の型を使う

発言できない原因の多くは「頭の中が整理できていない」ことです。そこで役立つのが、私たちが普段から使っている**「SOAP」や「臨床推論」のフレームワーク**です。

  • S (Subjective)情報: 患者さんの訴え、意欲、気持ちの変化など
  • O (Objective)情報: 動作レベルの変化、検査・測定の客観的データ
  • A (Assessment): SとOから考えられる問題点やリハビリの効果の評価
  • P (Plan): Aに基づいた今後のリハビリ計画や提案

カンファレンス前に、この型に沿って情報を書き出すだけで、頭の中が驚くほどスッキリします。「何を言うか」が明確になれば、発言へのハードルはぐっと下がります。

② 声に出して練習する|話すスキルは“筋トレ”と同じ

話すスキルは、リハビリで指導する筋力トレーニングと同じです。使わなければ衰え、トレーニングすれば向上します。

  • 一人で声に出してみる: カンファレンス前に、整理した内容を一人で声に出して話してみましょう。「えーっと」「あのー」といった口癖に気づけたり、話の詰まる箇所がわかったりします。
  • 同僚に聞いてもらう: 同期の仲間や話しやすい先輩に、「ちょっと練習に付き合ってくれない?」と頼んでみましょう。フィードバックをもらうことで、自分では気づけなかった改善点が見つかります。

たった5分の練習でも、本番での自信とスムーズさは格段に変わります。

③ 伝える“目的”を明確にする|誰に、なにを、なぜ伝えるのか?

あなたの発言には、必ず「目的」があるはずです。その目的を意識するだけで、言葉に力が宿ります。

  • 誰に?: 医師? 看護師? それともチーム全体?
  • 何を?: リハビリの進捗? 退院に向けた提案? それともリスク管理の情報共有?
  • なぜ?: 患者さんの安全を守るため? 退院をスムーズにするため?

例えば、「**(誰に)医師と看護師に、(何を)患者さんが病棟内で転倒するリスクが高まっていることを、(なぜ)**安全な離床方法を共有するために伝えたい」と目的を明確にすれば、伝えるべき情報が絞られ、説得力が増します。


発言しやすくなる“コツ”と“マインドセット”

3つのステップと合わせて、すぐに使えるちょっとしたコツと心構えも知っておきましょう。

「完璧じゃなくていい」7割の完成度でOK

100点満点の完璧な発言を目指す必要はありません。完璧を求めると、発言のハードルが上がりすぎてしまいます。まずは**「7割の完成度でいいから、口に出してみる」**というマインドセットを持ちましょう。あなたの発言が、他の誰かの意見を引き出すきっかけになることも多々あります。

「先に結論を言う」で伝わりやすさUP

忙しい多職種が集まるカンファレンスでは、要点を簡潔に伝えることが重要です。そこでおすすめなのが**「結論から話す」**というテクニック(PREP法)です。

【例】

結論: 「〇〇さんの退院、来週末は少し早いかもしれません」

理由: 「屋外歩行時にまだふらつきが見られるためです」

具体例: 「昨日、屋外で50m歩行した際、2回バランスを崩しかけました」

結論: 「つきましては、退院をもう1週間延ばし、屋外歩行訓練を強化することを提案します」

このように話すだけで、聞き手はあなたの言いたいことを瞬時に理解できます。

沈黙の場面でも“共感”から始めれば話しやすくなる

どうしても自分の意見が思いつかない時や、議論が白熱していて入り込めない時。そんな時は「共感」から入るのがおすすめです。

「〇〇先生がおっしゃるように、内科的なリスク管理は重要ですね。その上で、理学療法士の視点から補足すると…」
「たしかに、看護師さんがおっしゃる通り、夜間のトイレが課題ですね。日中のリハビリでは…」

他者の意見を一度受け止めることで、発言のきっかけを掴みやすくなります。


どうしても発言できないときは?

それでもやっぱり発言するのが怖い…という場合は、さらにハードルを下げた方法を試してみましょう。

  • あらかじめメモしておく: 伝えたい要点を小さなメモに書いておき、それを見ながら話すだけでも安心感が違います。
  • リハビリ中の観察記録を根拠にする: 「私の意見」ではなく「客観的な事実」として報告しましょう。「リハビリ中に『家に帰るのが不安だ』と話されていました」と伝えるだけでも、チームにとって非常に価値のある情報です。
  • 先輩PTに“代弁してもらう”ことも一つの戦略: これは逃げではありません。カンファレンス前に先輩に「こういう視点があるのですが、うまく伝えられる自信がなくて…」と相談し、代わりに伝えてもらうのも立派なチームプレーです。

伝える力は“患者さんとのコミュニケーション”にもつながる

カンファレンスで伝える力を磨くことは、あなたのPTとしてのキャリア全体にとって、大きな財産となります。

  • 患者さんにリハの意図を説明できるようになる
  • ご家族への病状や予後の説明がしやすくなる
  • チームの中での“PTとしての役割”が明確になり、頼られる存在になる

伝える力は、カンファレンスという特定の場面だけでなく、あなたの専門性を高め、患者さんやチームからの信頼を得るための基盤となるスキルなのです。


まとめ:発言できないのは、あなたの“力不足”ではない

カンファレンスでうまく発言できないのは、あなたの能力が低いからではありません。それは経験が浅く、伝え方の「技術」を知らないだけです。

今回ご紹介した3つのステップとコツを、ぜひ一つでも試してみてください。

  1. 伝える内容を「型」で整理する
  2. 声に出して練習する
  3. 伝える目的を明確にする

最初はうまくいかなくても、繰り返すうちに必ず上達します。あなたのその発言は、患者さんの未来をより良い方向に導く、価値ある一言になるはずです。

明日からのカンファレンスが、あなたにとって「貢献できる場」に変わることを心から願っています。

他にも気になった記事がありましたら是非読んでみてください。ありがとうございました。

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