✅はじめに|急性期で働く理学療法士は「時間との闘い」
急性期病院で働く理学療法士の皆さん、日々の業務にこんなふうに感じたことはありませんか?
- 「朝一の情報収集から始まり、介入・記録・回診・カンファレンス…一息ついたらもう夕方」
- 「あの患者さん、今日もちゃんと介入できなかった…」
- 「評価も記録も中途半端。リスク管理もおろそかになっている気がする…」
僕自身、新人時代は(今でも解決できていない部分も多いですが…)この“時間に追われる焦燥感”に、毎日押し潰されそうになっていました。
でもある時、「このままだと、自分が壊れる」と本気で思ったのです。
本記事では、そんな僕が、実際に現場で試行錯誤しながら身につけた**“急性期で消耗しない時間管理術”**を、5つの視点からご紹介します。

① 忙殺されていた新人時代の失敗談|“やるべきこと”が雪だるま式に増えていく
急性期に配属されたばかりの頃、僕は何でもかんでも自分でやろうとしていました。
- 「術後1日目の介入も、3日前の評価フォローも、急変後の再評価も…全部、自分が動かないと!」
- 「患者さんのことをよく知るには、毎日必ず1回は顔を出さなきゃ」
- 「評価はしっかり、記録は丁寧に、カンファもちゃんと出ないと…」
その“まじめさ”が、逆に自分の首を絞めていたんです。
結果、どうなったかというと…
- 毎日15人近い患者のスケジュールに追われ、昼食を食べる時間もなし
- 記録は夕方まとめ書き、臨床推論どころではない
- 急変時や家族対応など“突発的なこと”が入ると、すべてが後ろ倒しに
患者さんにとって必要なことを見極める余裕がなく、ただ“こなすだけの仕事”になってしまっていた自分に、ある日ふと気づきました。
② 現在の一日の動き|実際のタイムスケジュールを公開!
今の僕は、“戦略的に動く”ことを意識して1日を設計しています。
その結果、時間に追われるのではなく、自分で時間を「選ぶ」働き方ができるようになりました。
以下が、現在の1日のスケジュールの一例です。
時間帯 | 内容 |
7:50〜 | 出勤・情報収集・電子カルテ確認(Dr.指示・バイタル・画像など)・1日のスケジュール確認 |
8:30〜 | 朝礼 |
8:40〜 | 診療開始 |
9:00 | 【優先①】術後早期患者の初回介入:バイタル確認・離床誘導 |
9:45 | 多職種連携 |
10:00 | 【優先②】救命センターやICUなど、集中治療室管理中の患者への介入 |
10:40 | リハビリカルテ記録(この時間に一部完了させる)・情報共有 |
11:00 | 午前中残り患者の診療 |
12:15 | 昼食 |
12:40 | 午後のスケジュール調整・情報収集 |
13:00 | ADL訓練(歩行・トイレ動作等)+自主トレ確認 |
14:40 | 中止患者等整理・スケジュール調整・一部リハビリカルテ記録 |
15:00 | 午後の残り患者診療 |
16:40〜 | リハビリカルテ記録 |
17:15 | 計画書等の書類業務 |
17:45 | 翌日のスケジュール調整 |
18:00 | 退勤 |
重要なのは、「介入」と「記録」「共有」「調整」を明確にブロックで分けていること。
これにより、突発対応が入っても柔軟にリスケできる余白が生まれました。

③ ToDo管理より、“決め打ちスケジュール”が効いた!
かつて僕は、毎朝「ToDoリスト」を作っていました。
- 患者〇〇さん:立位訓練
- 評価表の記入
- カンファ用の資料作成
- 看護師との申し送り
- 術後2日の離床指導…
でも、このやり方だと、イレギュラーが1つでも起きると、全てが崩壊してしまうんです。
そこで試したのが、「決め打ちスケジュール」という考え方。
✅決め打ちスケジュールとは?
- 「午前9時〜12時は“介入集中時間”」と時間帯ごとにタスクを固定
- 午後は「記録・共有・準備」の時間として“空白のブロック”を意識的に作る
- 介入する時間とカルテ記録時間は別枠で時間ブロック。介入中に簡単なメモをとり、それを記録時に記入。
ToDoリストではなく、「時間ごとの役割ブロック」に切り替えることで、
突発対応に強くなり、介入の質とスピードも安定してきました。
④ あえて“やらないこと”を決める|時間を守る最短ルート
時間術というと「どうやって時間を作るか?」に目が向きがちですが、実はそれよりも大事なのが、「何をやらないかを明確にすること」です。
急性期では、やるべきことが常に増え続けます。
すべてに対応しようとすれば、100%破綻します。
僕が“やらない”と決めたこと
- 全員に毎日介入しない(症状安定者は介入間隔を見直す)
- 記録は簡潔に、目的を絞って書く(全てを網羅しようとしない、診療中にたったメモを活用)
- 完璧な書類作成を求めない(大事なのは“伝わるか”)
- 他職種の依頼に即答しない
「これは今、やらない」
その判断ができるようになると、自然と“今やるべきこと”に集中できるようになります。
⑤ 忙しい中でも“患者の表情を見る余白”を作る方法
「忙しくて、患者さんの顔が見られなかった…」
これほど、理学療法士として悲しい言葉はありません。
でも現実は、介入→記録→申し送り…と常に動き続ける中で、つい“人”ではなく“業務”を見てしまうこともあります。
僕が実践している“余白を作る”工夫
- 介入前に深呼吸し、“その人だけ”を見る時間を5秒作る
- 反応や表情の“変化”を観察する視点を持つ
- 「今日はどうでした?」と聞いた後の沈黙を待つ
- 介入中もしっかり”雑談タイム”を取る
これらを実践することにより、本音を引き出す時間になり、患者さんのニーズを深く知るきっかけになることも多いです。
時間を生むのではなく、“余白を意識的に作る”。
それが、介入の質を根本から変える第一歩になります。
🔚まとめ|忙殺されないPTは「仕組み」で動いている
急性期の現場で、時間に追われる感覚から脱却するには、「忙しさを仕方ないと諦めない姿勢」が必要です。
それに加えて、日々の業務に自分なりの“仕組み”を組み込むことがとても重要です。
✅ポイントおさらい
- 忙殺された経験から、自分の課題を振り返る
- 1日の流れを“ブロック単位”で設計する
- ToDoではなく、時間の使い方をパターン化する
- 「やらないこと」を意識的に選び取る
- 余白を持って、患者さんに本当に向き合う
📣あなたへの問いかけ
「今日、あなたは“誰か”ではなく、“あなた自身の意思”で時間を使えましたか?」
急性期という忙しい環境の中でも、自分らしく働く理学療法士が増えることを願って。