はじめに
化学療法(抗がん剤治療)を受けている患者さんを担当する際、カルテにある「第○コース」という文字を、単なる記録として読み飛ばしていませんか?
「抗がん剤を使っているのは知っているけれど、いつが一番きついのか把握できていない」
「副作用がある中で、どこまで運動負荷を上げていいのか判断に迷う」
臨床現場では、こうした声をよく耳にします。実は、化学療法の「コース(サイクル)」を正しく理解することは、安全で効果的なリハビリを提供するための「最短ルート」なのです。
今回の記事では、がんリハビリに携わる理学療法士(PT)が必ず押さえておくべき化学療法の基礎知識を凝縮して解説します。
化学療法の「1コース」とは何か?
化学療法における「1コース(または1サイクル、1クール)」とは、「抗がん剤の投与期間」と「休薬期間」を合わせた1つの周期を指します。
例えば、「3日間投与して25日間休む」というスケジュールなら、28日間で1コースとなります。

なぜ何度も繰り返すのか?
がん細胞はすべてが同時に分裂しているわけではありません。1回の投与ですべてを死滅させるのは難しいため、サイクルを繰り返して残存したがん細胞を叩く戦略が取られます [2]。また、休薬期間を設けることで、正常な細胞(骨髄など)が回復する時間を確保しているのです [2]。
なぜPTが「コース数」を把握すべきなのか
「今が何コース目か」を知ることで、PTは患者さんの体力の消耗度、副作用の蓄積、そして心理状態を予測できるようになります。
- 初期コース: 治療への不安が強く、まずは信頼関係の構築や体力維持がメインとなります。
- 中盤〜後期コース: コースを重ねるごとに「蓄積性副作用」が顕著になります。末梢神経障害による転倒リスクの上昇や、休息しても改善しない「がん関連倦怠感(CRF)」への対応が求められます。
同じ「化学療法中」の患者さんでも、1コース目と6コース目では、リハビリのゴール設定は全く別物になるのです。
「ナディア(最低点)」を見逃さない
リハビリの安全管理において最も重要なのが、ナディア(Nadir)と呼ばれる時期の把握です。
これは、骨髄抑制によって白血球や血小板が最も減少する時期のことで、一般的には投与後7〜14日前後に訪れます。この時期は感染症や出血のリスクが最大になるため、血液データ(WBC、Hb、Plt)の確認が不可欠です。
例えば、好中球数が500/μL未満、血小板数が5万/μL未満といった場合には、リハビリの中止や強度の最小限化を検討する必要があります。

まとめ:あなたのリハビリが「治療完遂」を支える
化学療法のコース数を理解することは、単なるリスク管理ではありません。患者さんが「抗がん剤治療を最後までやり遂げるための体力」を維持・向上させるための積極的な介入につながります。
「今日のリハビリが、治療の完遂を支えている」という視点を持つだけで、患者さんへの声かけやモチベーション維持の仕方も変わってくるはずです [8]。
💡 さらに深く学びたい方へ(メンバーシップ限定)
今回の内容は、がんリハビリの入り口に過ぎません。限定記事(有料版)では、さらに臨床で役立つ以下のトピックを詳細に解説しています。
- 代表的なレジメン(FOLFOX、AC療法など)ごとの具体的な注意点
- 血液データに基づいたリハビリ中止・継続の判断基準詳細
- Borgスケール(主観的運動強度)を用いた最適な負荷設定のコツ
- 「がんサルコペニア」を防ぐための筋力トレーニング実践法
現場で自信を持ってリハビリを提供したいPTの皆さんは、ぜひメンバーシップ登録をしてフルバージョンの記事をチェックしてください!
[メンバーシップ入会・限定記事はこちらから]


