【若手理学療法士向け】評価が苦手…は今日で卒業!運動器疾患の評価 完全ガイド

運動器リハビリ


はじめに:評価の壁に悩む、すべての若手理学療法士へ

「評価が苦手で、自信が持てない…」
「患者さんの痛みの本当の原因が分からない…」
「教科書通りにはいかず、何から手をつけていいか途方に暮れてしまう…」

理学療法士として臨床に立つあなたが、今まさにこんな悩みを抱えているなら、この記事はきっと役に立ちます。

運動器疾患の評価は、私たちの仕事の根幹です。しかし、その複雑さから多くの若手理学療法士がぶつかる大きな壁でもあります。

この記事を読めば、運動器疾患の評価で**「ここだけは絶対に押さえるべき」重要なポイント**が明確になり、明日からの臨床で、患者さんの状態を的確に把握し、自信を持って治療方針を立てられるようになります。

\臨床理学Labでは有料記事が読み放題/
臨床理学Lab|リハの地図~学びnote~
**「臨床理学Lab」**は、理学療法における基本的な知識の向上に加え、評価と臨床推論の強化を目的としたメンバーシップです。「なぜこの評価をするのか?」「その結果から何がわかり、どう治療に活かせるのか?」深く掘り下げ、現場で実践できる力を養...

そもそも、なぜ理学療法士にとって「評価」はこれほど重要なのか?

「早く治療したい」という気持ちはよく分かります。しかし、精度の高い評価なくして、質の高い治療はありえません。評価が重要な理由は3つあります。

  • 的確な治療計画の土台になる
    評価が不十分だと、見当違いな治療をしてしまい、症状を改善できないばかりか、悪化させてしまうリスクさえあります。評価は、治療という名の航海の「羅針盤」です。
  • 患者さんからの信頼を獲得できる
    「あなたの痛みは、〇〇が原因で起きています。だから△△という治療が必要です」と論理的に説明できれば、患者さんは納得し、安心して治療に協力してくれます。
  • 自分自身の成長と自信に繋がる
    評価能力の向上は、臨床家としてのスキルアップに直結します。「患者さんの謎を解き明かせた!」という経験は、理学療法士としての何よりのやりがいになるでしょう。

この記事では、若手理学療法士の皆さんが「これ、知りたかった!」と感じる実践的な評価のポイントを、順を追って徹底的に解説していきます。

評価の迷子にならない!まずは全体像を掴むOSCE(オスキー)の流れ

運動器疾患の評価は、闇雲に行うものではありません。まるで物語を読み解くように、段階的に情報を集め、整理していくプロセスです。まずはこの全体像を意識しましょう。

評価の4ステップ

問診:患者さんの主訴や生活背景を聴き、問題点の仮説を立てる
視診・触診:目で見て、手で触れて、身体の異常なサインを探す
身体機能検査:ROM、MMT、特殊テストで仮説を客観的に検証する
統合と解釈:全ての情報から問題点を抽出し、治療に繋げる

この流れを意識するだけで、評価の漏れを防ぎ、効率的に情報収集ができるようになります。

【ステップ別】明日から使える!評価の重要ポイント徹底解説

それでは、各評価フェーズで「ここだけは押さえろ!」という重要ポイントを見ていきましょう。評価は、患者さんの体の「謎を解くための鍵」です。面倒がらずに、一つひとつ丁寧に集めていきましょう。

❶ 問診:患者さんの「本当の困りごと」を深掘りする技術

問診は、評価の方向性を決定づける最も重要な情報源です。

  • 主訴の具体化(5W1Hを意識する)
    「どこが、いつから、どんな時に、どんな風に、どのくらい痛い・困るか」を具体的に聴き出しましょう。
    • (✕)「膝が痛いんです」
    • (◯)「3週間前から立ち上がる時に右膝の内側がズキッと痛みます」
  • 疼痛の性質とパターン
    安静時痛、運動時痛、夜間痛の有無は?特定の動作で強くなる?安静で楽になる?炎症性か、機械的ストレスかを見極めるヒントになります。
  • 増悪・寛解因子
    「どんな動きで痛みが強くなりますか?」「何をすると楽になりますか?」患者さんの日常から、痛みの原因や改善のヒントを探ります。
  • 生活背景とADL/IADL
    仕事内容、趣味、スポーツ、日常生活で具体的に何に困っているか(例:靴下が履きにくい、電車のつり革が持てない)を聴き、QOLへの影響度を把握します。
  • 【⚠️見逃し厳禁!】Red Flagサインの確認
    以下のサインは重篤な疾患を示唆します。一つでもあれば、すぐに医師への報告・相談が必要です。
    • 発熱、体重減少、原因不明の全身倦怠感
    • 夜間に痛みで目が覚める(夜間痛)
    • 膀胱直腸障害(尿や便のコントロールができない)

💡 問診のコツ
まずは「傾聴」の姿勢で、患者さんの言葉にじっくり耳を傾けましょう。「大変でしたね」と共感を示しながら、「〜について、もう少し詳しく教えていただけますか?」といったオープンクエスチョンで話を広げ、信頼関係を築くことが大切です。

❷ 視診・触診:目で見て、手で感じる「異常のサイン」

問診で立てた仮説を、あなたの目と手で確認するフェーズです。

  • 視診のポイント
    • 姿勢・アライメント: 立位・座位での全身のバランス、左右差、O脚/X脚などをチェック。
    • 局所の変化: 腫れ、赤み、筋萎縮、皮膚の色の変化はないか。
    • 動的観察: 患者さんが痛みを訴える動作(歩行、立ち上がり、挙上など)を実際に行ってもらい、代償動作や異常な動きがないか観察します。
  • 触診のポイント
    • 圧痛点: 痛みの原因となっている組織(筋、腱、靭帯など)を特定します。
    • 筋緊張: 異常な筋の硬さ(スパズム)や左右差を触知します。
    • 浮腫・熱感: 炎症のサインがないかを確認します。
    • 解剖学的ランドマーク: 骨の突起や筋の起始・停止を正確に触れるスキルは評価の基本。解剖学の知識がここで活きてきます。

❸ 身体機能検査:仮説を「客観的な事実」で裏付ける

問診と視診・触診で立てた仮説を、客観的なデータで検証します。「なぜこの検査をするのか?」という目的意識を持つことが重要です。

  • ROM(関節可動域検査)
    • 計測と左右差: ゴニオメーターで正確に計測し、必ず健側と比較します。
    • 疼痛との関連: どの範囲で痛みが出るか、どんな種類の制限(筋性、関節性など)かを確認します。
    • **エンドフィール:**最終域での抵抗感から、制限因子のヒントを得ます。
  • MMT(徒手筋力検査)
    • 疼痛誘発の有無: 抵抗をかけた際に痛みが出ないか。
    • 代償動作の有無: ターゲット以外の筋を使って代償していないか、注意深く観察します。
    • 左右差の比較: 健側と比較して筋力低下の有無を確認します。
  • 整形外科的テスト(特殊テスト)
    特殊テストは「診断」のためではなく、あくまで「仮説を検証する」ために行います。陽性だけで判断せず、他の情報と合わせて総合的に考えましょう。

✍️ 臨床でよく使う厳選テスト例
膝関節:Lachman Test (ACL損傷), McMurray Test (半月板損傷)
肩関節:Neer Test, Hawkins-Kennedy Test (インピンジメント症候群)
腰 椎:SLR Test (坐骨神経痛)
股関節:Thomas Test (腸腰筋の短縮)
注意点:必ず患者さんに説明と同意を得てから行い、痛みを過度に誘発しないよう細心の注意を払いましょう。

TKA(人工膝関節全置換術)術後リハビリの基本と注意点【新人PT向け】
TKA術後リハビリに悩むあなたへTKA(人工膝関節全置換術)後のリハビリは、新人理学療法士にとって非常に身近で、かつ難しさを感じやすい症例です。「術後の膝が全然伸びない…」「疼痛が強くてリハビリが進まない…」「荷重はどこまでかけていいのか?...

評価のゴール!点と点を線で繋ぐ「統合と解釈」の思考法

ここまでの評価で得た情報は、一つひとつが「点」にすぎません。理学療法士の真価が問われるのは、これらの**点を線で繋ぎ、患者さんの全体像を立体的に把握する「統合と解釈」**のプロセスです。

臨床推論を鍛える!統合と解釈の5ステップ

  1. 情報の整理と関連付け
    得られた全情報を書き出し、「股関節の硬さと腰痛」「大腿四頭筋の筋力低下と膝の不安定感」など、関連しそうなもの同士を結びつけます。
  2. 主要な問題点の特定
    患者さんの主訴(一番困っていること)に、最も影響を与えている根本的な機能障害を抽出します。
  3. 原因の推察
    「なぜその問題が起きているのか?」解剖学・運動学の知識を総動員して原因を推察します。(例:膝の痛みの原因が、実は股関節や足部の機能不全にある可能性など)
  4. 解決すべき優先順位付け
    複数の問題点の中から、患者さんのニーズや治療効果を考え、アプローチの優先順位を決めます。
  5. 具体的な治療目標とアプローチの立案
    問題点を解決するための具体的な目標(例:4週後までに階段昇降時の痛みを半減させる)と、それに向けた治療プログラム(運動療法、徒手療法など)を立案します。

【ケーススタディで実践】膝の痛みを訴える患者さんを評価してみよう

【患者情報】
主訴:歩行時と階段昇降時に右膝の内側が痛む。

問診:デスクワークで運動不足。学生時代にバスケで膝を痛めた既往あり。
【評価で得られた情報(点)】
視診:右膝の軽度O脚、内側広筋の萎縮あり。ROM:右膝屈曲時に軽度制限と疼痛あり。
MMT:右大腿四頭筋(特に内側広筋)MMT 4、右殿筋群MMT 3+。
特殊テスト:膝蓋骨圧迫テストで軽度疼痛。
【統合と解釈(点を線で結ぶ)】
これらの情報から、「O脚アライメント」「内側広筋・殿筋群の筋力低下」が複合的に膝関節内側への過剰なメカニカルストレスを生み出し、疼痛に繋がっている可能性が高い、と推測できる。
【治療アプローチの方向性】
殿筋群・内側広筋の選択的な筋力強化
O脚アライメントを修正するための運動指導
膝蓋骨のモビライゼーション
日常生活でのセルフケアや運動習慣の指導

このように、点で得た情報を線で結び、立体的に患者さんの状態を把握することが、真の「臨床力」に繋がるのです。

評価スキルを磨き続けるために|若手理学療法士へのメッセージ

評価は、一朝一夕で身につくものではありません。しかし、以下の姿勢を持ち続けることで、あなたの臨床力は確実に、そして着実に向上していきます。

  • 「なぜ?」を常に問い続ける探究心を持つ
  • 分からないことは積極的に先輩に質問し、フィードバックを素直に受け入れる
  • 多くの症例を経験し、試行錯誤を繰り返す
  • 解剖学、運動学、生理学などの基礎知識を定期的に復習する
  • 論文やセミナーで常に新しい知識を取り入れる
【新人PT向け】膝関節TKA術後のSOAP記録の書き方|具体例&ポイント解説
はじめに膝関節全置換術(TKA)は、変形性膝関節症の患者さんに多く行われる手術です。術後のリハビリは患者の回復を左右する重要なプロセスであり、理学療法士(PT)にとってはSOAP記録を正確に書くことが必須スキルです。本記事では、新人PTがつ...

まとめ|自信を持って患者さんと向き合うために

運動器疾患の評価は、理学療法士としての専門性を高める上で、最も面白く、やりがいのあるプロセスです。

  • 評価の全体像(問診→視診・触診→身体機能検査→統合と解釈)を理解する
  • 各フェーズで「押さえるべきポイント」を実践する
  • 得られた情報を「点」ではなく「線」で繋ぐ思考を訓練する

これらのステップを意識することで、あなたは確実に評価に自信を持ち、患者さんから「あなたに会えてよかった」と信頼される理学療法士へと成長できるはずです。

焦らず、一歩ずつ。あなたの臨床を応援しています!

タイトルとURLをコピーしました