はじめに:理学療法士として、このままでいいのか?
理学療法士として数年働くと、ふと感じることがあります。
「このまま定年まで臨床だけで本当にいいのかな?」
「将来、収入や働き方に不安があるけど、どうすればいいんだろう?」
「先輩たちを見て、自分の将来が想像できなくなってきた……」
このような漠然とした不安や違和感は、理学療法士として“次のステージ”に進むためのサインです。特に働き方の選択肢が広がってきている現代では、早めにキャリアについて考えることが非常に重要になっています。
この記事では、理学療法士としての「キャリア」の意味を再定義しながら、後悔しない選択のために必要な考え方・具体的なキャリアパス・実践ステップについて考えていきます。
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キャリア=出世じゃない。理学療法士にとっての「キャリア」とは?
「キャリア」と聞くと、多くの人が「昇進」「資格取得」「年収アップ」といったイメージを思い浮かべるかもしれません。しかし、それは“外的キャリア”にすぎません。
理学療法士にとってのキャリアとは、自分がどう生きたいか、どんな価値を提供していきたいか、そして何に喜びややりがいを感じるかという“内的キャリア”の側面がとても大切になります。

たとえば、患者さんの笑顔が何よりのモチベーションになる人もいれば、教育現場で後輩を育てることに生きがいを感じる人もいます。
また、「家族との時間を優先できる働き方をしたい」「収入を安定させて、老後も安心したい」といった生活スタイルから逆算してキャリアを考えることも、大切な視点です。
つまり、
キャリア=自分らしい働き方と人生の軌跡。誰かと同じでなくていい。
あなたにとっての「理想の理学療法士像」を描くことがキャリア設計の第一歩です。
理学療法士のキャリアパスは1つじゃない【7つの方向性を考える】
現在、多くの理学療法士が以下のような多様なキャリアパスを選択しています。ここでは、それぞれの選択肢の特徴やメリット・注意点を具体的に解説します。
① 臨床スペシャリスト
経験を積み、認定理学療法士・専門理学療法士などの資格を取得し、特定の疾患領域や施設で「臨床のプロフェッショナル」として活躍する道です。
例:整形外科リハに特化し、術後早期介入のスペシャリストに。
1. 専門性で現場に大きな影響を与えられる
- 難しい症例や重症例の対応、専門的な評価・治療技術を通じて、チームの中核的存在になれます。
- 他職種からの信頼も厚くなり、チーム医療におけるリーダーシップを発揮しやすいです。
2. 患者アウトカムに直接関われる
- 臨床現場に立ち続けることで、「よくなっていくプロセス」に手応えを感じやすく、やりがいも大きいです。
- 知識と技術が結果として患者に還元されることに、満足感と誇りを持てます。
3. 後輩育成・教育の中心になれる
- 症例検討会や技術指導などで後輩からの信頼が集まり、教育的役割を担いやすくなります。
- 教えることによって、自分自身の知識の整理・深化にもつながります。
4. 学会・研究発表の機会が増える
- 症例報告や技術的な発表を通して、施設外への影響力も高まります。
- 専門学会・認定制度などでの発信により、「臨床家としての地位」を築くことができます。
5. 認定制度によるキャリアの可視化
- 専門理学療法士や認定理学療法士などの資格を取得することで、自身のキャリアの価値が明文化され、転職や評価でも有利に働くことがあります。
1. 昇進・待遇に直結しない場合もある
- 管理職に比べると、スペシャリストとしての立場が明確に待遇に反映されない職場もあります。
- 「役職がつかない」「手当がつかない」といったケースも少なくありません。
2. 学び続ける姿勢が求められる
- 常に新しい知見・技術が求められるため、文献検索・学会参加・自己研鑽の時間と労力は欠かせません。
- 学習を怠ると、すぐに「スペシャリスト」としての信頼を失ってしまうリスクがあります。
3. 孤立するリスクがある
- 高度な知識や技術を持つがゆえに、「一人で抱え込む」「相談できる相手が少ない」などの状況に陥りやすいです。
- 組織文化によっては「出る杭」として扱われることも。
4. 臨床のみに偏るとキャリアが狭まる可能性
- 臨床スキルは強い武器ですが、マネジメントや研究の経験がないと、キャリアの幅が狭くなる可能性も。
- 生涯を通じたキャリア設計として、「臨床+教育」「臨床+研究」などの複合的な視点を持つことも重要です。
5. 組織によってはポジションが少ない
- スペシャリストという肩書が制度として整っていない職場もあり、明確な評価軸や役割が与えられないこともあります。
🔍 向いている人の特徴
- 臨床が何より好きで、現場で直接関わり続けたい人
- コツコツと自己研鑽を続けられる人
- 症例を深く掘り下げる探究心のある人
- 教えることや学び合うことが好きな人
- 専門性を武器に、他者への影響力を発揮したい人
② 管理職・マネジメント
主任・係長・課長・リハ科長など、組織の中でチームをまとめ、スタッフ教育や施設経営に関わる道です。
例:30代後半で課長に昇進し、人事評価や運営にも関与。
1. 組織への影響力を持てる
- 部署や施設全体の運営方針、スタッフ教育、制度改革などに関与でき、自分のビジョンを形にするチャンスがあります。
- チーム医療の質を高めたり、働きやすい環境を整えたりと、広い視点で貢献できます。
2. リーダーシップを発揮できる
- 後輩やスタッフの育成、チームビルディングなどを通して、人材育成のやりがいを感じられます。
- 自分が学んできたことや信念を、組織文化として根付かせることも可能です。
3. キャリアの幅が広がる
- 施設内のマネジメントだけでなく、地域包括ケア、経営、行政、教育などに関わるチャンスも出てきます。
- 管理者経験は、他の医療機関や介護施設、企業などに転職する際にも強みになります。
4. 報酬や待遇が上がる可能性がある
- 給与面や賞与において管理職手当がつき、臨床のみの職種よりも高くなる傾向があります。
- 勤務時間や裁量にも幅が出るケースがあり、自分なりの働き方を模索しやすい場面も。
5. 経営的視点や社会的視野が広がる
- 医療やリハビリを「ビジネス」や「社会貢献」の視点から捉える力がつきます。
- 病院経営・制度・予算管理・人事など、多方面の知識とスキルが身につきます。
1. 臨床からの距離が生まれる
- マネジメント業務が中心となり、患者と接する機会が大きく減ることも。
- 臨床の楽しさややりがいを重視していた人には物足りなさを感じる可能性があります。
2. 人間関係の悩みが増える
- 上司(経営層)と現場スタッフの板挟みになる場面も多く、調整役としてのストレスが大きいです。
- 部下への評価や指導など、対人スキルが問われる難しさも。
3. 成果が見えにくい
- 臨床のように「歩けるようになった」「退院できた」などの直接的な成果が得られにくく、達成感を得るのに時間がかかります。
- 「自分の貢献が見えにくい」と感じることも。
4. 業務量・責任が増す
- 会議、報告書、計画書、人事対応、クレーム処理など、雑務やトラブル対応が多く、残業も増えがちです。
- ミスが組織全体に影響するため、精神的なプレッシャーも大きくなります。
5. 専門スキルの継続的学習が必要
- 管理職になっても、制度改定・経営知識・人材育成・コンプライアンスなど、日々新しい知識が必要です。
- 「現場がわかる管理者」であり続けるために、現場感覚の維持や自己研鑽が求められます。
🔍 向いている人の特徴
- 周囲との調整や対人関係が得意
- 広い視野で物事を捉えられる
- 教える・育てることにやりがいを感じる
- 臨床だけでなく、組織や制度に興味がある
- ストレス耐性や責任感が強い

③ 教育・研究職
大学や専門学校の教員、または大学院に進学して研究職を目指すキャリアです。
例:臨床5年→大学院進学→養成校教員へ転職。
1. 知的好奇心を満たせる
- 専門性を深め、教育や研究を通じて「なぜ?」を追究できる環境です。
- 疑問を自らの研究で解明できるやりがいがあります。
2. 教育を通じた社会貢献
- 将来の医療人(理学療法士や作業療法士など)を育てる役割を担うため、自分の経験や考えを次世代に伝えられます。
- 学生の成長に関わる喜びや、人としての影響力を実感できます。
3. 働き方に一定の裁量がある
- 比較的自分でスケジュールを組み立てやすいです(特に大学教員)。
- 病院勤務に比べて夜勤などの不規則勤務がないのも利点。
4. 研究成果が形になる
- 学会発表、論文、教科書執筆などを通して、自分の知見が広く社会に貢献できます。
- 医療の進歩に貢献しているという実感も得られます。
5. キャリアの幅が広がる
- 教育・研究の経験は行政職、学会運営、研修講師など多方面で活かされます。
- 博士号を取得すれば、大学での昇進や海外での研究活動のチャンスも。
1. 競争が激しく、不安定な面もある
- 大学教員や研究職はポスト(職位)が限られ、非常勤や任期付きポジションも多いです。
- 安定した職を得るには業績(論文・学会発表・研究費獲得など)が求められます。
2. 教育・研究以外の業務が多い
- 授業以外に、会議、学生対応、事務仕事など「裏方」業務が多く、時間的余裕が少ない場合も。
- 「研究だけに集中したい」という理想とのギャップを感じやすいです。
3. 収入が臨床より低い・上がりにくい場合がある
- 専門学校や大学の教員は、初任給が臨床より低く設定されている場合があります。
- 昇給も緩やかで、副業や外部講師などで収入を補うケースも。
4. 臨床現場から離れるリスク
- 教育・研究に集中することで、臨床感覚が鈍る可能性も。
- 臨床とのバランスを意識的に取る必要があります。
5. 大学院進学は時間と経済的負担が大きい
- 働きながらの通学、学費の負担、家族との時間のバランスなど課題もあります。
- 博士課程まで進む場合、最短でも5年以上かかることも。
🔍 向いている人
- 専門分野を深く追究したい人
- 教えることにやりがいや楽しさを感じる人
- 論理的思考が得意で、コツコツ積み重ねができる人
- 将来的に教育・研究・執筆などで社会に貢献したい人
④ 起業・フリーランス
自費リハ、パーソナルトレーナー、オンラインリハビリ、セミナー講師など、独立して活動する道です。
例:訪問リハを辞め、自費リハビリ事業を開業。SNSで集客も。
1. 働き方の自由度が高い
- 場所や時間に縛られず、自分のライフスタイルに合わせた働き方が可能になります。
- 在宅リハビリ、オンライン指導、スポーツ分野、執筆、講師業など、多様な活動ができます。
2. 自分の価値観に合ったリハビリができる
- 保険制度や施設の方針に縛られず、「本当に患者に必要だと思うリハビリ」を追求できます。
- 自分の専門性や経験を活かし、オリジナルなサービスを提供可能。
3. 収入の上限を自分で決められる
- 働いた時間ではなく、「提供価値」に応じた報酬を得られるチャンスがあります。
- ブログ・SNS・講演・コンサル・教材販売など、複数の収入源を持てるのも魅力。
4. 理学療法士の新たな可能性を切り開ける
- 多くの人が保険内リハビリに閉じこもっている中で、先駆者的な立場になれます。
- 自由な発想で、社会のニーズに応える新しいサービスを創出できます。
5. 自己成長のスピードが速い
- 「すべて自分次第」の環境に身を置くことで、自己管理力・営業力・発信力などが一気に鍛えられます。
- 臨床力だけでなく、人間力・ビジネススキルも総合的に伸ばせます。
1. 安定した収入が保証されない
- 最初は顧客ゼロ・収入ゼロからのスタートになる場合もあります。
-保険診療ではなくなるため、集客・価格設定・継続利用など、ビジネスとしての戦略が必要。
2. “理学療法士”という肩書の信用が通用しにくい場面もある
- 保険制度外で活動する場合、「資格のある人=信頼される」わけではなく、実力や発信内容で信頼を得る必要があります。
- 世間的には「理学療法士って何ができるの?」という認知の壁も。
3. 医療・介護保険の制度外でのリハビリには制限がある
- 法的には「医療行為」の範囲や、理学療法士法の規定とのバランスに注意が必要。
- 「資格を活かしつつ、法的に問題ない範囲でサービス提供する」戦略が重要。
4. 孤独との戦いになることもある
- 組織のサポートや仲間がいない分、すべて自己責任。相談できる相手がいないと挫折しやすいです。
- 「モチベーション維持」「メンタルの安定」も自己管理能力に左右されます。
5. 多様なスキルが求められる
- 臨床スキルだけでなく、マーケティング・SNS運用・営業・法務・会計なども一人でこなす必要があります。
- 自分の得意・不得意を知り、必要に応じて外注・連携ができる柔軟性が必要。
🔍 向いている人の特徴
- 「型にハマらない働き方をしたい」と思っている人
- 自主的に学び、行動を起こせる人
- 発信力があり、人とのつながりを大事にできる人
- 収入よりも「自由さ」や「自分の価値観で働くこと」に魅力を感じる人
- リスクを取ってでも挑戦したい想いがある人
⑤ 企業就職・異業種転職
ヘルステック企業、医療機器メーカー、介護ソフト会社など、企業で働く理学療法士も増えています。
例:営業職として製品開発・顧客対応に携わる。
1. 視野が広がり、社会全体に貢献できる
- 医療現場だけでなく、健康経営・ヘルステック・介護予防事業・人材教育など幅広い分野で活躍可能。
- リハビリの専門性を活かしながら、「より多くの人にアプローチできる」仕事に関われます。
2. ワークライフバランスが改善しやすい
- 土日祝休み、残業少なめ、在宅勤務可など、働き方改革の進んだ職場も多くあります。
- 臨床のシフト制や体力勝負の仕事とは異なり、ライフステージに合わせた柔軟な働き方が可能。
3. 新しいスキル・知識が得られる
- 企画・営業・マーケティング・IT・データ分析など、これまで触れてこなかったスキルが身につきます。
- 生涯活用できる「汎用スキル(ポータブルスキル)」が習得できるのは大きな財産に。
4. キャリアの選択肢が広がる
- 企業内での昇進、他業種へのキャリアチェンジ、独立など、今後の道が大きく広がります。
- 「理学療法士免許を持っているビジネスパーソン」というユニークな価値が武器になります。
5. 「医療以外の世界」を知ることで、臨床に戻っても視点が変わる
- 一度外の世界を経験すると、「患者さん=生活者」という視点でリハビリを深く考えられるようになります。
- 将来、教育者や管理職を目指す際にも大きな強みになります。
1. 医療資格が直接的には活かせないケースもある
- 資格を「活かす」より、「バックグラウンド」として活用する形が多くなります。
- 例えば、営業職や企画職に就いた場合、「PTとして何ができるか」ではなく、「ビジネススキル」が問われます。
2. 年収が下がる可能性もある(特に未経験分野)
- 一般企業は「実績・スキル」に対して報酬が決まるため、臨床10年目でも異業種では新人扱いになることも。
- 逆に、スキルを磨けば昇給スピードは医療職より早い場合もあります。
3. 転職活動に戦略が必要
- 異業種転職は、自己PRの内容や応募書類の書き方が大きく変わります。
- 企業側は「なぜ医療職からうちに来たいのか」を重視するため、ストーリー作りが非常に重要。
4. 資格更新や理学療法士としての現場勘が薄れていく可能性
- 臨床現場を離れることで、理学療法士としての感覚・技術の低下に注意が必要。
5. 周囲の理解が得られにくいこともある
- 特に年配の同業者や職場では「なぜPTなのにやめるの?」「もったいない」と言われがち。
- 自分のキャリアビジョンをしっかり持ち、説明できるようにしておく必要があります。
🔍 向いている人の特徴
- 臨床以外のフィールドで社会に貢献したいと思っている人
- 新しい環境に飛び込むことを楽しめるタイプ
- コミュニケーション能力や柔軟な発想力がある人
- リハビリの枠にとらわれず、自分のスキルを広げたい人
- 将来的にマネジメントや企画職も視野に入れている人
⑥ パラレルキャリア(副業・複業)
本業+副業で、収入源や活動範囲を広げる働き方です。
例:臨床+Webライター、セミナー講師、note執筆など。
収入の多様化や、将来のキャリアの土台づくりに最適です。近年は「副業解禁」や「働き方改革」で、多くの理学療法士が実践しています。
1. 収入の柱を複数持てる
- 臨床収入+αで経済的な安定性が向上します。
- 将来の独立や転職に備えた“資金準備”や“経験値稼ぎ”にも。
例:臨床勤務+オンライン講座販売、ブログ運営、パーソナルトレーナー活動など
2. 新しいスキルや人脈が手に入る
- 執筆、SNS発信、商品開発、コンサルなど、医療現場では得られないスキルが身につく。
- 異業種や他職種とのつながりが増え、自分の視野が広がります。
3. “自分の名前”で価値を発揮できる
- 勤務先の看板ではなく、「あなた自身」に依頼が来るようになります。
- 将来の独立やブランディングにもつながります。
4. やりたいことに挑戦できる
- 臨床では叶えづらい「教育」「研究」「地域活動」「執筆」などに自由に挑戦できます。
- 好きなことを仕事にできる可能性も。
5. 働き方のリスク分散ができる
- 1つの職場に依存せず、状況に応じて比重を変えることが可能。
- 体調不良や職場の変化にも柔軟に対応できます。
1. 時間とエネルギーの配分が難しい
- 本業に支障が出ないよう、体調管理・時間管理が必須です。
- 「あれもこれも」で中途半端になるリスクも。
2. 勤務先の就業規則に注意が必要
- 公立病院や一部の法人では副業禁止・制限あり。
- 就業規則の確認と必要な申請を忘れずに。
3. 成果が出るまで時間がかかることも多い
- ブログやSNS発信などは、収益化までに数ヶ月~1年かかることが一般的。
- 「楽しみながら継続する」姿勢が大切です。
4. 周囲の理解が得られにくいことがある
- 特に保守的な職場では「副業=浮ついている」と見られることも。
- 公私をしっかり区別し、信頼を損なわない工夫が必要です。
5. 税金や確定申告などの管理が必要になる
- 一定の収入を超えると、開業届・青色申告・住民税の申告などが発生。
- 税務知識や会計アプリの導入が必要になることも。
👤 向いている人の特徴
- 自分の可能性を広げたいという意欲がある
- 新しいことにチャレンジするのが好き
- 時間管理・セルフマネジメントができる
- 「誰かの役に立ちたい」という想いがある
- 長期的にコツコツ継続できるタイプ
⑦ 海外・国際キャリア
語学力や国際経験を活かし、海外で働いたり、医療支援活動に参加したりする道です。
例:WHOやNGOと連携し、発展途上国でリハビリ支援。
英語力、資格の書き換え、ビザ取得など準備は大変ですが、グローバルな視野と経験は他では得難い財産になります。
1. 高度な臨床スキルや知見が得られる
- 多くの国では理学療法士の役割や裁量が日本よりも大きい。
- 例:初期評価から運動処方までPTが独自に実施
- エビデンスに基づいた実践(EBP)が強く求められ、学びが多い。
2. 世界基準の資格・経験が得られる
- 米国のDPT(Doctor of Physical Therapy)や、オーストラリア、カナダの理学療法資格は国際的な評価が高い。
- 日本帰国後もキャリアの差別化になる。
3. 文化・多様性への理解が深まる
- 異なる価値観・文化背景を持つ患者と接することで、本質的なコミュニケーション力が鍛えられる。
- 世界で活躍する人材に求められる「文化的感受性」も自然と身につく。
4. 英語(または現地語)のスキルが飛躍的に向上
- 医療英語、専門用語、プレゼン、文献読解力などが鍛えられる。
- 将来的に国際学会での発表や研究活動、海外文献の情報収集にも有利。
5. 人生・働き方の選択肢が広がる
- 海外永住や国際的なネットワークづくり、家族の教育環境など、生活の質そのものを高めるキャリア選択が可能。
1. 国家資格の取得が必要(容易ではない)
- 日本の理学療法士資格がそのままでは通用しない国が多い。
- 国ごとにライセンス要件(学歴・試験・実務経験・英語力)が異なる。
例)アメリカ:DPT+NPTE合格+TOEFLスコア+ビザ取得
2. 語学力(特に医療英語)は必須
- 日常会話レベルではなく、医療面接やカンファレンスでの会話が求められる。
- IELTSやTOEFLなどの高スコアが求められる国も。
3. ビザや滞在資格のハードルが高い
- ワーキングホリデーや学生ビザの期間制限、就労ビザの取得難易度など、法的な壁に注意。
- 就職が内定してもビザが出なければ働けないというケースも。
4. 就職先探しやネットワーク構築に苦労しやすい
- 海外では「コネ」「推薦」が重視される傾向が強く、渡航前からの下準備・人脈づくりが重要。
- 日本の求人サイトでは見つけられないことも。
5. 生活や文化の適応にストレスがかかることも
- 医療システム、労働慣習、宗教的背景などが異なるため、価値観のギャップやカルチャーショックもありうる。
- 家族帯同の場合は教育・医療・生活費の負担も検討が必要。

理学療法士の将来性を考える「5つの視点」
理学療法士のキャリアを長期的に考えるには、以下の5つの視点が役立ちます。
- 自分の「やりがいの源泉」は何か?
患者との関わり?教育?技術の追求?自分が一番ワクワクする瞬間を思い出しましょう。 - 「働き方の理想」は?
時短?リモート?週3勤務?年収アップ?理想のライフスタイルから逆算することも重要です。 - 現在の職場で得られるスキルは将来役立つか?
専門性、コミュニケーション力、マネジメント力など、次のキャリアへどうつながるかを見極めましょう。 - 10年後、どんな理学療法士でありたいか?
理想のロールモデルを具体的に設定し、それに近づくステップを逆算すると行動しやすくなります。 - 社会の変化に、自分のキャリアが適応できるか?
少子高齢化、医療費削減、AIの発展…。変化に柔軟に対応できる力が、将来を左右します。
後悔しないキャリア選択のために今できること
✅ 本気の情報収集を始めよう
SNSやYouTubeだけでなく、書籍や有料note、セミナー・勉強会に参加して、幅広い視点を取り入れましょう。「今いる場所」以外の価値観を知ることが、視野を広げてくれます。
✅ 自己分析を深めよう
価値観・興味・強み・苦手なこと・大切にしたいことなど、自分を深く知ることで、ミスマッチの少ないキャリア選択が可能になります。
✅ 小さな挑戦を積み重ねよう
いきなり転職や起業をする必要はありません。ブログを書いてみる、研修に出る、異動希望を出すなど、「今できる1つ」を行動に移すことで、大きな転機につながることがあります。
まとめ|「理学療法士としてどう生きたいか?」がキャリアの起点になる
理学療法士のキャリアに、正解はありません。
管理職になっても、フリーランスでも、研究職でも――
それぞれの道に、挑戦と学びがあり、後悔しないためのポイントは「自分がどう生きたいか」を大切にすることです。
キャリアは“積み上げ”ではなく、“選び直し”の連続です。
どんな選択をしても、あなたの中にしかない価値がある。
それを信じて、一歩を踏み出してみませんか?