新人理学療法士向け】深部感覚障害の理学療法——評価とアプローチの実践ガイド

理学療法士

はじめに

理学療法士として臨床に出ると、「深部感覚障害」を持つ患者さんに出会うことがあります。
たとえば、 「目を閉じるとバランスを崩す」、「歩くときに足元ばかり見ている」、「階段昇降が極端に不安定」 などの症状を訴える患者さんです。

しかし、新人理学療法士の方の中には、
✅ そもそも深部感覚障害って何?
✅ どう評価すればいいの?
✅ どんなリハビリをすれば改善するの?
といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか?

かず
かず

この記事では、深部感覚障害の基礎知識から評価・アプローチ方法までを、最新の文献をもとに詳しく解説 します。
「明日から臨床で使える実践的な知識」を学んでいきましょう!

1.深部感覚とは?——その役割と障害の影響

1-1. 深部感覚とは?

深部感覚(固有感覚) は、 筋・関節・腱に存在する感覚受容器からの情報を脳に伝える機能 です。
この情報をもとに、私たちは 無意識に姿勢を調整したり、運動の強さや速さをコントロール しています。

1-2. 深部感覚障害の原因

深部感覚障害は、以下のような疾患によって引き起こされます。
• 脳卒中(脳梗塞・脳出血):大脳や視床の損傷による感覚情報の処理障害
• 脊髄損傷:後索路(深部感覚を伝える経路)の障害
• 末梢神経障害(糖尿病性ニューロパチーなど):末梢神経の感覚入力低下
• ギラン・バレー症候群、多発性硬化症(MS):神経伝導の障害

1-3. 深部感覚障害が及ぼす影響

深部感覚が障害されると、以下のような運動機能の問題が生じます。

✅ 関節の位置覚低下 → 目を閉じると自分の手足の位置が分からない
✅ バランス障害 → 視覚情報なしでは立っているのが不安定
✅ 感覚性運動失調 → 動作がぎこちなくなる(特に視覚を使えない場面)
✅ 歩行障害 → 足元ばかり見ないと歩けない・階段の上り下りが困難

このような症状を適切に評価し、理学療法で改善を目指していくことが大切です。

2.深部感覚障害の評価方法

深部感覚障害の評価では、静的な感覚検査だけでなく、実際の動作を分析することが重要 です。

2-1. 静的評価(ベッドサイドでの感覚検査)

✅ 関節位置覚テスト:
他動的に関節を動かし、「今どの方向に動いたか?」を答えてもらう。

✅ 振動覚テスト(音叉テスト):
音叉(128Hz)を骨隆起部に当て、振動を感じるか確認する。

✅ 閉眼下での触覚・圧覚テスト:
目を閉じた状態で、皮膚に軽く触れたり、圧をかけたりして感覚をチェックする。

2-2. 動作評価(日常生活への影響をチェック)

✅ Rombergテスト(閉眼立位テスト):
開眼→閉眼で立位バランスがどれくらい変化するかを確認する。

✅ 歩行分析:
深部感覚が低下すると 足元を過剰に見ながら歩行する 傾向がある。

✅ 段差・階段昇降テスト:
視覚に頼らずに足を正確に置けるかチェックする。

3.深部感覚障害に対する理学療法アプローチ

3-1. 代償アプローチ(視覚・触覚を活用)
• 鏡を使った動作確認(関節の動きを視覚的に確認)
• 足底刺激(凸凹のマットを使う、裸足で歩く)

3-2. 感覚入力を高めるトレーニング
• 抵抗運動(徒手抵抗やセラバンドを使い、関節位置覚を高める)
• バランス練習(不安定な床での立位や片脚立ち)

3-3. 段階的なバランストレーニング
1. 視覚を活用(鏡・モニター)
2. 視覚に頼らずバランスを取る練習
3. 日常生活での応用(階段昇降・屋外歩行)

ポイント!
患者の状態に応じて、「代償戦略」と「感覚再教育」をバランスよく組み合わせることが重要!

  1. まとめ—新人理学療法士が押さえておくべきポイント

✅ 深部感覚障害は、姿勢制御や運動調整に大きく影響を与える
✅ 評価は静的テストだけでなく、動作分析も含めて実施する
✅ 視覚フィードバックを活用したリハビリが有効
✅ 感覚入力を強化しながら、バランス能力を向上させる

深部感覚障害を理解し、適切な評価とリハビリを実践することで、患者さんの 「安全な歩行・日常生活動作」 を支えることができます。
新人理学療法士の皆さんも、ぜひ臨床で活かしてみてください!

【参考文献】


• 大沼 俊博・渡邊 裕文 (2021)「深部感覚障害を有する患者への理学療法評価と理学療法の考え方」
• 山本 吉則・百崎 良 (2022)「深部感覚障害に対する理学療法アプローチ」
• 堀越 一孝 (2023)「深部感覚性運動失調患者へのアプローチ」


今後も、リアルタイムで私が勉強したこと、「臨床で役立つような情報」 を発信していきます。

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