扁平足の評価と理学療法
保存療法から術後リハまで
体系的に整理する
新人・若手PTが押さえておきたいエビデンスベースの臨床知識
「先生、私って扁平足なんですが、なにかいい運動はありますか?」——外来や病棟でこう聞かれたとき、自信を持って答えられますか?扁平足はありふれた足部変形ですが、小児から成人まで対象が広く、術後リハを担当することもあるため、体系的に整理しておくことが重要です。この記事では新人・若手PTが知っておくべきポイントをエビデンスとともにまとめました。
扁平足と一口に言っても、対象年齢・原因・変形の固さによってアプローチは全く異なります。まずは大きく「小児」と「成人」に分けて整理しましょう。
小児の扁平足
幼児期に多い柔軟性扁平足は、荷重時に内側縦アーチが消失しますが、非荷重ではアーチが再形成されるのが特徴です。
- 疼痛を伴う場合
- 剛性扁平足(距骨下関節などの骨性連結が疑われる)
- 神経疾患や外傷後の扁平足
成人の扁平足(AAFD)
成人に発症する代表が後脛骨筋腱機能不全症(AAFD:Adult Acquired Flatfoot Deformity)です。後脛骨筋腱の変性・断裂が進行することで内側縦アーチが徐々に崩壊し、疼痛・歩行障害・変形の進行をきたします。無症状で経過することは少なく、適切な評価と介入が必要です。
“`① 荷重位での観察(必須)
| 観察項目 | 所見の意味 |
|---|---|
| 内側縦アーチの消失 | 扁平足の直接所見 |
| 踵骨外反(外側偏位) | 後脛骨筋機能低下のサイン |
| Too many toes sign(背面から外側の趾が多く見える) | 前足部外転変形を示す |
② 機能テスト
後脛骨筋機能の最重要テストです。正常では踵が内反しながら十分に挙上できます。踵上げができない・踵が外反したままの場合は後脛骨筋の機能不全を疑います。疼痛や疲労感で遂行できない場合も機能不全のサインです。
足関節背屈制限の確認も重要です。扁平足にはアキレス腱・腓腹筋の短縮を伴うことが多く、背屈制限があると変形の進行や術後矯正が困難になります。Weight-bearing lunge test などで評価しましょう。
“`成人扁平足の治療選択はStage分類に基づきます。担当患者のStageを理解することで、治療目標・介入内容・術後の見通しが明確になります。
| Stage | 病態 | 特徴 |
|---|---|---|
| I | 後脛骨筋腱炎(変形なし) | レントゲン正常、腱周囲の疼痛・腫脹 |
| IIa | 可動性扁平足(前足内反) | 後足外反・アーチ低下。Heel raise 可能 |
| IIb | 可動性扁平足(前足外転あり) | Too many toes sign 陽性。変形進行 |
| III | 剛性扁平足 | 距骨下・距舟関節の関節炎。後足固定 |
| IV | 足関節まで進行 | 三角靱帯損傷・足関節への距骨傾斜 |
装具療法
| 種類 | 特徴 | 適応目安 |
|---|---|---|
| 既製型インソール | 低コスト(数千〜1万円程度) | 軽度症状、試験的使用 |
| カスタムメイド型 | 足型に合わせた設計(数万円) | 中等度以上、変形進行例 |
| アンクルブレース(Arizona等) | 足関節まで支持 | 進行した可動性扁平足 |
- 小児の無症状扁平足:装具の有効性は証明されていない
- 疼痛がある小児・成人:既製型とカスタム型の効果差は有意でないと報告
- 成人の足底板:疼痛改善のエビデンス自体が不足
「作れば必ず改善する」ではなく、試みとして使用し、効果を評価しながら継続・変更を判断する姿勢が重要です。耐用年数の目安は約1年です。
運動療法
目標は内側縦アーチを支持する筋群の機能回復と柔軟性の改善です。
- 後脛骨筋強化:タオルを用いた足部内返し、Theraband内返し、段差踵上げ(両脚→片脚)
- Short Foot Exercise:足趾で足底を短くする動作。短母趾外転筋など内在筋を選択的に活性化。裸足または薄底靴での実施が推奨
- アキレス腱・腓腹筋ストレッチ:Drop-down stretch、膝伸展位と膝屈曲位の両方を実施
- バランス・体幹トレーニング:片脚立ち、ペルビックブリッジなど
手術は保存療法を6ヶ月以上継続しても改善しない疼痛例や、変形が進行するStage II以上に検討されます。術式の目的と合併症を知ることは術後リハの安全な実施に直結します。
| 術式 | 目的 | PTとして知るべき注意点 |
|---|---|---|
| 腱移行術(FDL移行) | FDLを舟状骨へ移行し後脛骨筋機能を補う | 術後3ヶ月まで強い抵抗運動は禁忌 |
| 踵骨内側移動骨切り術(MDCO) | 踵骨を内側へスライドし後足外反を矯正 | 創感染・神経障害・ボルトによる足底痛に注意 |
| 踵骨外側柱延長術(Evans) | 前足部外転(Stage IIb)の矯正 | 移植骨の非癒合・踵骨障害のリスク |
| 関節固定術(Stage III以上) | 二〜三関節の固定 | 隣接関節症・非癒合のリスクあり |
冷却・挙上・包帯管理が中心
関節可動域維持(患部外)、上肢・体幹のコンディション維持
足関節可動域訓練、筋萎縮予防
※腱移行術の場合、術後3ヶ月まで強い抵抗は禁忌
歩行訓練・バランス訓練本格化
段差・傾斜など応用的な歩行訓練
スポーツ・労作活動への段階的復帰
↓ 改善なし
→ 専門医紹介・手術検討
↓ 改善なし(6ヶ月以上)
↓ 重症度評価(Myerson Stage)
Stage I → 保存療法継続
Stage II → 腱移行+骨切り術を検討
Stage III以上 → 関節固定術を検討
扁平足は「ありふれた疾患」だからこそ、知識の整理が臨床力の差になります。担当患者を前にしたとき「何を評価して、何をすべきか」が明確になれば、自信を持って介入できます。
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