はじめに
最近、理学療法士の更衣室や休憩室、そしてSNSのタイムラインに、ある種の「ざわつき」が広がっているのを感じませんか?
その正体は、2026年の診療報酬改定案です。
• 「離床なきリハビリは減算」
• 「早期リハ加算の期間短縮(30日→14日)」
• 「365日リハ体制の義務化(急性期)」
次々と突きつけられる数字や条件に、「また現場が厳しくなる」「結局は点数のためか」と溜息をつきたくなる気持ち、本当によく分かります。私自身、一人の現場PTとして不安にならないと言えば嘘になります。
しかし、今こそ私たちは自分自身に問いかける必要があります。
「私たちは、加算を取るための『加算療法士』になりたかったのでしょうか?」
制度の数字に「自分」を奪われていないか
正直に言いましょう。私たち一介のPTが、国の制度設計や病院経営のすべてを背負う必要はありません。もちろん制度を知ることは重要ですが、そこに一喜一憂しすぎて、臨床の質が二の次になってしまうのは本末転倒です。
私たちが毎日向き合っているのは、制度という「紙」ではなく、目の前にいる「人」です。
• 痛みで顔をしかめる人
• 「もう歩けないかもしれない」と涙を流す人
• 住み慣れた家に帰りたいと願う人
制度が変わっても、この「一人ひとりの苦悩」が変わることはありません。
「離床なきリハは減算」というメッセージの本質
今回の改定で象徴的な「離床なきリハビリは減算」という言葉。現場への締め付けと感じるかもしれませんが、視点を変えてみてください。
本来、離床は何のために行うものでしょうか?
• 点数のため?
• 監査をクリアするため?
違いますよね。「廃用を防ぎ、その人の生活を取り戻すため」。これこそが、私たちがリハビリテーションの専門職として大切にしてきた信念のはずです。
国が言いたいのは「ベッド上だけで完結する形骸化したリハビリを卒業しよう」ということ。制度と臨床は、本来は敵同士ではないはずです。主語を「点数」から「患者さん」に戻せば、やるべきことは自ずと見えてきます。
制度に怯えるより、自分の「停滞」を恐れたい
どんなに時代が変わり、AIが進化し、診療報酬が改定されても、最後に残るのは**「あなたに診てもらえてよかった」と言われる力**です。
• わずかな変化を見逃さない評価力
• 安心感を与える触診の技術
• 患者さんの生活を想像する力
これらのスキルは、制度によって与えられるものでも、減らされるものでもありません。
一番怖いのは、制度が厳しくなることではありません。「制度のせい」にして、自分を磨くことを止めてしまうこと。 つまり、あなた自身の成長が止まることなのです。
明日からできる、本質的な3つのアクション
大きな変革を前に立ち止まる必要はありません。明日から、たった3つのことだけ意識してみませんか?
1. 目の前の患者さんを「単位」で呼ばない
1単位、2単位という数字の裏にある「人生」に目を向けましょう。カルテの数字ではなく、患者さんの表情の硬さを読み取る1分を大切にすることから始まります。
2. 「なぜ?」をあと1回だけ掘り下げる
「なぜ今日、この人は立てないのか?」。制度上のルーチンで動くのではなく、一歩踏み込んだアセスメントを習慣にしましょう。その思考の積み重ねが、あなたを「替えの効かないPT」にします。
3. 一つだけでいい、評価の精度を上げる
MITS(徒手筋力検査)でも、ROM(関節可動域)でも、動作分析でも構いません。昨日より今日、ほんの少しだけ正確に、丁寧に。その微差が数年後、大きな実力差となります。
おわりに:それでも私は臨床に立つ
加算があっても、なくても。減算と言われても、言われなくても。
ベッドサイドで、一人の人間と真剣に向き合う。この仕事の本質は、2026年になっても、その先も、決して変わりません。
「減算」に怯えて縮こまるのではなく、**「自分の成長が止まっていないか」**に怯えながら、今日も誇りを持って患者さんの隣に立ち続けましょう。
同じ志を持つ理学療法士の皆さんと、より良いリハビリを追求していけることを願っています。
