はじめに|その休日リハ、本当に“患者のため”になっていますか?
「この患者さん、今日は休日リハビリやるべきだと思いますか?」
そんな問いが、ある朝のカンファレンスでふと投げかけられました。空気が一瞬止まり、誰もが少しだけ言葉を選ぶような間が生まれたのを覚えています。
リハビリが制度として“あるべき姿”に従って提供されている一方で、「それは本当に患者のためになっているのか?」という感覚的な違和感を、私たちは心のどこかで抱いているのかもしれません。
今や休日リハビリは多くの医療機関で「当たり前」となりつつあります。ですが、その「当たり前」に違和感を覚える理学療法士が増えていることも事実です。
本記事では、私自身が現場で感じた“モヤモヤ”に向き合いながら、「休日リハは本当に必要なのか?」というところを改めて考察していきます。
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休日リハビリの現状と制度上の背景
近年、急性期・回復期を中心に、休日を含む365日リハビリ提供体制が急速に広がっています。その背景には、診療報酬改定での加算制度や、早期離床・機能維持への効果が明確になってきたことが大きく影響しています。
特に急性期病院では「48時間以内の離床が重要」とされ、土日でもリハビリを行うことが標準的な対応となっています。一方で、「毎日リハがあること自体が目的化してしまっていないか?」という視点も、見落としてはいけません。
制度の変化や経営的な要請も理解しつつ、私たちは常に「それが今この患者さんに本当に必要か?」という臨床的判断を求められています。
臨床現場で感じる“モヤモヤ”の正体とは?
休日リハに対して感じる“モヤモヤ”は、理学療法士として患者と真摯に向き合うからこそ生まれるものです。私もこれまで、数多くの休日リハを担当してきましたが、ふとした瞬間に違和感を覚える場面が何度もありました。
たとえばこんな場面:
- 「今日は明らかに疲れが強いけど、予定だからやるか…」
- 「本人は乗り気じゃないけど、スケジュール上やらざるを得ない」
- 「リハは提供しているけど、心ここにあらずで全く集中できていない」
- 「意識レベルが低くて全身状態も不安定だけど、今日のリハビリは休みにした方がいいんじゃ…」
こうした状況は、「何のためにやるのか?」という目的が曖昧なまま、リハビリが“作業”になってしまっている状態です。
制度に従うことが悪いわけではありませんが、“患者の今”を丁寧に見つめ直す視点が欠けてしまうことこそ問題ではないでしょうか。
休日リハビリの本来の目的とは?
制度や業務の流れに乗ってしまうと、私たちはつい「やること自体が目的」になってしまいがちです。ですが、本来の休日リハビリの目的は、患者の**状態や回復の段階に応じて“必要だからやる”**という視点にあるべきです。
急性期の場合:
- 廃用を防ぎ、呼吸・循環系の機能維持を図る
- せん妄や意識低下の予防
- 二次合併症のリスク回避など、「寝かせない医療」の一環としての役割が大きい
回復期では:
- 限られた入院期間の中で、最大限の機能回復を目指す
- 家庭復帰・社会復帰に向けた生活動作の獲得が焦点になる
- モチベーション維持とリズム作りにも貢献する
生活期・在宅では:
- 活動量・生活リズムの維持
- 社会的孤立の防止
- 在宅での役割回復やQOLの向上を支えるものとなる
このように、フェーズごとに“必要性の根拠”が異なることを再確認することが、提供判断の精度を高める第一歩になります。
患者にとっての“休日リハ”の意味を見つめ直す
患者さんにとって、休日リハビリはどんな意味を持っているのでしょうか?
それは、私たちが思っている以上に心理的・社会的な価値を伴っていることがあります。
- 「日曜日でもリハがあると、“頑張ろう”と思える」
- 「今日は家族が来るから、それまでに歩けるようになっていたい」
- 「病院でも変わらず関わってもらえると安心できる」
こうした声から見えてくるのは、「リハ=訓練」だけではなく、“関わりそのもの”が支えになっているという事実です。
ですが、それが「本人の気持ちを無視して、やらせる」方向に傾いてしまえば、逆効果になりかねません。リハビリの“質”は、納得感と納得度の上に成り立つのです。
違和感を見逃さない。“在り方”のズレに気づく力
違和感を抱くことは、臨床感覚がしっかり働いている証拠です。
制度や習慣に従うだけでなく、「自分の目で見て、心で感じたことを信じる力」が今、理学療法士に求められているのではないでしょうか。
- 「本当にこの患者さんに必要か?」
- 「今日である意味はあるか?」
- 「本人が納得し、前向きに取り組めているか?」
こうした問いを持ち続けることが、制度に従いながらも患者中心の医療を実現するための“倫理的感性”になります。
本質的な問い:「このリハは、誰のために、なぜ行うのか?」
休日リハビリに限らず、私たちが提供するリハビリには、常に**「誰のために」「なぜ行うのか」**という問いがついて回ります。
もし、「点数のため」「スケジュールのため」だけになってしまっていたら、それは患者にとって本当に有益な介入と言えるでしょうか。
ときに、“やらない”という判断こそがベストの選択であることもあります。
迷ったときには立ち止まり、自分の中にある違和感と向き合ってみることが大切です。
おわりに|違和感を無視せず、判断する勇気を
休日リハビリは、制度や評価の仕組み上、非常に重要な位置づけにあります。
だからこそ、私たちは**「やること前提」ではなく、「必要だからやる」という視点を忘れないようにしたいものです。**
違和感を抱いたなら、それは“感じる力”がある証拠。
理学療法士として、“流されない臨床判断”と“患者中心のまなざし”を持ち続けることが、信頼される専門職への第一歩です。
最後に|現場で迷った時に使える「休日リハ判断チェックリスト」
記事の最後に、**実際に迷ったときに役立つ“簡易チェックリスト”**を作ってみました。
☑ 今日のリハには、明確な目的があるか?
☑ 本人の意思や気持ちは確認されているか?
☑ 体調・疲労などに無理はないか?
☑ チームとして納得できる判断か?
☑ 今日やることで、回復にプラスがあると判断できるか?
こうした視点が、休日リハビリの質を高め、“ただ提供する”から“意味ある介入”へと進化させる鍵になります。
💬 あなたの声も聞かせてください!
「うちの病院ではこうしてるよ」「私はこう判断してる」など、
ぜひあなたの現場での気づきや考えも、SNSやコメントで共有してもらえると嬉しいです。
このテーマは、もっと多くの理学療法士と対話していく価値があると、私は信じています。