他人からの評価って気になりますよね
「患者さんの期待に応えられているだろうか…」
「カンファレンスで医師の指摘に、うまく反論できなかった…」
「先輩のやり方と違うけど、自分のアプローチは本当に正しいのだろうか…」
毎日、患者さんのために全力で向き合っている理学療法士(PT)のあなた。その真面目さゆえに、患者さん、ご家族、医師、先輩、同僚など、周りからの評価や視線が気になり、自信をなくしていませんか?
高い専門性が求められる職場で、プレッシャーを感じるのは当然のことです。しかし、他人の目に振り回されていては、あなたの持つ本来の力は発揮されません。
この記事では、周りの評価に一喜一憂せず、理学療法士としての「自分軸」を確立し、自信を持って臨床に取り組むための7つのステップについてお話ししていきます。
この記事をきっかけに、心が少し軽くなり、明日からの臨床に前向きな気持ちで臨める助けとなれば幸いです。

ステップ1:自分の「PTとしての価値観」を明確にする
まず、あなたが「どんな理学療法士になりたいのか」という原点を掘り下げましょう。これは、あなたの臨床における羅針盤(コンパス)になります。
- あなたがリハビリで最も大切にしていることは何ですか?
(例:痛みの軽減、ADLの自立、社会復帰、患者さんの笑顔) - あなたの得意なこと、好きな分野は何ですか?
(例:徒手療法、運動連鎖の分析、患者さんとのコミュニケーション) - 最終的に、患者さんにどうなってほしいと願っていますか?
これらを書き出すことで、「なぜ自分はこの仕事を選んだのか」という“臨床理念”が明確になります。この理念があれば、他人の意見に触れたときも、「自分の価値観と合っているか?」という基準で冷静に判断できるようになります。
ステップ2:臨床現場での「批判」に左右されない練習をする
医師からの指摘、先輩からの指導、患者さんからの不満の声…。臨床現場では、様々な「批判」に直面します。それに心を揺さぶられないための練習をしましょう。
批判を受けたとき、まずは一呼吸おいて、「それは感情的な意見か、事実に基づくフィードバックか?」を切り分けて考えます。
【具体例】
医師から「もっと早く離床を進められないのか」と言われた場合。
- NGな反応: 「自分のやり方が否定された…」と落ち込む。
- OKな反応: 「なぜ医師は早期離床を急いでいるのだろう?(合併症予防?転院調整?)」と考え、リスク管理や現状の課題を整理した上で、「〇〇というリスクがあるため、現在は△△という方法で進めています。離床に向けては××という条件がクリアできれば可能だと考えています」と、専門家として根拠に基づいた意見を伝える練習をしましょう。
ステップ3:自分の「臨床判断」を信じて行動する
他人の目を気にするあまり、「先輩と同じやり方じゃないと不安」「文献通りのアプローチをしないと…」と、自分の判断に自信が持てなくなっていませんか?
もちろん、エビデンスや基本は重要です。しかし、目の前の患者さんは一人ひとり違います。あなたがアセスメントと評価を通して導き出した「この患者さんには、このアプローチが最適だ」という臨床判断を信じましょう。
その判断の背景には、あなたの学びと経験が詰まっています。カンファレンスやチーム回診では、「私は〇〇という評価結果から、△△と考えます」と、自信を持って発言することが、他職種からの信頼にも繋がります。
ステップ4:「フィードバック」を成長の糧にする
「批判」という言葉を「成長のためのフィードバック」と捉え直してみましょう。指摘やクレームは、自分一人では気づけなかった視点や課題を教えてくれる貴重な機会です。
【具体例】
患者さんから「リハビリがいつも同じで、良くなっている気がしない」と言われた場合。
- NGな反応: 「一生懸命やっているのに…」と傷つく。
- OKな反応: 「効果を実感できていないのですね。伝え方が悪かったかもしれません」と一旦受け止める。そして、「なぜ患者さんはそう感じたのか?(目標設定の共有不足?効果測定のフィードバック不足?)」を分析し、次回の介入で説明の仕方やプログラムの提示方法を改善しましょう。これはあなたのコミュニケーションスキルを格段に向上させます。
ステップ5:患者さんの人生という「長期的な視点」を持つ
日々のROM(関節可動域)の数値やMMT(徒手筋力テスト)の結果に一喜一憂していませんか?
もちろん短期的な目標達成は大切ですが、私たちの仕事は、患者さんの退院後の生活、そしてその先の人生を見据えることです。
短期的な機能回復が停滞しているように見えても、患者さんの意欲を引き出したり、ご家族との関係性を築いたりと、目に見えない部分で大きな前進をしていることもあります。短期的な評価に固執せず、患者さんの人生という長いスパンで自分の仕事の価値を捉えましょう。
ステップ6:理学療法士としての「自分の個性」を大切にする
「あの先輩は手技がすごい」「同期は学会発表で活躍している」…他人と比べて焦る必要はありません。あなたには、あなただけの強みがあります。
- 患者さんの心を解きほぐすコミュニケーション能力
- 複雑な動作を的確に分析する観察眼
- 地道なデータ収集や資料作成が得意な探究心
これら全てが、理学療法士としての立派な個性であり、才能です。全員が同じスーパーPTになる必要はありません。自分の得意分野を磨き、認定理学療法士を目指したり、地域の介護予防教室で活躍したりと、あなたらしいキャリアを築いていきましょう。
ステップ7:多職種連携という「最強のコミュニケーション」を大切にする
他人の目が気になるのは、孤独に戦っているからかもしれません。しかし、あなたは一人ではありません。医師、看護師、OT、ST、ソーシャルワーカーなど、各分野の専門家がチームにいます。
意見が対立したときこそ、チャンスです。相手の専門性をリスペクトし、「なぜそう考えるのか?」を真摯に聞きましょう。そして、PTの視点から「身体機能の観点では、このようなリスクと可能性があります」と、建設的な意見交換を心がけてください。
異なる視点が交わることで、一人ではたどり着けなかった、より良いゴールが見えてきます。
まとめ
他人の評価に振り回されず、自分軸で働くための7つのステップを振り返りましょう。
- 自分の「PTとしての価値観」を明確にする
- 臨床現場での「批判」に左右されない練習をする
- 自分の「臨床判断」を信じて行動する
- 「フィードバック」を成長の糧にする
- 患者さんの人生という「長期的な視点」を持つ
- 理学療法士としての「自分の個性」を大切にする
- 多職種連携という「最強のコミュニケーション」を大切にする
他人の目が気になるのは、あなたがそれだけ仕事に真剣で、患者さんに対して誠実である証拠です。その気持ちを大切にしながら、今回ご紹介したステップを、明日からの臨床で一つでも意識してみてください。
あなたの心が少しでも軽くなり、理学療法士という素晴らしい仕事に、改めて誇りを持てるようになることを願っています。
