「リハビリ=点数?」単位数で評価される現場に、理学療法士として思うこと

日記

■ はじめに:誰もが感じている“でも言えない”違和感

今のリハビリの臨床現場にいると、毎日のように耳にします。

「この呼吸器の患者さん、加算切れたから1単位だね。」
「同じ廃用リハビリなのに、症例ごとに単位数が違うけど?それが問題だと思ってるよ。」
「脳血管リハビリだから毎日入ろうか。あ、がんリハは週に2回までの介入ね。」
「もっと効率よく介入して、数字を伸ばさないと」
「18単位だから定時で終わってね。」

他の病院でも同じような事を耳にした方もいるのではないでしょうか。
でも、そうした言葉の裏側にある空気――「単位数=その人の価値・努力、リハビリの必要性」という見方に、僕はどうしても納得できません。

理学療法士として、あなたはどう思いますか?

数字を稼げばそれでいいのか?
点数にならない“意味のある関わり”は無視されていいのか?
患者さんの状態を無視してでも、単位数(算定点数)を最優先するのか?

この記事では、「単位数ばかりが評価される現場」に対するリアルな違和感を言葉にしてみました。

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■ 単位数にばらつきがあるのは、当然であり、むしろ健全

まず大前提として、「理学療法士ごと(症例ごと)に単位数に差があるのは問題だ」という見方には違和感しかありません。

なぜなら、患者さんは“均一”ではないからです。
担当する患者の状態、病期、意識レベル、バイタルの安定性、精神面の負担――どれを取っても、まったく違います。
• ベッド上安静、重症、昏迷、せん妄、拒否が強い…
こういった方には、1単位介入するまでに30分以上かかることもあるのが臨床現場です。

情報収集や必要と思われる物品、環境調整、介入準備、説明、信頼関係構築、リスク管理――時間がかかって当然です。

一方、
• 全身状態がで安定しており、移動も自立に近い患者
こういう方なら、安全に3単位介入できる可能性もある。

これを単純に「あなたは3単位、あの人は1単位。だから努力に差、仕事の効率性に差がある」と見るのは、本質をまったく見ていません。

そして、当たり前ですが、症例ごとに必要なリハビリはちがいます。

それを、

同じ廃用リハビリなのに、A理学療法士は2単位でやってるけど、B理学療法士は1単位でリハビリしてる。こうやって、症例ごとに、理学療法士ごとに、取得してる単位数にばらつきがあることが問題だよね。

そんなの、ふざけるなって話ですよね。

■ 「平等」と「公平」を履き違えていないか?

ここで、重要な視点が「平等」と「公平」の違いです。
平等:全員に同じ量・条件を与えること
公平:状況に応じて、必要な支援や評価を調整すること

例えば、
• 新人療法士と20年選手が同じ単位を求められるのは“平等”かもしれない。
• でも、知識も経験もスキルも違うなら、それはむしろ不公平です。

また、
• 拒否やリスクの高い患者を3人抱えている人と
• 介入しやすい患者を3人担当している人

この2人に「単位数が同じで当然」と求めることこそが、不公平ではないでしょうか?

現場に必要なのは、「見える数字」だけではなく、「見えない努力」への理解と評価です。

■ 点数主義のリスク:見えなくなる“本来の目的”

点数に基づく介入基準や優先順位付けは、制度上ある程度は仕方がない部分もあります。
でも、それが“目的”になってしまったとき、現場は確実に壊れていきます。

✅ 例えば…
• 「この患者さん、点数にならないから今日は入らなくていいよ」
• 「点数が高い人がまだ残ってるからこっちの人は休みね」
• 「加算対象期間が過ぎたから今日からこの人は1単位だよ」
• 「急性期病院だから入院期間が伸びてきたら優先度は低くなるよ」

でも、それって本当に患者さんのため?

リハビリの原点に立ち返ったとき、目の前の人の「生活」や「人生」に向き合っているでしょうか?
あなたは、誰のためにリハビリをしてるの?

制度に沿うことは大切です。
でも、制度に“心”を奪われてはならないと、僕は思います。

■ 「単位にならない仕事」は、本当に無駄か?

点数にならない業務はたくさんあります。

• リハビリスケジュールの作成や調整
• 患者さんへのリハビリ説明
• 医師や看護師、MSWとの連携
• リスク管理のための情報収集
• 病棟や病室、リハビリ室間の移動
• カンファレンスや退院支援の調整
• ご家族との面談や心理的サポート
• 拒否が強い方への信頼構築
• ベッドサイドの環境調整

どれも患者さんにとっては“必要不可欠な支援”です。
でも、これらが正当に評価される機会は、ほとんどありません。

だからこそ、「数字が取れない=働いていない」という構図が生まれることもあります。
そうではなく、「数字に見えない努力こそ、現場を支えている」ことに目を向けるべきです。

■ 管理職の方へ:数字も大事。でも「熱」はもっと大事です

管理者目線からすれば、点数=収益というプレッシャーがあるのは理解しています。
だからこそ、単位数の確保や生産性の確保を叫びたくなる気持ちも、わかるつもりです。

でも、それを現場にそのままぶつけると、“心ある療法士”ほど燃え尽きていくんです。
• 「患者さんを一人の人として見ていたい」
• 「非効率でも、意味のある関わりを続けたい」
• 「結果が出なくても、向き合い続けたい」

そういう気持ちを持っている療法士たちが、数字に追われて心をすり減らし、やがて辞めていく。
これほどもったいないことはありません。

■ それでも、私たちは“人”を見ていたい

点数評価が強まっても、制度が変わらなくても、
それでも僕たちは、目の前の人の「今日」をよくするためにリハビリをしています。
• 拒否の方が、今日は手を握ってくれた
• 1週間ぶりに笑ってくれた
• 桜の写真を見て、次は外に出たいって言ってくれた
• できなかったことができるようになった

その一瞬が、僕たちのモチベーションです。

“数字に換算できない価値”を、信じて動ける専門職でありたい。
それが、理学療法士としての誇りです。

■ おわりに:「誰かが言わないと、ずっと変わらない」

ここまで読んで、「わかる」「うちも同じ」と思ってくださった方、ぜひ声を出してください。

違和感を抱いている人は、あなた一人じゃありません。
声を出せば、同じ思いを持つ誰かが見つかります。
そして、小さな声が積み重なれば、現場は必ず変わっていきます。

点数だけじゃない“価値あるリハビリ”を、僕たちが守っていきましょう。

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